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Q.雨が降り出したら平常0.06μSv/hの空間線量が0.16μSv/hに上昇しました。大丈夫でしょうか?

  雨が降ると空間線量率が上昇することが知られています。その上昇度合いはその時により大きく異なりますが、降り始めの上昇率が高くなることが多いようです。雨水中に含まれている放射能濃度が、数十Bq/kgから最大1.600Bq/kg程度、平均は300Bq/kg程度で、その放射性物質の種類は自然界に存在する鉛-214、ビスマス-214の2種類であるとの調査結果があります。

 ※雨水中の放射能濃度の調査 http://www.chuden.co.jp/resource/corporate/news_99_N09913.pdf

 空間線量率は、放射能が多く含まれる雨がたくさん降れば上昇度合いも大きくなる傾向にあります。しかし、鉛-214、ビスマス-214の減衰(放射能の量が半分になる時間)は約20~30分ですから、雨が止んでしばらくすると、空間線量率は平常値に戻ります。
 また、雨水中の放射能濃度は、雲の発生場所や生成過程での移動方向、風向などによって左右されます。降雨時の空間線量率の上昇は、陸風が強い(西高東低・冬季に多い)場合は大きく、海風が強い(東高西低・夏季に多い)場合は小さくなるという関係が成り立っているようです。冬季は大陸方面からの季節風で、ラドン(娘核種が鉛-214・ビスマス-214)の供給量が比較的大きく、反対に夏季は南東の海風が主体なのでラドンの供給量が小さいことによります。


Q.ガイガーカウンターの購入検討を始めました。お薦めがありましたら教えてください。
 

 放射線測定器は、空中に飛んでいる放射線を測定器内のガスなどにぶつけて、電気信号や光に変換して測定します。種類は沢山あります。安価な中国製などを買うと、まちがった値を読んでしまうことも多いので注意が必要です。中性子を含む空中放射線を計る線量計で、色々な種類の放射線(α線、ガンマ線、β線、中性子線、X線など)を計測できる高性能測定器だと、20~60万円位です。ネットや量販店などで出回っている線量計では、数万円程度のものもありますが、校正ができないものは実用的ではありません。放射線測定器は、ピアノの調律のように定期的な調整ができないと測定結果の誤差が大変大きくなります。毎時、0.1マイクロシーベルト(μSv/hr)以下を正確に計測するには、それなりの性能と機能がある測定器でなければなりません。
 一般の簡易線量計のマニュアルをみると10%~30%の誤差があります。20%の誤差であれば、0.1の場所で0.08~0.12の値が表示されることを意味します。表示の値がばらつくこともありますが、数回計測してその平均をとれば、ばらつきはかなり改善されます。線量計によっては急に値が大きくなったり小さくなったりする場合がありますが、平均をとるときはこのような飛び値を避けてください。
 個人で線量計を購入して計測する場合には、以下のことに注意して計測するとより正確に計測できます。特に低線量を計測する場合には大事なことです。

① 自分の線量計の値がどのくらいずれているのか知る

② 線量計の値が正しい値を表示するまで時間をとる

③ 値がばらつく場合は,時間をおいて数回計測して平均をとる

④ 個人で計測値を一般に公表する際にはどのような機器で計測したかも公表する

⑤ β線を計測できる機器はその特性について注意する。 (γ線のみ計測する線量計とβ線とγ線双方を計測できる機種とで測定値を比較するときは特に要注意)

参考 :  放射線計測の基本原理

 放射能の強さはベクレル(Bq)という単位であらわされますが、これは放射性物質から一秒あたり平均何個の原子核が放射性壊変を起こしているかを表しており、放射線はこの放射性壊変の時に放射されます。1グラムのセシウム137は3.2兆ベクレルになります。

 線量計は基本的に放射線が当たった時の様々な物理現象を利用して線量計に放射線が入射した回数をカウントするものですが、すべてをカウントできるわけではなく、線量計の検出効率、線量計の個体差によっても異なります。cpm(カウント・パー・ミニット)とかcps(カウント・パー・セカンド)などの単位は線量計が1分間(cpm)あるいは1秒間(cps)に何回放射線をカウントできたかをあらわす単位です。毎時マイクロシーベルト(μSv/hr)という単位はこのcpmやcpsの値をそれぞれの機器の特性に合わせた変換法によって変換して得られます。

