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【能見会長】  それでは、時間になりましたので、第35回原子力損害賠償紛争審査会を開催したいと存じます。
 本日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
 本日は、前回整理をいたしました論点につきまして、関係機関等からも説明を受けつつ、更に検討したいというふうに考えております。
 また、本日は、昨日付けで着任されました櫻田文部科学副大臣と、それから冨岡文部科学大臣政務官に御出席いただいております。最初に御挨拶を頂ければと存じます。お願いします。

【櫻田副大臣】  おはようございます。昨日、9月30日付けで文部科学副大臣に就任しました櫻田義孝でございます。原子力損害賠償紛争審査会の開催に当たり、一言御挨拶させていただきたいと思います。
 今般の原子力事故から2年半が経過し、被災された方々の生活再建のためにも迅速な損害賠償の実現が不可欠でございます。文部科学副大臣としても尽力させていただく覚悟でございます。
 能見会長はじめとする委員の皆様におかれましては、一昨年4月の第1回審査会来、精力的に御審議を重ねていただき、紛争解決に資する指針の策定に取り組んでいただいているものと承知しております。引き続き大変な御苦労をおかけしますが、どうかよろしくお願い申し上げます。

【冨岡大臣政務官】  おはようございます。大臣政務官を拝命しました冨岡勉と申します。
 この審査会において、いろいろな被害者対策が論じられている中、私も長年長崎の地において、これは被爆者の健康障害・被害に対して、そういった補償面、あるいはいろいろな対策を練ってきた経験がございますので、幾ばくかのお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【能見会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、まず最初に、事務局から資料の確認をお願いします。

【田口原子力損害賠償対策室長代理】  資料を確認させていただきます。お手元の議事次第にございますが、配付資料といたしまして、資料1-1と1-2が東京電力からの資料でございます。それから、資料2が住宅の賠償についてということで、論点整理丸2となっていますが、前回のものをより詳細にしたものを用意してございます。それから、資料3-1が帰還困難区域の現状について内閣府の原子力被災者生活支援チームからの資料でございます。それから、資料3-2といたしまして、論点整理2でございますが、前回の論点整理を若干詳細にしたものを用意してございます。それから、資料4といたしまして、前回、やはり被災者支援チームから解除が検討されている田村市の現状について御説明あったわけでございますが、それ以降また進展がございましたので、それについての紙でございます。それから最後、資料5は、地方公共団体の税収減についてということで、前回と同じ資料を用意させていただいております。
 そのほか参考資料として、前回の議事録、それから、慰謝料の額に関する裁判例等について机上に配付させていただいてございます。
 以上でございます。

【能見会長】  資料は以上のとおりでございます。
 それでは、最初の第1の議題に入りたいと思いますが、東京電力株式会社による賠償の現状についてでございます。
 前回から検討を始めております住宅の賠償につきましては、現在東電によって行われている賠償基準では不十分であるというような意見が地元からも寄せられておりまして、それも後で検討するわけですが、その前に、まずきょうは東京電力から賠償の基準や手続及びこれまでの支払の状況などについて説明していただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いします。

【増田常務】  東京電力常務の増田でございます。本日はよろしくお願いいたします。着席して説明させていただきます。
 まず最初に、当社からの原子力損害賠償の全体のお支払状況につきまして、毎回ではございますが、簡単に御説明申し上げたいと存じます。お手元の資料1-1を出していただけますでしょうか。御覧いただきたいと存じます。
 当社は、平成23年10月に本格的に賠償を開始させていただいております。本年9月20日現在で賠償金約2兆7,317億円をお支払しているところでございます。これに仮払いの補償金を加えますと、当社事故の発生から約2年半が経過してございますが、お支払総額は約2兆8,818億円となってございます。なお、賠償件数で申し上げますと、表にございますとおり、いずれも累計で個人への賠償約42万件、自主的避難等の賠償約128万件、事業者の方々への賠償が約18万件となってございます。今後も円滑な手続を進め、しっかりとお支払してまいりたいと考えているところでございます。
 続いて、この後の議題にも関連いたします財物賠償につきまして、隣に座っております福島原子力補償相談室長の小川から適宜御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

