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【8月のTOPICS】NaI Radiation Counter  NRC-2000とTCS-171との比較 
 

 当測定室の線量計(NaI Radiation Counter   NRC-2000 )と、できるだけ正確な線量計との計測結果を比べてみました。基準とする線量計はTCS-171です。TCS-171は1μSv/hrのとき45000cpmという非常に高い感度であり、エネルギー補償付き(放射線のエネルギーの違いによる放射線のカウント能力の差を補正する機能)で精度が高く、県をはじめ様々な専門機関で使用されている線量計です。

 

手順

 ①線量の計測値が十分安定した後,2分程度の間隔で5回計測

 ②異なる線量の地点で数回同様に計測

 ③計測結果のばらつきとTCS-171の示した値との違いを評価

 

結果
 NaI Radiation Counter   NRC-2000 はカウント数のばらつきはありますが、平均するとTCS-171の値ととほぼ同様であることがわかりました。



【7月のTOPICS】 Bq/kg→Bq/m2→μSv/hの変換について

 Bq/kg→Bq/m2の変換は65倍。ただし、土を表面から5cm採った場合での計算です。農水省の畑の測定方法では表土から15cm採るので、195倍する必要があります。
 放射線管理区域の基準値40,000Bq/m2をBq/kgに換算すると40,000Bq/kg÷65≒615,.4Bq/kgになります。

 Bq/m2→μSv/hの変換は、下記の内閣府原子力委員会資料によると、Bq/m2の数値を282,000で割ります。
 40,000Bq/m2÷282,000=0.141μSv/hになります。

※放射線管理区域とは
○関係者以外の立入りを禁止し放射線被ばくを防止する。
○放射線“モニタリング等を厳重に行い”、被ばく防護対策を行う。
○管理区域外への放射線の漏洩、放射能汚染の拡大を防止する。
○標識・柵等によって“境界を明示・区画”し、“出入り管理”を行う。
○被ばく管理を行う。

第16回原子力委員会資料
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo16/index.htm

原子力委員会資料 5ページ
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo16/siryo2.pdf



【6月のTOPICS】モニタリングポスト

(モニタリングポストに関する長野県からの回答についての説明と解説をいたします)

 

Q.モニタリングポストは、住民が年間1mSv以下の環境で安全に暮らせるように、という目的で設置されています。事故後は放射能環境を住民に知らせ、汚染環境の基礎データとして諸方面に情報を提供するものとして設置されているものと思います。しかし、生活空間の線量より「モニタリングポストの値が低い」と感じることがあります。また、一台のモニタリングポストの値を地域の代表値とするのは無理があるのではないでしょうか?
【補足説明】モニタリングポスト値が低いということは、周囲が除染されている効果が大きく響いていると思われますが、計器のスケールが低減調整をされていることも関与しているのではないですか?

 

答 モニタリングポストとサーベイメータの数値が異なる原因はいくつか考えられます。

1. 測定器の精度管理上、15%程度の誤差は許容されています。

2.モニタリングポストは、空気吸収線量を、サーベイメータは1cm線量当量率を測定しており、そもそも異なるものを測っています。サーベイメータは、放射線管理が必要な場所でも使用されることから、人体が影響を受ける放射線量を低く測ることがないようにすることで、より安全側に立って放射線管理ができるようになっていますので、結果として、同じ場所で測定してもモニタリングポストより高い値が表示されることがあります。

 

Qに関しまして、お願いがあります。モニタリングポストに関するお答えの内容を長野県のHPの該当箇所にわかりやすく記載していただけますか?

答 表現を検討のうえ、Q&Aの中に記載するようにいたします。

長野県HP 放射線、放射能 Q&A P5 http://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/kansei/houshanou/qa/qa%20houshanou.pdf

【参考】 モニタリングポストとサーベイメータなどの測定値の違いについて(福島県)
http://megalodon.jp/2013-0628-1113-06/wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/130219sokuteiki-setumei.pdf

 

【解説】

 