 

参考 :  線量計の精度を左右する要因

 線量計は放射線を捉えた回数を基本にして放射線量を表示しています。ところが、同じ場所で同じ線量であっても機器によって放射線を捉えるカウント数が異なります。カウント数が異なる要因はいくつかあります。

・計測方法の違い

・センサの大きさ

・エネルギー感度

などが主なものです。いずれにしても、放射線を捉えた回数の違いを考慮して変換式をつくり、最終的にマイクロシーベルト表示にします。カウント数が異なったとしても、製造メーカがきちんと変換式を作っていればきちんと計測できます。

 わずかな線量の変化を知りたいときには特に注意が必要です。1μSv/hrのときにカウント数が10cpmとなる線量計があったとします。この線量計は1分間のカウント数が1減った9cpmのきには0.9μSv/hrと表示しますので、1分間の計測では0.1μSv/hrの変化までしかわからないことになります。一方、1μSv/hrのときに1000cpmの線量計ならその100倍の感度があるわけで、1分間の計測では0.001μSv/hrの変化まで分かります。短い計測時間で高感度の計測が可能になるわけです。

 また、放射線がカウントされる間隔は一定ではありません。同じ場所で同じ線量でも、1分間のカウント数はつねに同じではなく、揺らいでいて不安定です。1分間の計測を繰り返した時1カウント揺らいだとすると10cpmの線量計では0.1μSv/hrも値がばらついてしまいます。さらに、測定器内部の電気的なノイズの影響などもあります。したがって、正しく計測するためには,線量計の感度と計測時間(線量を表示するために必要としている計測時間)が重要になります。

 

Q.鰹節の選び方はどうすればいいでしょうか?

放射能検査で不検出のものをお薦めします。
 

 

以下、鰹節について解説します。

 

中~大手メーカーの鰹節の原料は赤道付近で獲る巻網冷凍鰹が多いようです。

http://www.ninben.co.jp/katsuo/katsuobushi/gyojyo/

かつお・まぐろ放射性物質検査一覧

http://www.japantuna.net/files/pdf/20130723170830969.pdf

 

注意したいのは伝統製法の鰹節です。薪の火で10日ほどかけて直火乾燥します。(大量生産品は油やガスを使用) 乾燥に使う薪が東北~関東産だった場合、それに付着した放射性物質が移行する可能性があります。

http://t.co/uGkezVQv

 

大量生産の鰹節で注意したいのは、原料に多く使われる巻網冷凍鰹が長期間冷凍保管される傾向があることです。市場に出回るまで加工時間+原料の冷凍保管期間のタイムラグがあります。忘れた頃に汚染原料が鰹節に加工される可能性もあります。

 

 

産地表示は水揚港で決まるので漁獲水域は不明です。

産地と漁法

http://t.co/nOBHppYr

現行の生鮮食品品質表示基準では、国産生鮮魚介類の原産地は生産水域名(又は養殖地名)を記載することが原則となっており、水域名の記載が困難な場合は、例外として水域名に代えて水揚げ港名又はその属する都道府県名を記載することができることになっています。水域名が原則、と言っているものの水揚げ港や水揚げ港がある県の名前を使うことも違法ではなく、実際にその表示は多いようです。

生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン

http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/hyouzi/seisen.html

 

削り節の産地表示は「加工した場所」であって「鰹がとれた場所」ではありません

http://t.co/kYA8bbsN

 

鰹節、削り節の産地偽装について

http://t.co/yppYJa70
 


Q.雨が降ると、空間線量が上がるのは何故ですか?