【小川室長】  福島原子力補償相談室の小川でございます。座って御説明させていただきます。
 私からは、当社が本年3月29日より受け付けを開始させていただきました土地や建物等に関する財物賠償の実施状況についてお話し申し上げます。まず、お手元の資料1-2を御覧いただけますでしょうか。当社が実施している土地や建物に関する財物賠償の全体像として、受け付け方法や基準などについて概要を御説明申し上げます。お時間の制約もございますので、かいつまんで御説明申し上げます。
 まず、1ページでございますけれども、対象となる資産ですが、当社事故発生日時点に帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域に宅地や建物を所有されていた方を対象に賠償を受け付けております。
 次のページ、2ページになりますが、宅地や建物につきましては、固定資産税課税情報を基に所有者様を適切に確認させていただき、そして、御用意している評価方法を御選択いただき、賠償金額を算定するように、二つの請求書類による手続を踏んで進めているところでございます。なお、建物の評価方法では、固定資産税評価額を基にする方法のほか、平均新築単価を基にする方法、あるいは契約書等の書類を基に計算する方法、そして、現地調査等による方法の大きく四つの方法を御用意しております。
 3ページになりますが、賠償金額の算定の概要といたしまして、宅地は固定資産課税明細を用い、建物は先ほど申し上げました四つの算定方法を用いて、時価相当額を算定する上で可能な限り上乗せできるような係数を掛けるなどの配慮を行っております。
 4ページから8ページまで、賠償金額の算定について。詳細は省略いたしますが、御質問がございましたら後ほどお答えさせていただきます。
 飛びますが、9ページになりますけれども、増改築や特定の高額設備についても追加賠償を反映するようにしております。
 また、11ページになりますが、御帰還された後に修復費用が発生する場合に賠償額を超過する場合には、時価相当額を上限とさせていただきますが、その修復費用に相当する実費額を追加で賠償させていただく方針でございます。
 次に、12ページでございますが、財物賠償等の進捗状況について御説明申し上げます。特に不動産の賠償につきましては、開始に時間がかかる見込みであったため、昨年7月に建物賠償の一部として先行払いを開始している建物修復費用等につきましては、これまで約283億円をお支払しております。その後、本年3月末より宅地あるいは建物に関する財物賠償の手続を開始し、約半年が経過した9月20日現在の賠償実績といたしましては、約8,200件、金額にいたしますと約1,438億円のお支払となっており、先行払いと合計で約2万件、約1,721億円のお支払となっております。
 より迅速に手続を進めてまいり、13ページにございますとおり、今後もしっかりと賠償金のお支払を進めてまいりたいと考えております。なお、御請求を受け付けるに際しまして、皆様から頂きます主な感想といたしましては、手続が遅い、あるいは手続が煩雑だ、あるいは土地や建物以外の財物、例えば田畑、山林、お墓などの賠償はいつ始まるのか、あるいは賠償額が新しい不動産を再取得するには足りない、そういった声が多くある一方、特段のお申立てもなく、御同意いただけている方も相応にいらっしゃる状況でございます。財物賠償につきましては、やはり金額もかなり高額になるということもございまして、所有者様の確認作業など、しっかりと行う必要もございますが、可能な限り柔軟な姿勢で取り組んでいるところでございます。
 以上、財物賠償の概要について御説明させていただきました。

【増田常務】  はい。最後に私から現在原子力損害賠償紛争審査会さんにおきまして、御検討されている論点について、原子力損害賠償を今後円滑に進める観点から一言お話しさせていただきたいと思います。
 まず、「住宅の賠償について」に関しましてでございますが、今小川の方から進捗状況を御説明いたしましたとおり、現在弊社では現状の財物賠償を鋭意進めているところでございます。そうした中、審査会における検討に当たりましては、既に進めております財物賠償への影響を考慮いただいた上で御審議を進めていただいているということで、本当にありがとうございます。
 多少細かな点とはなりますが、現在審査会におきまして議論されていると伺っております住宅取得や建て替えに係る追加費用につきましては、元の住宅を新築した場合の費用が算定の考え方の基点になると思われますが、この新築した場合の費用についてでございますけれども、これまでの当社の賠償の枠組みの中では、いわゆる想定の新築価格として御請求様へお示しした上で賠償額を算定しているところでございます。是非この点を御配慮いただけますと幸いでございます。
 もう1点。避難指示が長期化する可能性のある地域におかれましては、財物や避難等に伴う損害につきまして、これまでの「御帰還」を前提とした賠償ではなく、「移住を余儀なくされたこと」を前提として、土地収用補償制度の考え方に基づいたお支払、あるいは一括払いを審査会で御検討されていると理解しているところでございます。
 その一方で、それ以外の損害、例えば前回の審査会でも話題になりました就労不能損害ですとか、あるいは法人様に関わる営業損害についての「移住を余儀なくされたこと」を前提にした賠償については、具体的な取扱いが若干明確とまではいえない状況にあると考えております。御不安、御心配を覚える被災者様もいらっしゃるのではないかと危惧しているところでございまして、これらにつきましても今後網羅的に御対応させていただく必要があるというふうに考えております。
 当社からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

【能見会長】  どうもありがとうございました。委員の方から何か質問等がございましたらお願いいたします。
 ちょっとお伺いしたいのは、既にある程度財物の賠償は進行していて、それで、被災者の方と合意が既にたくさん行われていると思いますが、その合意がされたときに、書面みたいなものを取り交わすんだと思いますけれども、そこでは、例えば今後一切賠償には応じませんとか、そういう条項は入っていますか。

【小川室長】  私どもの賠償を始めた当初にそういった文言を合意書の用紙に入れていた時期がございまして、かなりおしかりを頂いたところもございます。現在の財物賠償の合意書におきましては、そのような文言は入れておりません。

【能見会長】  この文言が入っているか入っていないかによって違うわけではないと思いますけれども、今後この審査会で住宅等について、当然、いろいろ御努力はされておりますけれども、仮にその額よりも高い賠償基準みたいなものが出たときに、既に合意されている当事者の間でも更に追加の賠償というものが生じる可能性がありますので、そのときの対応の仕方もよろしく御検討いただくよう。