※空気吸収線量とは :  水や空気に同じだけの放射線を浴びせても物質によって吸収線量の値が変わってきます。空気の吸収線量を空気吸収線量率といいます。 放射線が飛び交っている地点で、そこにある空気が、1キログラムあたり、1時間に250ジュールのエネルギーを放射線から吸収したとします。このとき、その場の空気の吸収線量率は250グレイ/時(250Gy/h)です。これを言い換えると、その場で飛び交っている放射線は、空気1kgに対し、1時間あたり250Jのエネルギーを吸収させるだけの強度をもっている、ということになります。ある地点の「空気吸収線量率」は、その地点(空間)の放射線の強さを示すことになります。「空気吸収線量率」を「空間線量率」と表現していることもあります。ある地点での空気吸収線量率は、その地点での放射線の強さを表わす指標ですが、評価領域に入ってくる二次電子と出て行く二次電子が等しくない(荷電粒子平衡でない)場合、その収支(その領域に放射線が運び込むエネルギーとその領域から運び出すエネルギーの差)を示す必要があります。放射線は照射された範囲一体の空気などで二次電子を生成するので、線量評価対象領域外部で発生した二次電子がその領域に入り付与するエネルギーと、対象領域内で発生した二次(荷電粒子)電子が領域外まで移動した後に失うエネルギーのバランスが異なると、その領域に与えるエネルギーの量は変化しますから、エネルギー収支が重要です。
 
※1cm線量当量率とは : 放射線管理上もっとも重要なX線及びガンマ線を人体組織が受けた場合、被ばく線量がもっとも高いのは人体表面ではなく人体組織のある深さです。1cm深さの被ばく線量を評価の基準とすれば、常に実効線量より高い値となり、安全余裕をもって被ばく管理を行うことができます。電子ポケット線量計や放射線管理用のサーベイメータ等はこの量を表示するよう調整されています。

 モニタリングポストは原子力施設から放出された空気中の放射線量の変化ををいち早く把握することを目的として、空気吸収線量を測定しています。 緊急時に人体が受ける放射線量(実効線量)を推察するために空気吸収線量を実効線量とみなすことが原子力安全委員会の「環境放射線モニタリング指針」http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/sonota/houkoku/houkoku20080327.pdfに示されています。

 しかし、電離放射線障害防止規則 http://t.co/QX7xWO5BKC … では、「外部放射線による実効線量の算定は、一センチメートル線量当量によつて行うものとする。」と規定されており、安全の目安として使われる「空間線量率」はモニタリングポストの「空気吸収線量」ではなく「1cm線量当量」であるのが妥当だと思われます。

資料 :  測定値(空気中放射線量)と実効線量  日本原子力学会 http://www.aesj.or.jp/information/fnpp201103/chousacom/he/hecom_sokuteichi20120911.pdf
資料 : 日立アロカ TCS-171Bを2台並べ、片方はμGyモード、一方はμSvモードの 測定値http://p.twpl.jp/show/orig/WxJ8X
資料 : 小型放射線測定器(DoseRAE2)と TCS-166 との測定値の違いについて http://monitoring.tokyo-eiken.go.jp/doc/chigai20110622.pdf

資料 : 固定型モニタリングポストへの移行に伴う空間線量率の測定値の変化
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/koteigatampikou20130401.pdf


資料 :  空気カーマ、空気衝突カーマ、空気吸収線量、照射線量と実効線量
http://rcwww.kek.jp/research/shield/kerma.pdf

資料 : 線量概念の問題点http://anshin-kagaku.news.coocan.jp/hobutsu2007_oda.pdf

 

 資料 : モニタリングポストの設置についての長野県での配置の考え方は長野県防災会議原子力災害対策部会 議事録P3、P13を参照

http://www.pref.nagano.lg.jp/kikikan/bosai/nuclear/121220bukai/121220giji.pdf

 

 

 

【6月のTOPICS】汚染状況重点調査地域とは 
 

 

 2012年2月、環境省は、航空機モニタリング調査(文科省)などの結果を踏まえ「汚染状況重点調査地域」を設定しました。

 汚染状況重点調査地域の指定に際しては、地上1mの高さで毎時0.23マイクロシーベルト以上の「面的汚染」が認められた市町村の自治体に、国が意向調査をおこない、合意の上で指定をしました。

 現在、汚染状況重点調査地域に指定されていない市町村でも、自治体によって申請がされなかった例もあります。これらの地域は、汚染状況重点調査地域に匹敵する放射能汚染がありながらも、汚染地域であることを認めていません。理由は様々ですが、「風評被害」「地価の暴落」「人口流出」を懸念していると考えられます。