 天然由来の放射性物質による、降雨時の線量上昇について、解説します。
 空間線量の上昇前と下降後を比べ、上昇する前に比べて下降後の線量が高くなっていたら、原発事故の可能性を検討する必要があります。しかし、上昇前と下降後が、変わらない線量レベルになったら、それは天然の放射性物質の降下による一時的上昇であったと考えるのが妥当です。豪雨などでは普段の雨よりも多く天然放射性物質が降下することも考えられます。
 大気中には、天然核種が漂っており、雨や雪によって線量は一時的に急上昇します。土壌中には、ウラン系列やトリウム系列等の天然の核種が含まれています。 それらの中で、温泉で有名なラドンはガスであり、大気中に拡散しています。そのラドンが壊変すると、鉛214やビスマス214といった天然核種になり、γ線を出します。 これらは、放射性セシウムや、ヨウ素131にエネルギーが似ており、原発事故由来と間違えることがありますが、それらは天然由来です。鉛214は半減期約30分、ビスマス214は約20分なので、降下しても、線量は早く減少します。一方、もし放射性セシウム134、137などの原発由来の核種が降下すると、半減期が2年や30年と長いので線量が下がらずに線量上昇前よりも測定値が上がってしまいます。
 原発由来の線量上昇だと、様々な核種が飛散しますので、降雨後に線量は下がりません。2011年3月21日の9時台に降った雨については、原発由来の放射性物質によって線量が上昇し、線量が高い水準で定着してしまいました。原発事故があった場合は、雨や雪に気をつけてください。

Q.井戸水は安全ですか?


 井戸のタイプは、パイプだけが地下水脈までいっている井戸が主流ですが、昔見られた浅い井戸もまだ残っています。
 深井戸は深度30mくらいの場所から取水することが多く、この水は粘土層(水を通しにくい地層)を1層か2層、時間をかけてゆっくりと通ってきた水です。良く管理された深井戸であれば短期間のうちに汚染物質が入り込む可能性は低く、一般的に地下水は平均20年で入れ替わると言われていますので、仮に放射性物質が浸み込むにしても何年もかかることになります。また、今回の原子力発電所の事故で降下した放射性物質の大部分は、地表面のごく浅い層に補足されていることがわかってきました。地下水に到達する放射性セシウムはごくわずかであり、ただちに地下水に放射性セシウムが含まれる可能性は低いと考えられます。
 浅井戸は10mくらいの深さから取水するものが多いようです。雨が降ると水が濁るなど、水質に影響が出やすい井戸の場合は、放射性物質が入り込む可能性は深井戸よりも高いことが考えられます。


Q.地下水には色々な放射性物質が含まれているというのは本当ですか?
 
 元々地下水は放射性物質を含んでいます。地域によって大きな濃度差がありますが、一般的に花崗岩質の岩石が地下にある地域では高濃度に含まれています。これは、花崗岩に含まれるウラン鉱物からラドンと呼ばれる放射性ガスが地下深くから自然に出ており、地下水に溶け込むためです。 

Q.放射能に汚染されていない水を得るには深度何mの井戸を掘ればよいでしょうか?.

 土の粒子に強く吸着されるセシウムに比べて、ヨウ素は雨水と共に土の中に浸透しやすいですが、半減期(放射性崩壊で量が半分に減る時間)が8日なので、ヨウ素は浸透中に崩壊しますから、地下水がヨウ素に汚染される可能性は極めて低いと考えられます。ただし、地下水位が高くて地表近くまであるような場合や、蓋やカバー等の無い井戸で大気から直接放射性物質の降下・混入が考えられる場合、また地表水が直接地下に入ってしまうような人工構造物(例えば、浸透ます等)がある場合には、放射性物質が地下水に入っている危険があります。
 井戸の深度を考えるとき、深いところにある地下水は浅いところにある地下水より安全です。しかし、岩盤より浅く掘るのであれば、水は浅い部分と深い部分でつながっていますので、沢山揚水すれば上部の水を深部に引き込むことになります。また、掘削工事の際に放射性物質で汚染されている地表近くの土が地下に入り込むようなことがあると、かえって地下の地層や地下水を汚染させてしまう可能性があるので、工事は慎重に行う必要があります。


 

Q.これから先、放射性物質が地下水を汚染する可能性はあるのでしょうか?
 