【増田常務】  はい。決してそのような方々が不利にならないように、真摯に対応させていただきたいと思っております。どうもありがとうございます。

【能見会長】  どうもありがとうございます。
 あとちょっと伺いたいのは、6ページに、構築物、庭木についての係数というのでしょうか。それで、構築物の方は建物。これも建物の時価相当額ということですから、中古だったら、その古い経年で減価している中古価格の10%という理解ですね。それから、庭木の方は構築物の想定新築価格で、これは実際の建物が古い建物であっても、現在建てるとすれば幾らかという基準、それの5%と、そういう理解でよろしいのでしょうか。

【織井基準総括GM】  はい、そのとおりでございます。

【能見会長】  余りちょっと私も、これはいろいろ努力されている点なんだと思いますけれども、10%と5%、何か多少根拠というか、参考にされた基になる考え方があるのでしょうか。

【織井基準総括GM】  私どもの方では、今回のこの基準を作るに当たりまして、福島県内における住宅着工の統計等を見ました結果、建物本体に対してそれぞれ10%、あるいは5%というのが統計数字として出てまいりましたものですから、その数字を基準として採用させていただきました。

【能見会長】  どうもありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。東電の基準をもちろん参考にしながら、しかし、もし我々の方で考えて足りない部分があるというときにはどこがどういうふうに違うのかということを明らかにしながら議論させていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

【増田常務】  ありがとうございました。

【能見会長】  それでは、第2の議題、まさに今の問題の続きということですけれども、住宅の賠償についてでございます。住宅の賠償につきまして、前回少し論点を整理というよりは、いろいろな論点を挙げまして、一つは、土地収用補償の制度における考え方、それと比較してどういうことがこの賠償の場合に言えるのかとか、そういうことを資料出したわけでございますが、その点についての引き続きの議論。あるいは今伺いました東電の賠償の現状あるいは基準について、そこで足りない部分があるのかないのか。そういうことを検討したいというふうに考えております。
 最初に、これも資料が幾つかありますので、事務局から資料の説明をお願いします。