 これらの汚染がありながら、汚染状況重点調査地域に指定されていない地域は放射能汚染がないわけではありませんから、何らかの放射能対策が必要です。しかし、ほとんど必要な対策がなされていないのが実情です。

 

資料 :  放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染状況重点調査地域の指定について(環境省)
http://josen.env.go.jp/zone/summary/list.html

      

【5月のTOPICS】土壌中の放射性セシウム濃度と空間線量率との関係


 土壌中の放射性セシウム(セシウム 134、137 の合計)濃度と空間線量率との間には、正の相関関係が認められる。 
   同等の土壌中の放射性セシウム濃度であっても、空間線量率は福島第一原発事故以降に耕起した地点の方が未耕起であった地点よりも低くなる。 
   同等の土壌中の放射性セシウム濃度であっても、空間線量率は非黒ボク土壌群(岩屑土、砂丘未熟土、褐色森林土、灰色台地土、グライ台地土、赤色土、黄色土、暗赤色土、褐色低地土、灰色低地土、グライ土、黒泥土、泥炭土)の方が、黒ボク土壌群(黒ボク土、多湿黒ボク土、黒ボクグライ土)に比べて高い。 
   同等の土壌中の放射性セシウム濃度であっても、樹園地では樹木の樹冠などに付着している放射性セシウムの間接的な影響や耕起されていないこと等によって、他の地目より空間線量率は高い。 
参考資料: 農地除染対策の技術書 http://www.maff.go.jp/j/nousin/seko/josen/pdf/sankou.pdf

【4月のTOPICS】 大豆加工品についての注意喚起

 

 「基準値未満」であってもセシウム検出の大豆が、味噌、豆腐、醤油、きな粉などの加工品原料として長期にわたって流通して行きます。

食品中の放射性物質の検査結果について(第613報)平成25年4月3日 ※基準値超過は4件 No.528~No.530、No.713:宮城県産大豆Cs:180 Bq/kg、180 Bq/kg、190 Bq/kg、180 Bq/kg

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002z12t.html

 

 しかも、2012.12.31出荷分までは、経過措置のためCs:100Bq/kgを超えても出荷していました。米、牛肉、大豆などに関しては、平成24年12月31日までに製造、加工、輸入された食品は、旧基準値(食品 500Bq/kg、飲料 200Bq/kg)にて流通を許されています。そのため、検査をして、平成24年4月1日からの食品基準値である、100Bq/kgを超えた場合であっても、基準値超過なし とされます。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120117-1-03-01.pdf

 

 岩手県一関市では大豆から130Bq/kgが検出されましたが、経過措置がとられている食品の為、暫定基準値である500Bq/kgまでが適合と認められ、市場で流通しました。乾燥保存食品であるため、今後も流通していくと思われます。

食品中の放射性物質の検査結果について(第526報)平成24年11月20日から

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002p57w-att/2r9852000002p5bp.pdf




【4月のTOPICS】  畑・家庭菜園の作物のセシウム汚染を防ぐために(2)

 

   セシウムはどのようにして作物に吸収されるのでしょうか?

 

 植物の成長には、窒素、リン、カリウムなどの元素が必要です。植物の根には輸送体とよばれるタンパク質が存在しています。この輸送体が、土の中にある元素を植物の中に取り込んだり運んだりしています。水に溶けた状態で存在する元素は取り込みやすいのですが、土の中では必要な元素が溶けていないことがあります。どうしても足りなくなったときは、植物が根から酸を出して、必要元素を土から溶け出させて吸収しています。
 セシウムは構造がカリウムによく似ています。そのため、カリウムの輸送体がカリウムと間違えてセシウムを取り込むということがあります。カリウムを極端に減らした肥料を植物に与えると、植物体内でカリウムが不足している状態になるためにカリウムを取り込もうとする機能が活性化されます。その結果、カリウムと間違われて取り込まれるセシウムの量が増えると思われます。
 作物のセシウムやストロンチウムの吸収を低減する方法のひとつとして考えられるのは施肥によるコントロールです。まず、ストロンチウムの場合は施肥による影響はほとんどないようです。
 セシウムの場合は葉と種子ともにカリウム無施肥で高い値を示します。逆に言えば、カリウム施肥を十分に行うことでセシウムの蓄積は抑制できる可能性があります。窒素施肥に関しては、アンモニア態窒素がセシウム吸収を高めることが報告されています。