 地中での放射性物質の動きはその物質と土壌粒子との結合の度合いによって大きく変わります。放射性物質がある場所の土を採って調べてみないと正確なことはわかりませんが、一般的に次のように考えられています。
セシウムは土壌に強く吸着されるので地下水の流れの0.1倍のスピードで地中を動きます。地下水の流速は一年に数十cmから数m程度です。セシウムの地中での動きは、地下水の流速よりも遅くなりますので、土壌中にあるセシウムは急速に広がることは無いと考えられています。
 ヨウ素は土に結合しないので、水と同じ速さで地中を流れます。しかし、ヨウ素の半減期(放射性崩壊によって半分に減る時間)は8日なので、地下水に到達する前に濃度が低くなり(数か月で無くなる)、これも大きく広がることは無いと考えられます。
 ストロンチウムが土壌中にある場合、これは少しか土壌に吸着されないため、地下水の数分の1の速さで土壌中を動きます。半減期が29年と長いので、これが地下水中に漏れた場合には注意が必要です。
 放射性物質が土壌中にある限り、年単位で浸透すると思われ、直ちに汚染源から地下水まで広がることは考えにくいです。ただし、放射性物質を含んだ雨がふたの無い井戸などを通して直接地下水に入る場合には地下水が放射能に汚染される可能性があります。外気に直接露出している湧水なども放射性物質の混入の危険があります。

資料 : 放射性物質の土壌中での動きhttp://www.ruralnet.or.jp/images/oyakudachi_3002.pdf
水相系における放射性核種https://sites.google.com/site/jchernobylreport/3/3_5


Q,食品100Bq/kgは危険ですか?

 

 食品100Bq/kgは、内部被曝1mSv/yをクリアーするように基準が決められています。

累積100mSvで0.5%、ガンで死亡するとされています。

寿命100年(子供の感受性を無視)で計算します。

 1mSv/y×100年=100mSv(累積)

生涯100mSvですので、0.5%の人間がガンで死亡します。

 寿命80年として計算すると

1mSv/y×80年=80mSv(累積)

ですので、0.4%の人間がガンで死亡します。

 長野県の人口が現在 2,122,751人

2,122,751×0.4(%)=8491人

 この基準値上限で食品を摂取し続けた場合、内部被曝だけで長野県下では8491人がガンで死亡すると計算できます。

参考資料 :

 長野県の人口と世帯数

http://www3.pref.nagano.lg.jp/toukei1/jinkou/jinkou_1.htm

 食品中の放射性物質の新たな基準値について

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120117-1-03-01.pdf

 

 

 

Q.500Bq/kgの落ち葉は危険ですか?

A. 密封されていなければ取り扱いに注意が必要です。以下参照。

電離放射線障害防止規則
(昭和四十七年九月三十日労働省令第四十一号)
 

最終改正:平成二四年九月一四日厚生労働省令第一二九号



 労働安全衛生法 (昭和四十七年法律第五十七号)及び労働安全衛生法施行令 (昭和四十七年政令第三百十八号)の規定に基づき、並びに同法 を実施するため、電離放射線障害防止規則を次のように定める。

   第一章 総則

 

第一条  事業者は、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めなければならない。

 

第二条 この省令で「電離放射線」(以下「放射線」という。)とは、次の粒子線又は電磁波をいう。 
一 アルフア線、重陽子線及び陽子線
二 ベータ線及び電子線

 

三 中性子線

四 ガンマ線及びエツクス線
2 この省令で「放射性物質」とは、放射線を放出する同位元素(以下「放射性同位元素」という。)、その化合物及びこれらの含有物で、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

 

一 放射性同位元素が一種類であり、かつ、別表第一の第一欄に掲げるものであるものにあつては、同欄に掲げる放射性同位元素の種類に応じ、同表の第二欄に掲げる数量及び第三欄に掲げる濃度を超えるもの

二  放射性同位元素が一種類であり、かつ、別表第二の第一欄に掲げるものであるものにあつては、同欄に掲げる放射性同位元素の種類に応じ、同表の第二欄に掲げる数量を超えるもの。ただし、その濃度が七十四ベクレル毎グラム以下の固体のもの及び密封されたものでその数量が三・七メガベクレル以下のものを除く。

 

参考 :

落ち葉のたき火等の自粛  40Bq/kg

落ち葉の肥料に含まれることが許容される最大値は、400ベクレル/kg

落ち葉の放射能濃度が8,000Bq/kgを越える物は指定廃棄物


 

Qマスクはセシウム対策に有効ですか?.