【田口原子力損害賠償対策室長代理】  それでは、お手元の資料2でございます。住宅の賠償について(論点整理丸2)(案)というものでございます。これの説明をさせていただきます。
 最初は基本的考え方でございます。まず、(1)のところは、事故時に持家に居住しており、かつ移住を余儀なくされる被害者についてということでございますが、安定的な居住場所の確保の重要性に鑑み、移住先における住宅の取得の必要性が認められる。この際、移住先における住宅取得のために必要な費用については、特に築年数の経過した住宅の事故前直前の財物価値、これが低い評価とならざるを得ないということなどから、当該被害者の所有する住宅に係る「事故前価値」を超える場合もあり得る、認められる。
 それから、(2)の方は、それ以外、移住を余儀なくされる被害者以外の被害者についてでございますが、従前に居住していた住宅が存在するものの、避難指示に伴う管理不能により、当該住宅の損壊が進行し、その建て替え又は大規模修繕が必要となる場合があり得る。この際、建て替え又は大規模修繕のために必要な費用が当該被害者の所有する住宅に係る「事故前価値」を超える場合もあり得るということを書いてございます。
 (3)でございますが、このため、被害者が移住を余儀なくされる場合、又は帰還する場合における住宅の確保に要する費用のうち、元の住宅に係る「事故前価値」を超える「必要かつ合理的な追加的費用」については住居確保損害(仮称)として財物損害とは別に賠償すべき損害と認められるのではないかということでございます。
 続きまして、具体的な費用項目でございますが、この住居確保損害(仮称)につきまして、まず一つ目として、(1)でございますが、住宅建築に要する追加費用ということで、移住を余儀なくされる場合の移住先での住宅建築費用。これが当該被害者が事故時に所有していた住宅に係る「事故前価値」を上回った場合、その上回った額のうち必要かつ合理的な部分の額。それから、丸2は帰還する場合でございまして、その場合も建て替えの必要性が客観的に認められる場合において、新規の住宅建築費用が元の住宅に係る「事故前価値」を上回った場合、その上回った額のうち必要かつ合理的な部分の額。これが一つ目の項目でございます。
 (2)、二つ目は大規模修繕に要する追加的費用ということで、帰還に際し、住宅の大規模修繕の必要性が認められる場合において、当該大規模修繕費用が当該住宅に係る「事故前価値」を上回った場合、その上回った額のうち必要かつ合理的な部分の額。これは括弧書きでございますが、一般的には建て替えに比べると(1)の方が大きいというふうに考えられます。それから、(3)でございますが、元の住宅の建て替えが必要な場合の元の住宅の解体撤去に要する費用。それから、4番目といたしまして、住宅の確保に伴う登記、消費税等の諸費用。この4項目が考えられるのではないかということでございます。
 続きまして、3、この「必要かつ合理的な追加的費用」の水準ということでございますが、それぞれの今申し上げた費用項目について、被害者間の公平性の確保などの観点から、公共用地取得における補償実務も参考にしつつ、「必要かつ合理的な追加的費用」の水準に関する考え方を示すことが適当ではないかということで、具体的に、その下の1から4のとおりとしてはどうかということでございます。
 まず、住宅建築に要する追加的費用。これは移住が必要な場合の住宅建築あるいは帰って建て替えが必要な場合の住宅建築でございますが、これについては、公共用地取得においては、基本的に当該住宅の現在価値プラス運用益損失額を補償額としてございますが、築年数48年の木造建築物であっても、これは実際実務を見てみますと、新築時点の相当の価値の約5割は補償されているのが実態でございます。この48年と過ぎますと、更に低減するということがございます。これは後ろの参考1で図がございますが、これは前回国交省から説明いただいた資料でございますが、この減価償却期間48年としたときに、この48年のところからある一定期間は、このNのところまでは更にそこから下がってまいりますが、その後は横に水平になるというような基準になっているようでございます。
 それで、(1)のパラグラフの二つ目ですが、このような公共用地取得における補償実務を踏まえ、現在の東電の賠償実務において最低の賠償水準と評価されている築48年以上の住宅、これは具体的には減価償却により新築時点相当の価値の2割ということになりますが、それであっても、公共用地取得を上回る水準である新築時点相当の価値の6割、これを最低賠償水準とした上で、築年数に応じた一定の減価償却割合相当分を「必要かつ合理的な追加費用」と認めることが妥当と考えられないかということでございます。
 ここも具体的に図を御覧になっていただきたいのですが、先ほどの6ページの参考1の下に参考2がございます。いろいろ詳細な上乗せはございますが、青いラインが東電の住宅の賠償基準ということで、新築時の価値から48年を減価償却期間として減少させていくというものでございますが、今の考え方で新築時価値の60%を最低水準とした上で、あとは経過年数に従って、ちょうど新築時の価格との2分の1を上乗せする形になりますが、このような形としてはいかがかということでございます。
 続きまして、3ページでございます。3ページの(2)は大規模修繕に要する追加的費用でございますが、今の最低60%、結果的に新築時価値との差額の半分ということでございますが、それと同様の水準の賠償を確保する観点から、大規模修繕に要する費用、それと、元の住宅の「事故前価値」の差額の2分の1を上限として実際に発生した追加費用を「必要かつ合理的な追加的費用」と認めることが適当ではないかということでございます。
 それから、(3)の解体費用、(4)登記等の費用については、それぞれ実際に発生した費用を「必要かつ合理的な追加的費用」と認めることが適当ではないかということでございます。
 続きまして、次の論点、賠償されるべき時期でございますが、この住居確保損害については、被害者が今後の生活設計をより早期に構築できるよう、可能な限り速やかに損害額が明らかにされ、賠償される必要があるのではないか。そのような観点から、住宅建築に要する追加的費用については、当該被害者の所有する住宅の「事故前価値」に係る評価に伴い算出可能でございますので、移住又は建て替えの必要性が客観的に認められた後、速やかに賠償されることが適当と考えられるのではないか。一方、修繕に要する追加的費用、解体費用、登記等の諸費用につきましては、それらの費用の具体的な金額が確定した時点で賠償されることが適当ではないかということでございます。
 それから、5番目は、移住した被害者が将来帰還する場合ということでございますが、移住を余儀なくされ、長期避難をして、その後避難指示の解除を受けて事故時の居住場所に帰還する際に、元の住宅についてやはり管理不能による損壊に起因した建て替えが必要と客観的に認められる場合、このような場合があるかと存じますが、当該住宅の解体費用については賠償すべき損害と認めることが適当ではないかということでございます。一方、元の住宅の建て替え費用については、移住先の住宅宅地を売却することにより確保できると考えられるのではないか。
 それから、4ページでございます。帰還が遅れる者の取扱いということで、移住を余儀なくされる被害者以外の被害者、これは帰還される被害者でございますが、避難指示が解除された後も何らかの事情で帰還しないあるいはできない者がいると想定されます。このような被害者においても、先ほどの修繕費用が実際に発生したとか、修理の見積りをベースにいたしますと、このような被害者について賠償はされないというおそれがありますが、元の住宅について管理不能による損壊に起因した建て替え又は大規模修繕の必要性が客観的に認められた場合には、解体、建て替え又は大規模修繕の費用が実際に発生しなくても、被害者間公平性を確保する観点から解体、建て替え又は大規模修繕に要する「必要かつ合理的な追加的費用」を認めることが適当ではないかということでございます。この場合、損害額の算定が問題になるわけでございますが、元の住宅に係る修繕工事費の見積額等により算定することでよろしいかということでございます。
 それから、7番目は、住宅非所有者、借家人の扱いでございます。事故時に住宅を所有しておられず、借家に居住していた被害者についても移住先の家賃と事故前の家賃との差額等の住居確保のために要する追加的費用が発生する可能性が認められるのではないか。その際、賠償すべき額の水準でございますが、これも公共用地取得における借家人に対する補償額の算定基準というものがございます。これも踏まえて検討してはどうかということでございまして、具体的には、公共用地取得の基準の中で借家人に対する補償基準は、そこの注2にございますように、借家人が支払う礼金と敷金の合計額の10年間の運用益相当額あるいはその家賃の差額の補償年数。これはその家賃の差額の程度によって2年から4年の範囲で決められてございます。
 それから、8番としまして、その他の論点で二つ書いてございます。一つ目は、宅地取得に要する追加的費用ということで、移住を余儀なくされる被害者にとって、移住先で宅地を取得することが必要となり得ます。宅地については、市場価格、取引価格があって、被害者がどこに移住するかという想定もなかなか難しいわけでございますが、被害者が自由に選択した移住先の宅地の取得に要する追加的費用の全額を賠償すべき損害と認めるのはそのような理由から困難ではないか。
 一方で、今回の事故においては、多くの被害者が元の土地よりも土地単価の相対的に高い福島県内の周辺地域、具体的にはいわき市であったり、福島市、郡山市、会津若松市などだと承知しておりますが、こういったところに避難しており、元の土地の「事故前価値」に係る賠償金だけでは避難先での宅地の取得が困難であるといわれてございます。また、公共用地の補償実務では、これは基本的に近傍類地への移転を確保する観点から、近傍類地の取引価格相当額が補償されているわけでございますが、今回の事故においては、被災地域が広範囲に及んでおり、なかなか近傍の同様の宅地を確保するというのは容易ではございません。
 このような中、宅地取得に要する「必要かつ合理的な追加的費用」を賠償すべき損害と認めることが適当か否か。また、認めた場合、その水準についてどのように考えるかということでございます。
 それから、2番目は、建て替えに関する被害者の意向への配慮ということで、これは現地調査でも御覧になっていただいたと思いますが、管理不能により、雨漏り、動物の侵入、カビの増殖、ネズミのふんなどもございましたが、こういった事態を受けて、建て替えを希望するという被害者の意向にも十分に配慮して、柔軟に判断する必要があるのではないかということでございます。
 資料の説明は以上でございます。