 葉と種子を比較してみるとセシウムは種子と比べて葉における蓄積量が高いようです。ただし、カリウム無施肥のダイズでは種子の方が多くのセシウムを集積します。栽培時には注意したほうが良いでしょう。

参考資料:植物のセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)集積に関する研究
http://www.geocities.jp/watanabe1209/Topics/CsSr.htm




 

【4月のTOPICS】   畑・家庭菜園の作物のセシウム汚染を防ぐために(1)

 

  セシウムは土壌のなかでどのような形で存在しているのでしょうか?

 

 

水溶性セシウムイオン : 土壌中の水のなかに存在  → 

                                   植物にすぐに吸収される

 

置換態セシウムイオン : 粘土や腐食物質のなかに存在→ 

                                  植物の根酸によって粘土や 腐植物質から溶出して吸収される

 

固定態セシウムイオン : 粘土鉱物のなかに存在  → 

            根酸によっても溶出せず粘土鉱物に固定され吸収されにくい

 

 

 土壌中のセシウムイオンは、水溶性、置換態、固定態の3つの形で存在すると考えられています。水溶性のセシウムイオンは土壌の水の中に溶けていて植物によって吸収される可能性の高いセシウムイオンです。置換態セシウムイオンは粘土や腐植物質に「吸着」しているセシウムイオンで、主に植物の根から分泌される根酸(クエン酸)等の有機酸によって溶け出して植物に吸収されます。固定態は主に粘土鉱物に「固定」されているセシウムイオンで、根酸でも溶かすことが困難なものです。

 土壌中の腐植物質と粘土鉱物はマイナス電荷を持っているので、陽イオンのセシウムを吸着、固定する働きがあります。粘土鉱物は、主としてケイ酸からできていてマイナス電荷をもつ結晶で、その規則的な立体構造の中にセシウムやカリウム、アンモニウムイオンがはまり込むことによって、これらを固定することができます。腐植物質はマイナス電荷をもつ有機質分子ですが、セシウムなどの陽イオンを固定できるような構造を持っていません。しかし、セシウムを吸着する量は同じ重量の粘土鉱物に比べて圧倒的に多く、土壌の保水・排水性を良好にする土壌団粒を形成するためにも不可欠の物質です。

 腐植物質はセシウムを吸着はできるが固定できないため、植物によるセシウム吸収を抑制できない。あるいは、腐植物質はいずれは微生物によって分解されて吸着したセシウムが水に溶けだしてしまうために作物のセシウム吸収抑制作用は期待できないという見解もあります。しかし、新潟大学の野中先生は腐植含有量が高いと移行係数が低くなる傾向があることを実証しています。植物へのセシウム吸収抑制作用はセシウムの固定力以外にも要因があるのではないかということです。

 作物は水溶性と置換態のセシウムを吸収しますが、一番吸いやすい状態は水溶性です。しかし、植物の根酸によって溶けだして一時的に水溶性になったセシウムも、付近にマイナスイオンを持つ腐植物質が多数あれば、再び腐食物質にセシウムが吸着されるのではないか。また、置換態のセシウムは根酸だけでなく、施肥や大雨によるpHや土壌水量の変化によっても土壌水中に溶け出てきますが、その際、セシウムを吸着する腐植物質の「量」が多ければ再吸着するのではないか。十分な量の腐植物質は植物の根に触れるセシウムの総量を少なくできるのではないか。つまり、ゼオライト投入と同様に有機物投入によって、マイナスイオン総量が増加してセシウム吸収抑制につながるのではないかということです。

 また、土壌団粒の形成による保水性・排水性の改善も土壌水中のセシウム移動に大きく関係しています。大雨が降った時に、排水が悪い土壌よりも良好な土壌の方がセシウムを吸収しにくくなります。 野中先生は植物によるセシウム吸収や移行係数は土壌粒子・粘土・腐植物質などの複合体が重要であることを指摘しています。

 農業の土づくりは土壌の「化学」「物理」「生物」の3つを考慮すべきだといわれています。「化学」は養分バランス、「物理」は安定的な保水・排水・通気性です。

「生物」は病原菌・虫・微生物です。植物のセシウム吸収についても、これら3つの要素が複雑に関係していると思われます。

 

