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Q.放射性セシウムは樹木のどの部分に存在していますか?

 

  放射性セシウムは、事故直後は風に乗って飛ばされたり、雨に溶けたりして森林に入り、葉や枝、樹皮、落葉層に付着したと考えられますが、その後、葉の表面から 吸収されたほか、多くは雨水等に溶けて落葉層、土壌表面に移ったと考えられます。樹木の表面に付着している放射性セシウムは、落葉、落枝、樹皮のはがれ落ちな どで落葉層に移動し、落葉が虫や菌類に分解されるのに伴って、土壌表面0~5㎝のところに移動します。土壌中に移動した放射性セシウムの一部は、樹木の根から吸い上げられて葉へ移動します。 樹木はそのほとんどが生命活動を終えた、「死んだ細胞」から成っています。樹木で生きているのは、光合成を行う葉と、樹幹の一部、そして土壌から水と養分を吸収する根の毛根や細根です。 樹幹の構造は外側に外樹皮があり、その内側に内樹皮があります。内樹皮の内側には細胞分裂を行う形成層があり、分裂して内側に木部、外側に内樹皮をつくっ ています。内樹皮には、葉で作られた光合成物質が輸送され、細胞が生きています。外樹皮は死んだ細胞から成り立っています。 木部のうち、中心の色の濃い部分は心材、その外側の色の薄い部分は辺材といいます。辺材は、毛細管現象により根から吸い上げた水分や養分を葉まで引っ張り上げるところで、常に水に満たされています。水分を引っ張り上げるのは辺材の外側の数年輪だけですが、それ以外の辺材部分も水で満たされており、通過する水に含まれるのセシウム濃度が上がれば、拡散により辺材全体の濃度も上昇すると考えられます。一方、心材の水分引き上げ機能は停止しています。 木部のうち、辺材の柔細胞は、栄養を蓄えておく細胞で、軸方向に並ぶ軸方向柔細胞や、放射方向に並ぶ放射柔細胞があります。光合成により葉で作られた養分が樹皮の内樹皮を通って木部と樹皮が形成され、放射柔細胞にも移動すると思われます。放射性セシウムはこの放射柔細胞を介して、木部の内部の心材に移行していくことが予測されます。スギ等の心材に多く存在するキシログルカンという物質が分解するとセシウムの可溶化が起こることが、芯材にセシウムが移行する原因のひとつと推察されます。 こ のように、放射性セシウムは森林の土壌や、樹木中の生きている細胞(生きている葉、内樹皮、辺材の柔細胞、形成層、根の細根など)に蓄積していくと考えられます。 また、辺材にある放射性セシウムが物理的に拡散したり、放射柔細胞によって輸送されたりして、心材に達している可能性もあります。

 

資料 : 林業復興の研究 http://www.nodai.ac.jp/hojin/journal/images/j_120809/p1.pdf

 

資料 : 樹木における放射性セシウムの動態解明をめざしてhttp://www.ric.u-tokyo.ac.jp/news/news42-4.pdf

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