【能見会長】  それでは、御議論いただきたいと思いますが、何分難しい問題がたくさん含まれております。どこからといって、ばらばら始めるよりは、あるいは少し整理しながら行った方がいいと思いますけれども、基本的な考え、それから、住宅を新築するあるいは建て替えをする、そういう場合についてのその不足分の、一定割合という言葉が使われていますが、一定割合の賠償をするという考え方について最初に御意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【大谷委員】  前回欠席をいたしまして大変失礼を申し上げました。この基本的な考え方にある住宅・土地の取得についての必要な追加費用、これを住宅確保損害というようなものとして財物賠償とは別に賠償するということは大変結構なことではないかと思います。ただ、各論的な話になってきますと、その賠償の対象者をこの移住を余儀なくされる者に限定するということについては現在のADRの実施状況に照らしてちょっと異論があります。
 当ADRにおきましては、住宅・土地賠償の申立者については、必ずしもこの余儀なくされる者に限定しているわけではなくて、移住をしたことも一つの合理的な選択であると評価される被災者からの申立てについても取り扱っているということでありますし、また、このように指針で移住を余儀なくされる者という要件を掲げますと、東電の賠償の窓口でその要件の立証を求められるというようなことから被災者に困難が生ずるというようなことも考えられますので、その点についてはちょっと賛成できないというふうに考えます。
 それから、3番目の「必要かつ合理的な追加的費用」の水準の問題でございますけれども、細かい話でございますが、まず、1行目に出てくる「被害者間の公平性の確保」、この言葉は東電が賠償を行う中で、いわば賠償額を低く抑えるために使われた常套語でありまして、そういう意味で負のイメージが強く、必ずしもこの言葉を使う必要はないと思いますので、私としては指針においてこの言葉を使うことについては賛成はできません。
 それから、一番大きな問題でございますけれども、住宅建築に関するこの追加的費用でありますが、公共収用においては精緻な議論が積み重ねられているということは前回の議論で紹介されたことを私も知りましたけれども、これは幾ら精緻な議論を重ねても、最後のところは常識的な感覚というようなことに落ち着くのではないかというふうに素朴に考えているところであります。それで、少なくとも今回のような被災の場合に、会計学的な観点から経済的な価値というものを考えるというのは適当ではない。どんなに古い住宅であっても、そこに居住することについては何の不都合もなかった人にとっては立派な住宅であったということでありますので、そういう交換価値的な観点ではなくて、やはり使用価値というような観点を重視すべきであろうというふうに思います。
 そのようなことを考えますと、御提案の6割というのはやはりちょっと低過ぎるのではないかということであります。ADRでこのあたりの検討はこれから本格的に始まるわけでありますけれども、もう少し高い基準を考えることになるであろうと思います。そういう点からしますと、ここは、私としては8割ぐらい、少なくとも7割以上の線を考えるのが適当であろうというふうに思われます。
 それから、続けてよろしゅうございましょうか。まとめて。

【能見会長】  では、少しずついろいろな観点に分かれますので、とりあえずその辺で。

【大谷委員】  3ページの大規模修繕の話がありますけれども、ここで修繕価格について差額の2分の1を上限とするという記載がございますけれども、この2分の1については合理性がないと考えます。センターではこれは恐らく全額を賠償するという前提で作業を行いますし、また、この上限とするという表現については、やはり非常に抵抗感があります。これは大きな制約要素として働きますので、そこはちょっと御再考いただきたいというふうに考えます。
 それから、はしょりますけれども、4番目の賠償される時期の最後の方の追加的費用の支払時期の問題でございますが、やはり被災者はできるだけ早くお金が欲しい。それがなければ実際の行動に出られないということでございますので、この確定した時点ということではなくて、概算でもいいから支払える時期に財物賠償と同時に支払うべきであるというふうに考えます。
 とりあえず以上でございます。