参考資料:土壌-植物系における放射性セシウムの挙動とその変動要因

http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/publish/bulletin/niaes31-2.pdf

 

 

【4月のTOPICS】 堆肥のセシウム移行抑制作用 

 

 堆肥のセシウム固定作用には懐疑的な見方もありますが、新潟大学の野中教授(土壌環境学)の調査によれば、良質な堆肥であれば、継続的な堆肥施用はセシウム吸収抑制の効果が認められるということです。

 農学では耕地土壌重量を100t/10aとみなします。ここにセシウム35Bq/kgの堆肥を入れてしまった場合を考えます。堆肥投入量2t/10aならば堆肥の割合は2%ですので、35Bq/kg×0.02=0.7Bq/kgのセシウム濃度上昇ということになります。堆肥投入によるセシウム吸収抑制の値がそれより高ければ作物のセシウム吸収を抑えることができます。さらに堆肥の土壌改良効果による作物の品質向上も期待できます。そのバランスを見極めるためにはまず土壌と堆肥の実態を知る必要があります。

 堆肥投入によるセシウム吸収抑制は土壌や堆肥の性質・品質やカリウム等のミネラル分、微生物の活性などによって大きく異なると思われます。砂質土壌等のやせた土地では効果が高く、すでに土づくりをしている肥沃な畑では効果は相対的に低いようです。また、畜糞主体の窒素分の多いものよりも、稲藁、籾殻、落ち葉等の炭素分の多いものの方がセシウムを捕捉する腐植物質の割合が高いので効果的です。堆肥中のミネラルの割合も関係するでしょうし、堆肥や土壌の微生物も腐植物質の生成に関与しているので、セシウムの吸収抑制作用を左右します。 豊かな作物づくりのために行ってきた土づくりと、セシウム吸収抑制がかなりの部分重なっているということがわかります。肥沃な畑ほど、セシウム捕捉能も高いということです。 農家は良い土づくりをして、土壌のカリウムを中心としたミネラルのバランスに留意し、土壌の微生物を大切にすることがセシウム吸収を抑制し、美味しい作物を作ることにもなるでしょう。

 

 放射能と食べ物 新潟大学 野中昌法教授

 

http://niigataakihakunet.files.wordpress.com/2013/02/20130223small_ss.pdf

 

 堆肥のセシウム吸収抑制 東京農工大 木村ドロテア准教授

https://www.dropbox.com/s/p94elr3w82xug5k/%E5%A0%86%E8%82%A5%E3%81%AE%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E7%A7%BB%E8%A1%8C.jpg

 

 

 

 

 

 

【4月のTOPICS】汚染堆肥が出回る時期です

 

 

農作業の季節がやってきます。原発事故後2年が経過し、放射性物質によって汚染された堆肥原料を使った堆肥がそろそろ出回る時期となります。農家の方はもちろん、家庭菜園で使う堆肥には十分ご注意ください。

 

 

「放射性セシウムを含む堆肥・土壌改良材・培土及び飼料の暫定許容値について」

 

 

 東京電力福島原子力発電所の事故に伴う放射性物質の降下の影響で、動植物性堆肥原料(家畜排せつ物、わら、樹皮、落ち葉、雑草、残さ等)が放射性セシウムに汚染され、これらを原料として生産された堆肥が放射性セシウムを含有する可能性があることから、これらの堆肥を農地土壌に施用すれば、そこで生産される農作物の放射性セシウム濃度が食品衛生法の暫定規制値100Bq/kgを超過する可能性が増大することになります。そこで、農林水産省では、食品衛生法上問題のない農畜水産物の生産を確保する観点から、肥料・土壌改良資材・培土及び飼料についての放射性セシウムの暫定許容値を定め、放射性セシウムによる農地土壌の汚染拡大を防止を呼びかけています。この放射性セシウムによる農地土壌の汚染拡大を防止するため、下記の事項について御留意いただくようお願いいたします。

 

 

(1) 暫定許容値400Bq/kgを超える肥料・土壌改良資材・培土を農地土壌に施用しないこと。

 

(2) 肥料・土壌改良資材・培土を購入したり譲り受ける場合には、販売業者・譲渡者に暫定許容値を超えていないことを確認してください。販売者にはこれらの放射能検査の義務が課されています。