 福島原発事故後の2011年4月28日~5月12日 の大気中の放射性セシウムの粒子の粒径は大部分が2μm以下の微小粒子で、0.2-0.3 μmと0.5-0.7 μm が大部分を占めていました。

 放射性セシウムの元素 自体の大きさは酸素分子と同程度で0.1μMの1000分の1レベルのサイズ です。 事故で放出された放射性セシウムは飛散直後はガス状の小さい粒子で、時間が経過するにつれて大きくなり、 大気中での寿命が長い粒径0.1~2μm程度のサイズになって長い距離を輸送されたようです。放射性セシウムは地表面、植生、建物などに直接沈着 したり、雨・雪と衝突してその表面に着いて地表に到達したり、雲・霧のなかにとりこまれて重力によって地表に沈着しました。 放射性セシウムの沈着した土壌粒子は大部分が粒径2 μm以上です。

 

 資料:風に乗って長い距離を運ばれる放射性セシウムの存在形態

 http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20120731/nr20120731.html
 

 このことから、大気中の粒径0.2-0.3 μmと0.5-0.7 μmの 放射性セシウム粒子と放射性セシウムが付着した粒径2 μm以上 の土壌粒子の再飛散による呼吸による吸引は微粒子捕集効率(PFE)0.1μm 99%のマスクによって防げることがわかります。

  また、セシウムを含む粒子を各種フィルタで捕集する場合、 粒径の大きい粒子は補足されやすく、粒子が小さいものも拡散係数が大きくなるために補足されやすくなります。最もフィルタを通りやすく補足されにくいのは、 フィルタの穴の大きさの1/10 程度の粒子です。

 

 

  

Q.低線量放射線被曝の測定方法を教えてください

  放射能汚染地域における正確な線量評価が求められています。その評価方法としては

○モニタリングポストおよびガラスバッジなどの個人線量計
○血液中のリンパ球検査
○γ-H2AXを用いた生体内DNA損傷レベルのモニタリング
などがあります。

 モニタリングポストやガラスバッジなどの線量計では正確な被曝量が測定できず、装置や測定場所による差異が生じます。モニタリングポストはその地域の目安となる線量しか提供できていませんし、ガラスバッジはその方向依存性に問題があるといわれています。
血液中のリンパ球は生体内で最も感受性が高く、被曝後に染色体異常や突然変異頻度の解析をすることで放射線の影響を調べることができます。チェルノブイリでも、4月26日の事故直後から患者にリンパ球減少が広く認められました。しかし、リンパ球の検査は時間と労力がかかりすぎます。
γ-H2AXを用いた生体内DNA損傷レベルのモニタリングは新しい評価法として注目されています。この被曝線量の新しい評価法はγ-H2AXというDNA近傍に存在するヒストンタンパク質の観測に着目したものです。DNAが巻き付いているヒストンタンパク質がH2AXです。ガンマ線照射後の細胞で発見されたものがγ-H2AX(リン酸化型H2AX)です。放射線などによってDNAが損傷を受けるとH2AXがリン酸化され、γ-H2AXになります。DNAが損傷を受けてできたリン酸化したヒストンタンパク質は染色することによって、顕微鏡によって斑点として観察できます。この斑点をDNA損傷と考え、DNAにダメージを与える放射線などによって、細胞のDNAがどの程度損傷を受けたのかを定量することができます。しかしこの手法で検出されるDNA損傷は、修復されずに固定した損傷であり、修復酵素によって修復を受けた損傷は検出できないという欠点があるということです。

資料:γ-H2AXを用いた生体内DNA損傷レベルのモニタリング
http://rbrc.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20130408104800-3A29A15F656107E2F30547E1748BE61DE08AC01DAF18F6BF52187CA1E083FD46.pdf
http://ci.nii.ac.jp/naid/40019473555