【能見会長】  それでは、とりあえず。幾つか理論的な問題と同時に少し事実関係でお伺いしたい点もあるのですが、先ほど修繕に関して、3ページに書いてあるのは大規模修繕が必要で、その費用が元の住宅の価格を超えている。そういうときの差額の2分の1という表現ですけれども、実際にその元の住宅価格の価値を超えるような大規模修繕が行われている、そういう例がたくさん出ているのでしょうか。

【大谷委員】  ADRででございますか。

【能見会長】  ええ。

【大谷委員】  まだ例はございません。

【能見会長】  分かりました。
 いろいろな論点がありましたけれども、最初の総論的な考え方のところで、まず、こういう住宅の賠償について、いわば上乗せする措置をとる人の範囲というのでしょうか、それについての御議論がございました。これは賠償の水準などとも関連する問題だと思いますけれども、ここらあたりから基本的な考え方に関連する問題ですので、もし御意見があればほかの委員から御提案いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】  損害賠償の基本的な考え方をとるとすると、新しく新築しなくてはいけなくなるというような必要性があることが損害に直結するので、帰還ができなくなるということは考えざるを得ないかというふうには一応思っていますが、その上で、このペーパー自体が、基本的考え方で最初に書いていたり、費用項目の2のところで書いていることと、それから、8の最後のその他の論点で(1)で書いてあることとの関係がちょっとよく分かりません。そして、私が前から申し上げている再取得価格のようなことを1とか2の方に反映させるとすると、例えば2の最後のところに出てくる6割という額が適当かどうかという問題はちょっと考えた方がいいとは思っておりまして、今大谷委員がおっしゃったように、例えば8割とかということを考えた方がいいのではないかと思っております。
 というのは、6割という考え方は2ページの注の1に書いてあるように、2割と10割の真ん中ということなのですけれども、必ずしもこれが理論的に説明されていると言い切れるかというと、批判しようと思えば全くできないわけではないかとも思いますので、ここを再取得できるようにするというふうに考えると、6割よりも高めに、7割とか8割とかにするという考え方はあり得るのではないかと思いました。

【能見会長】  今何割という話の方にちょっと議論が集中しておりますけれども、もちろんこの割合の話、水準の話は「必要かつ合理的な追加的費用」を賠償するときのどの水準で賠償するかということで、これは何か理論的な根拠があるわけではなくて、いろいろな数値が考えられるところであります。
 当然一方で全額、100%も考えられるでしょうし、公用収用の方はここが大体、築48年の住宅の場合には5割なので、収用よりは賠償なので高いところに置くべきだろうということで仮にこういう議論のたたき台としておいているところであります。
 ちょっと基本的な考え方と関係するところですけれども、基本的な考え方と二つ関連するのは、一つは、一応このペーパーでは、今大塚委員が言われたように、移住を余儀なくされる。だからこそ新しいところでの住宅が確保できるような損害を賠償しようという考え方で来ていて、そういう意味では、移住を余儀なくされる人たちの範囲というのをどこかで考えなくてはいけない。それが無制限に広がった上で再取得価格全額が仮に賠償されるということになると、ちょっと賠償という考え方と外れてきますので、そういう意味で範囲の問題と水準は少し関係するので、そこはちょっと御議論いただきたいというふうに考えています。
 このペーパーの前提としている考え方は、移住を余儀なくされるという人たちで、基本的には帰還困難区域の人たちを対象に考えておりますが、しかし、そこで一応線引きはされますけれども、その範囲の外でやはり個別的な事情で帰還困難である、移住を余儀なくされているという判断がされるものがあれば、これはADR等でもって同じような水準で賠償を提案されるということについて否定するものではないというふうに思います。
 ということで、範囲については、ちょっと私の理解している、一応原案を提示した責任者としての補足の説明でございます。
 あと、水準の方はまたいろいろ御議論いただきますが、ここももちろん再取得の価格にできるだけ近いものを賠償して差し上げたいという気持ちは当然ありますが、他方で、この賠償の理論というのは何かということにも関係しますけれども、ちょっと古い考え方かもしれませんが、財産の賠償というのは、やはり今まで持っていた財産の価値の賠償なんだ。それで、それを超える賠償をしかしここであえてするわけですが、その部分はまた新しく取得する住宅という形で財産を形成することになりますので、何かどこかにやはり少し限界はないだろうかというようなニュアンスがあります。
 私自身も、先ほど大谷委員が指摘された2ページの3のところの被害者間の公平性の確保等の観点からという表現は、ちょっとこのままでは少し適当ではなくて、こういう観点も考慮して。要するに、最初は賠償の考え方であるけれども、こういう観点も考慮してということなのですが、これはいろいろな意味がありまして、例えば、借家に住んでいる人たちは、仮に移住を余儀なくされて、今度は借家ではなくて家を買って住みたいという方が出てきたときにも、その賠償はしない。これは借家の方は元の建物がない方については、借家に住み続けるという上で家賃が従来より高い、あるいは敷金だとか余計に費用がかかるというときに、その賠償は一定期間はするということになりますが、もともと持っていない方が建物・土地を取得してそこに住みたいというときに賠償をすることにはならないので、持っている方と持っていない方の間で一番大きな差が出てきたりするので、そういう意味で被害者間の公平性なども考慮しながら。これが第一の視点というわけではなくて、これも少し考慮した方がいい。東電等が使っているのとはちょっと違う意味かもしれませんので、表現は少し注意した方がいいと思いますけれども、そんなことが基本的なペーパーの考え方だということでございます。
 更に御議論いただければと思うのですが。水準とか範囲とかそういうところに御関心が集中しているかと思いますが、いかがでしょうか。