 

(3) 自ら生産した肥料・土壌改良資材・培土を施用する場合には、暫定許容値を超えていないことを検査して確認するか、都道府県と相談してください。

 

(4) 自ら生産した肥料・土壌改良資材・培土又はそれらの原料を販売したり譲渡する場合には、相手方の耕種農家・肥料製造業者等に生産状況等に関する情報を適切に提供してください。

 

(5) 自ら生産した飼料原料又は飼料を販売したり譲渡する場合には、相手方の畜産農家・飼料製造業者等に生産状況等に関する情報を適切に提供してください。

 

 

 

設定された肥料・土壌改良資材・培土中に含まれることが許容される放射性セシウムの最大値は400 ベクレル/kgとなっています。ただし、ご自分の農地で生産された農産物の全部又は一部をその農地に還元施用する場合は農地土壌の汚染を拡大することにはならないので、農産物又はそれを原料とする堆肥を施用することが出来ることになっていますが、その結果、暫定規制値100Bq/kgを超過した農産物ができた場合は出荷販売することはできませんので、汚染した堆肥は使用しないようお願いいたします。

 

 

【3月のTOPICS】腐葉土、剪定枝堆肥の自家生産及び施用の自粛のお願い

 

 福島第一原発事故により、放射性セシウムに汚染された腐葉土、剪定枝堆肥が流通・販売されていることから、農林水産省からの通知により長野県で収集される落葉や剪定枝を原料とした腐葉土や堆肥の新たな生産・出荷及び施用は自粛となっておりますので引き続きご注意お願いします。なお、堆肥製造業者がやむを得ない事情により新たに生産・出荷することが避けられない場合には、検査方法を国と協議したうえで製品を検査し 、暫定許容値(放射性セシウム400Bq/kg )以 内を確認することが必要となりますので 、最寄りの地方事務所農政課へご連絡ください 。

http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/kankyo/pdf/110901-07.pdf

http://www.pref.nagano.lg.jp/xtihou/kamiina/nosei/manual.pdf

 

 

【2月のTOPICS】薪ストーブと放射能

 

 2012年1月に福島県の民家で使用された薪ストーブの灰から1キロあたり4万ベクレルを超える高い放射性セシウムが検出されました。使用した薪は原発事故の前から民家の庭に置いてあったもので薪そのものからも高い放射性セシウムが検出されました。
 環境省は2012年1月に、汚染調査重点地域に対して薪ストーブを使用した際に出る灰の取り扱いについての通知を出しました。安全性が確認された場合を除いて薪の焼却灰は庭や畑にまかず、市町村が一般廃棄物として収集、処分するように求めています。対象となったのは岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉です。

 林野庁からは1キロあたり40ベクレルを超す薪については流通や使用を控えるように指導・周知の徹底が呼びかけられました。薪の基準値が適用される範囲は上記8県と青森、秋田、山形、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡のあわせて17都県です。この地域で生産された薪については放射性物質の検査をして40ベクレル以下であることを確認しなければ流通させないよう発表されました。しかし事故以前に加工されて屋内で保存されていた薪や事故以降に放射能の影響を受けない環境で生産、保存された薪については検査は必要ないとされています。この区別については自己判断のようです。
 1キロあたり40ベクレル以下という数字は、一般廃棄物の基準値1キロあたり8000ベクレル以下という数値から逆算されたものです。薪から灰になる過程で、セシウム濃度が200倍になるという考えから導き出されています。また、実験結果から薪に含まれる放射性セシウムの約9割が灰に残ることが分かっています。
   比較的放射能汚染が高い地域の薪であっても、保存の際に雨ざらしだったか、屋根やカバーがかけてあったか、皮をむいてあったか、雨に何回あたったかなど、さまざま条件によって汚染度が変わります。

 実際に40ベクレルを超える薪を燃やしてしまったときの健康被害についてどのように考えたら良いでしょうか。薪を運ぶ際のリスク、薪をくべる時にストーブ内の灰からの放射線を浴びるリスク、その灰を体内に吸い込んでしまうリスクなどが考えられます。 環境省によれば、やむをえず1キロあたり40ベクレルを超える薪を使用する場合は放射性セシウムが付着している表面を取り除いて使用することにより、被ばく線量を低減することが可能であるとされていますが、念のために安全な薪を使ってください。放射線による健康被害については専門家の間でも意見がさまざまに分かれています。「これくらいだからいいだろう」という考えはやめておいたほうが良いのではないでしょうか。