いっぽう、被曝後96 時間追跡ではその間に斑点は染色体架橋上に残存し続けるという実験結果もあります。2本鎖切断(DSB)だけではなく、2本鎖切断(DSB)が再結合した部位にもγ-H2AX(リン酸化型H2AX)が残り続けていることも明らかになっています。放射線被曝によって生じたDNA 損傷は、修復の過程で構造変化を生じ、その構造異常部位にリン酸化したヒストンH2AX の斑点が残存し続ける可能性があるため、2本鎖切断(DSB) 部位を検出する指標として汎用されています。

資料:放射線照射正常ヒト二倍体細胞の分裂期染色体で観察された
DNA 二重鎖切断再結合部位に残存するリン酸化ヒストンH2AX フォーカス
http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/gakusai/summary/h17/0603_ishiyaku/file/ishi_gaku32ronbun.pdf
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001713406

資料:P55 DNA損傷応答経路
http://www.jat-jrs.jp/journal/34-1/34-1-4860.pdf

 


Q.低線量放射線被曝でのDNA切断について教えてください

放射線障害は主にDNAの損傷によってもたらされますが、その損傷の仕方は3種類あります。そのうちの二つ、「塩基切断」と「1本鎖切断」の場合には対の1本が残るので修復は容易です。ところが、三つ目の「2本鎖切断(DSB)」の場合には元に修復するのが難しく、癌や遺伝病を引き起こします。
今迄は高線量被曝では損傷が大きいので修復が困難と考えられ、低線量被曝では修復が容易だと考えられてきましたが、実際には、高線量被曝においては効率の良い修復機構を備えているのに対して、低線量被曝の場合には修復が遅いことが分かってきました。高線量被曝による修復できないほどの大きな損傷では、アポトーシスという機構の細胞死によって切断されたDNAは徐去されるのですが、低線量被曝の場合には、細胞分裂しない限り、修復されないものは、そのままの状態におかれてしまいます。
また、被曝したときに生じる「2本鎖切断(DSB)」の数は被ばく線量に比例します。被曝によってできるDSBは線量に応じて増えますが、DSBが多ければ多いだけ速やかに修復されて、24時間後に残っているDSBの数は、何れも10細胞あたりDSB1個という実験結果があります。つまり、この低線量被曝(1、2、5、20、200mSv)の実験では、線量の強さと残存DSBの比例関係は成り立たないということです。

資料:Evidence for a lack of DNA double-strand break repair in human cells exposed to very low x-ray doses
http://www.pnas.org/content/100/9/5057.long

資料:極低線量放射線被ばくヒト細胞ではDNA二本鎖切断修復が行われない証拠
http://www.iips.co.jp/rah/spotlight/kassei/final_4.htm

資料:低線量X線照射によるDNA二重鎖切断にバイスタンダー効果は寄与しているか?
http://www.oita-nhs.ac.jp/member/cat5_top/cat193/cat351/dna.html

資料:BEIRが細胞レベルの発癌メカニズムを考慮してLNTモデルを支持 http://t.co/Qlh4azLO

また、 細胞分裂をしない老化した組織細胞(特にアポトーシスを起こしにくい細胞)などでは「2本鎖切断(DSB)」は永遠に細胞核に留まり続け、その修復不能なDSBが細胞に無期限の増殖停止と早期老化症状を誘発することを示す論考もあります。そして、修復することができた細胞も長めに培養すると、ごくわずかに修復されない「2本鎖切断(DSB)」が見えてくるようです。

資料:電離放射線被曝により生じる修復不能なDNA二重鎖切断がヒト正常細胞の運命を決定するhttp://www.rerf.or.jp/library/rr/rr1110.pdf
http://jcs.biologists.org/content/125/22/5280




Q.大豆のセシウム吸収が高くなる原因を教えてください

放射性セシウム濃度の高い大豆が作られる畑は
○土壌のカリウム含有量が少ない
○土壌が雲母由来の粘土鉱物がみられない砂質土・黒ボク土である
○土壌のpHが低い
○耕起せずに大豆を作付けている
等の特徴があります。