【大谷委員】  ちょっとよろしゅうございましょうか。今回は宅地に関しては余り具体的な御提案がない。

【能見会長】  提案はないといいますか、それを議論していただこうという意味で。

【大谷委員】  議論。素材はないといいますか。

【能見会長】  方向性は出しておりません。

【大谷委員】  その総論的な考え方として、この4ページの8の真ん中あたりです。追加的費用の賠償の関係でございますけれども、被害者が自由に選択した移住先の宅地の取得に要する追加的費用の全額を賠償する損害と認めることは困難であるという記載についてはかなり違和感があります。
 まず、自由にということが言えるのかどうかということです。ああいう大災害からやむにやまれず、とにかくどこかへ移住しなければいけなかったという人たちが、果たして本当に自由に選択したのかという評価の問題はあるのかと思いますし、ここもまだ総論的な話ではありますけれども、当センターとしてはやはり差額については全額を認めるというスタンスでございますので、追加的費用等についても恐らく全額を認めるという立場で運営していくだろうと思います。

【能見会長】  議案を提出するのは恐らく私の責任だと思いますので、私の方でちょっとだけ弁明といいますか。自由な意思というのは表現として使われておりますけれども、それによって何か減額の決定的な要素になるかどうかというところはちょっと異論もあるところであるということは十分理解しております。むしろ土地については、この建物と似たような問題かもしれませんけれども、ちょっと理論的には違う問題かもしれません。少し違うことを今お答えして大谷委員の質問とは少しずれてくるかもしれませんが、土地についてもやはり建物と似たような点からいえば、従来の土地の価値よりはより価値のある財産を取得して、そういう意味で、そういうところに住むためには、そこの土地を買うことは余儀なくされるわけですけれども、より高い価値の土地を取得するということになるので、そういう意味でやはりある種の資産形成がこういう土地を持っていた方についてはされる。しかも土地は建物と違って、建物の場合は、移住された方の元の建物は当然滅失といいますか、長い期間の間には価値はゼロになるはずですけれども、土地はゼロにならないで残りますので、土地を取得された方は、将来汚染が排除されて元に戻れるようになったときに、これはまだここで、審査会で十分議論した点ではありませんけれども、元の土地も取得でき、新しいところの土地も両方取得できるという状態が生じます。
 そういう意味で、建物以上にいろいろなほかの被害者とのバランスというか、賠償は賠償ですから、賠償の観点が大事ですけれども、ほかの被害者とのバランスも考えなくてはいけないというようなことなどもあり、そういう意味で土地について、ここでは方向性はまだ出していない。皆さんの御議論の方向に従いたいというふうに考えているところであります。
 それから。とりあえずそういうような考え方が背後に入っているということです。

【大谷委員】  1点補足させていただきたいと思いますけれども、この住宅の宅地の取得費用というのは、もちろん無制約に認められるわけではない。

【能見会長】  もちろんそうですね。

【大谷委員】  合理的な範囲のものであれば、そのまま認めるということもあるでしょうし。従前とそれを比べておよそバランスを失したものであるとすると、それはやはり何らか制限を加えるべきであって、例えば何か標準的な地価というようなものによって、その辺の基準を定めるということは当然あり得るというふうに考えております。

【能見会長】  ほかにいかがでしょうか。はい、高橋委員。

【高橋委員】  確かに自由にという表現が多少の誤解を招くようなところであるのかもしれません。ここで言いたいのは、いろいろな事情で価格や広さが異なる場合、宅地を取得された場合にそれをそのまま全てを損害賠償額と認め難い場合があるということをおっしゃりたいんだろうと思うのです。ですから、そういうものをストレートに表現された方が、「自由に」という言葉に対する違和感が消えるのではないかと思います。

【能見会長】  その点はおっしゃるとおりだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。はい、中島委員。