 薪ストーブの薪は基準値40ベクレル以下のものを使用する。薪は信頼のおけるルートから調達する。当面の間、薪ストーブから出た灰は庭や畑に撒いたり肥料にしたりせず、ビニール袋などにきちんと密封して保管するか市町村のごみ収集に出す。放射線量の高い地域で屋外に放置されていたような薪は使用しない。もしやむをえず使用する場合は、皮をむく、表面を洗い流すなどの除染を行って、むいた表皮や使用後の灰は人の近寄らない場所に密封して保管するかごみ収集に出す。人からもらいうけた薪に関しては、自己責任となるので、どこで伐採されたものか、どんな保管状態だったのか、などを聞いておきましょう。昨年末、軽井沢町の薪の皮から815ベクレルのセシウムが検出されたことは薪の放射能汚染の深刻さを物語っています。
    放射能など気にせずに安心して薪ストーブを使用したいものです。しかし放射能の問題は解決までに長い時間がかかります。いつまで気をつければいいのか、3年なのか30年なのかわかりません。薪についての基準値や灰の処分方法なども時間とともに変化するでしょう。 薪ストーブの使用はあらゆる場面で使用者のモラルに左右されます。基準値内の薪を使用するか、焼却灰をどう処理するか、皆様のの意識にかかっています。

 

 

【1月のTOPICS】雪に含まれる鉛214とビスマス214について

 

 鉛214とビスマス214は土壌に存在する天然ウラン238が崩壊することにより生成したラドン222のガスが上空に拡散後崩壊して生成したものです。崩壊過程についてはウラン系列の崩壊過程をご覧さい。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3%E7%B3%BB%E... 

 鉛214とビスマス214が雪とともに地面に落ちたものをそれぞれヨウ素とセシウムとして誤検出する場合がありますので注意が必要です。

 鉛214とビスマス214は地球誕生以来、常に雨や雪に微量は含まれていたと考えられます。これらは核分裂生成物ではありませんので核実験や原子炉等で人為的に作られたものではありません。ただし、燃料棒にもウラン238が含まれているので原子炉でも極微量は生成していると思われます。
 

【11月のTOPICS】雨ざらしになっていた薪に注意。薪の放射性物質が灰には33~200倍に濃縮されます 
 薪ストーブの灰のサンプルを集めてその放射性セシウム濃度を測定し、薪の保存方法や使い方を聞き取りしながら調査しました。その結果、原発事故で放射性物質が比較的多く降り注いだ地域で薪を燃料として使用しているご家庭・施設では、震災後雨にあたっていた薪の使用は避けたほうが良いことがわかりました。また薪を燃やした際に出た灰については放射性濃度が低い場合は燃えるゴミとして出せますが、畑に撒くことは止め、雨をかぶっていた薪を燃やして出た灰は高濃度汚染されている可能性があるので、国の指針が固まるまで金属製の容器か厚手のビニール袋などで密封して雨水などには触れない状態で保管していてください。
 環境省からの指針で、最終処分場に埋設可能な焼却灰の規制値は放射性セシウム総量で8000Bq/kg以下に設定されております。 しかし、県内の比較的線量の高い地域で、震災後屋外で雨を被ってしまった薪を使用しますと、薪ストーブで焼却して出る灰の放射性セシウムの量は、この規制値を超えてしまいます。
 ある事例では、薪自体は2年前に伐採された木を雨の被らない軒下に乾燥保管していたものでほとんど放射性物質が付着していないと思われましたが、焚き付けに庭に放置していた小枝や廃材を用いており、これが原因で高濃度の灰になりました。

 灰だけでなく、煙突に付着する煤にも放射性セシウムが含まれている可能性があります。煤は灰よりも軽いこともあり、サーベイメーターではあまり反応はありませんが、重量あたり灰の半分程放射性セシウムを含んでいるようです。また同様に放射性セシウムは、煙としても外部に拡散されているものと思われます。