土壌中のカリウム含有量が低いほど、大豆の放射性セシウム濃度が高い傾向がみられ
ます。 土壌中のカリウムは、セシウムと化学的に似た性質があり、セシウム吸収を抑える働きがあると考えられます。また、大豆の放射性セシウムの吸収は開花期から子実肥大盛期までに起こることが分かっています。
土壌中の放射性セシウムは、時間の経過とともに土壌中の粘土鉱物による固定が進んで作物が吸収しにくくなります。 しかし、粘土含量の多い土壌であっても、放射性セシウムの固定力の弱い粘土鉱物の場合は土壌の放射性セシウムを吸収しやすくなります。特に粘土含量の少ないセシウム固定力の低い土壌(砂質土、黒ボク土等)では、セシウム吸収抑制対策が必要です。
土壌のpHが低い場合も大豆の放射性セシウムの吸収が多いことが分かっています。
耕うんが浅い場合は土壌表層に放射性セシウムが留まっています。土壌表層に根が
集中するため、大豆が放射性セシウムを吸収しやすいと考えられます。 特に不耕起栽培は大豆の放射性セシウム濃度が高い地域では避けた方が良いでしょう。

資料:放射性セシウム濃度が高くなる要因とその対策について 大豆
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/pdf/daizu.pdf


 

Q.農地土壌へのゼオライト投入の効果について教えてください

 

 農地における放射性セシウム対策としては、

○放射性物質汚染土壌の除去

○深耕して作土層の濃度を薄める

○土壌中の放射性セシウムの植物への吸収を抑える
○移行係数が少ない作物を生産する

などがあり、それぞれの方法でメリット、デメリットがあります。
ゼオライト投入は、「土壌中の放射性セシウムの植物への吸収を抑える」方法として注目されています。ゼオライトを投入する意味を理解するには、土壌中の放射性セシウムの存在形態を知る必要があります。土壌中の放射性セシウムは3つの形態で存在しています。(詳しくはこちらをご覧くださいhttp://www3.hp-ez.com/hp/r-dan/page19)
1)水溶性

2)置換態

3)固定態

 一般に、水溶性で存在するセシウム量は全体の1%以下とされています。また、置換体で存在する放射性セシウム量は30%以下であることが示されています。(http://www.ajass.jp/image/recom2012.1.13.pdf P18)

 大部分は移動しにくい固定態であると言われています。このうち植物が利用可能なセシウムの形態は、水溶性と置換態です。

 ゼオライトはセシウムを吸着するので、ゼオライトを投入することによって、1%~30%ほどの水溶性・置換態の放射性セシウムをゼオライトに吸着させ、固定態のように植物に利用できない形にすることができます。

 福島県農業総合センターが実施した黒ボク土と粘土分が少ない砂質土壌を対象とした室内試験では、土壌重量比10%のゼオライトを添加し、1Nの酢酸アンモニウムで24時間浸透した結果、抽出量が40%低減するという結果が得られています。また1%の投入量だと10%程度低減しています。
http://www.pref.fukushima.jp/keieishien/kenkyuukaihatu/gijyutsufukyuu/06ganba_joho/ganbajosenH231228kou.pdf

 実験に使用した黒ボク土、粘土分が少ない砂はセシウムを強く吸着する雲母類が少ないことから、もともと水溶性、置換態で存在する放射性セシウムが多いので、ゼオライトを入れた場合、効果が出やすい土壌であることには留意したほうが良いでしょう。また、あくまで室内実験であることも考慮にいれる必要があります。

 ここで疑問となるのは、ゼオライトに吸着した放射性セシウムは長期に渡って保持されるのか、ゼオライトに保持される放射性セシウムは再溶出しないのか、ということです。
また、置換態の放射性セシウム量の低減と、実際の作物の吸収量低下の関係性が明確でないので、置換態の放射性セシウム量の低減が作物のセシウム吸収量低下に実際に結びつくかが分かりません。さらに、ゼオライト投入による他の元素への影響も考えられます。ゼオライトは土壌改良用の農業用資材として認められていますが、大量に投与した場合には作物の生育に必要なリン酸やカリウムの吸着や他のイオンの脱着の可能性があります。

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