 また、農業や家庭菜園を行っている場合、薪の灰はよいミネラル分になるために肥料として畑に撒くことが多いと思います。肥料に使える規制値は400Bq/kgに設定されております。今回検査した灰は肥料として使えないものが多くみうけられました。灰のセシウムは水に非常に溶けやすい状態ですので、畑に撒いたりするとセシウムの再拡散が始まります。
 林野庁が実験したところ、薪の放射性物質の濃度が燃やした後に灰になると最高200倍に濃縮するという結果になりました。これを受けて、焼却灰が8000Bq/kgを超えないための薪の規制値として40Bq/kgが設定され、これを超える薪の生産や流通や使用を控える旨の通達が出ております。林野庁HPをご覧ください。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shihyouti-index.html

(参考)空間線量計(サーベイメーター)で8000Bq/kgを超える灰を見分けられるかどうか調べてみたところ、灰を1kgビニール袋に入れたものの上にサーベイメーターを直に置いて測定し、空間線量に比べて0.20μS/h増加した場合注意が必要です。

 

【10月のTOPICS】軽井沢町で採取した「ショーゲンジ」という天然キノコから3900Bq/kg

高木仁三郎記念ちょうふ市民放射能測定室 による測定 http://chofu-lab.sblo.jp/archives/201210-1.html

ショーゲンジはアカマツ・クロマツ・モミ・トウヒ・エゾマツなどの針葉樹の林内地上に孤生ないし散生する。軽井沢では1000m林道より標高の高いところにみられる。http://mushroomsindex.com/result0090.htm

 

【9月のTOPICS】8月31日発表のアカヤマドリ(御代田町産)のセシウム値について長野県・信州の木振興課に質問しました 

Q.  Cs137が56Bq検出、Cs134はND。他県の野生キノコは大体、Cs134と137の比が1:1.5~2程度あり、Cs134がNDはないと思います。この点について教えてください。

A.  信州の木振興課 小島和夫と申します。 野生きのこの放射性セシウム検査結果について、御質問をいただきました。 御指摘のとおり、Cs134とCs137の比率は、通常は1:1.5~2程度になります。今回のアカヤマドリの検査でCs134がNDとなったことについては、内部でも議論になり、検査を行った機関にも問い合わせてみましたが、いくつかの可能性は考えられるものの、データが少なく、学術的知見もないため、確かな理由はわかませんでした。 

Q.「いくつかの可能性」について教えていただけますか?

A.「いくつかの可能性」について、御質問をいただきました。概要は次のとおりです。
1 過去の放射性セシウムの降下によるものか?
  御承知かと思いますが、Cs134の半減期(2年)は、Cs137(30 年)に比べ短いので、数十年前の核実験やチェルノブイリ事故の影響 の可能性がありますが、比較データがなく、判断できません。
2 きのこの種類によって、Cs134とCs137の吸収に差がある?  学術的知見がありません。
なお、測定機器の問題も考えられますが、測定前には、必ず標準資料を用いて作動状況を確認していること、 もう一つの試料では通常の比率であること、から、考えにくいと思います。
概ね、以上のとおりです。 御不明の点があれば御連絡ください。よろしくお願いします。

 

参考資料:  森林生態系における放射性セシウム(Cs)の動態とキノコへの移行

       http://jssspn.jp/info/nuclear/cs-2.html

 

       きのこと放射性セシウム                                              

       http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/9712/hik2p.html


 

【8月のTOPICS】 ブルーベリーのセシウム汚染

 ブルーベリーの根は非常に浅いところ(地表から3cm 位)にあるので、地表に降ったセシウム(地表から3cm位の土壌にセシウムが存在する)が実に移行する。しかし、土壌から実に移行したセシウム量は葉や枝に付着したセシウム量より低い。ブルーベリー樹木のセシウム量は原発事故発生時にすで存在していた枝で最も高く、今年成長した枝の10倍位ある。このことから、今年成長した枝になった実より、事故発生時にすでにあった枝になった実のほうが樹皮や葉のセシュウムが付着する可能性が高いためにセシウム量が多い。

 今年のブルーベリーの土壌からのセシウム移行は去年より低い傾向にあるが、枝によっては高い濃度の実ができる。原発事故当時からある枝・葉に付着しているセシウムには注意する必要がある。

 

    参考資料:ブルーベリー園における放射性セシウムの蓄積 http://www.naro.affrc.go.jp/disaster/files/radioactivity_p_r_04.pdf  

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