【中島委員】  対象となる人の範囲と、それから賠償のレベルとは相関関係にあるように思うのですけれども、対象者となる「移住を余儀なくされる」被害者というものを帰還困難区域か、生活圏がそこに入っていれば余儀なくされることもあるのかという問題とも関わるとは思うのです。「移住を余儀なくされる」被害者の範囲を絞った上での賠償という前提に立ったとき、ADRの方では6割というのが違和感があるというのが少し分かるような気がするのですが、「余儀なくされる」という範囲を帰還困難区域の外側であっても、例えば行政区画が半分半分に分かれているところが結構ありますけれども、インフラ整備が行政単位で行われるということを考えると、帰還困難区域の外側であっても「移住を余儀なくされる」範囲に含むという弾力的に、あるいは例示をもって少し帰還困難区域の人よりも広げるというのであれば、この6割というのもあるいは合理性があるようにも思うのですけれども。
 それともう一つは、大規模修繕その他の追加的費用についての必要かつ合理的というものの証明をどういうふうにするのかというのがちょっと気になりますが、ただ、ここでは具体的にはいい知恵はないのですけれども。
 それともう一つ、大谷委員が、大規模修繕の2分の1を上限とするというところの根拠を指摘されたのですが、恐らく新築と大規模修繕は実際上は紙一重で、修繕ですと従前の登記を使いますけれども、新築だと登記を変えなければいけない。恐らく実質は新築なんだけれども、大規模修繕でやる場合もあるということもよく行われていますから、そういう意味では、新築と大規模修繕のバランスをとるということは一つ合理的ではないかと思います。
 以上です。

【能見会長】  先ほどの大規模修繕の方は、ここで2分の1という書き方をしていますけれども、先ほど事務局から説明がありましたように、新築価格の48年の建物について6割を確保できるという基準で考えると、その差額の2分の1になるので、それと同じ基準をここでとっているということですね。ですから、いろいろな論点がありますが、その6割というのが低いかどうかという問題と、それから、新築の場合と修繕との間で考え方を区別して修繕の場合には違う基準で考えるかどうか、そういう御指摘だったというふうに思います。それを一応この議案では同じ考え方をとっている。
 それから、今住宅賠償についての考え方で追加分を支払う人の範囲の問題というのがやはり一つの大きな問題でして、今までの賠償でもありましたけれども、どうしてもある種線引きというのは変ですけれども、考え方として、移住を余儀なくされた人たちの賠償だということで、とりあえず目安になる一定の範囲を考えるわけですが、どうしてもそこがそういうふうに賠償されるのであれば自分たちもということで、類似の事例については広がっていく可能性があるということ。それは先ほど申し上げましたけれども、それが無制限に広がるということを予定しているものではありませんが、個別の事情で広がるということ自体も否定するものではないと考えております。
 しかし、どのぐらい広がることがあるのかということと賠償の水準というのは若干は、やっぱり関連するものがあるかな。最初から、住宅賠償についての非常に広い範囲の人について賠償するということになると、それこそ自由意思が入ってくる問題があって、別に自由を余儀なくされているわけではないけれども、やはり、こちらに住みたいという人たちが、仮にこの住宅賠償の対象者になると、そこには自由意思の問題が入ってくるので、そういうことについてまで全額というか、ここで一応考えている基準を当てはめるわけにはいかなくなってくるだろうというところで、むしろ自由意思の問題はあるかもしれません。

【中島委員】  前回、借家権の価格の話が出て、私としては、宿題のつもりでいたのですけれども。国税庁の財産評価基本通達では、借家権割合というものが、県ごとに変わっておりますけど、福島県の場合は建物の固定資産税評価額の30%になっております。ただ、これが、4ページのこの基準と具体的な計算してみると、どういう違いが出てくるのかよく分からないですが、ただ、それは平常時の問題であって、これが、例えば正当事由の補完としての立ち退き料という場面では、過去の裁判例では、土地の更地価格の何割かが借地権価格になり、その借地権価格の30%から50%の間を借家権価格という算定をしている場合が多いんじゃないかなと思うのです。鎌田先生の方が御専門かもしれませんけれども。
 それと、この土地収用の場合の補償基準と、どのぐらい差が出るのか分かりませんが、この補償基準ですと、かなり低額になるような気がしますので。これが先ほどの被害者間の公平という問題で、少し下の方に基準がなる、いわば足を引っ張る数字になっているとしたら、ちょっとここを再検討する必要があるんじゃないかなと思います。

【能見会長】  ここの基準を、これをそのまま当てはめるという趣旨ではなくて、収用の場合の基準がこうなっているけれども、賠償の場合には、この家賃の差額との補償のやつが今、2年、4年になっていますけれども、この年数ではなくて、例えば10年とか、そういう期間が考えられるという話で、これがそのまま賠償の基準になるわけではございません。
 それが一つと、それから、おっしゃるように借家権の価格がどのぐらいかを、比較の上で算出できるようなものであれば、算出して比較してみるというのは一つの考え方かもしれませんね。よく分かりませんけれども、いずれにしろ、金額としては比較してみるとどうかという気がいたします。少なくとも借家人の側の追い出される側の事情は似たようなもので。ただ正当事由といいますか、建物所有者の方の事情も違いますので、全く同じような考え方がとれるかどうか分かりませんけど、ちょっと算定をしてみたいと思います。
 その上で考え方として、鎌田委員、どうですか。

【鎌田委員】  この4ページの7にある住宅非所有者(借家人)の扱いですけど、これは基本的な考え方という点では、ほかのところと同じで、ここでの損害賠償が、今まで借家人として借家権を持っていた、その借家権を奪われたことに対する財産的な損失の補塡をしようというふうに考えているのか、あるいは生活の転換を余儀なくされた、新たな生活を別の場所で始めなければいけない、それを確保するために、どれだけの損失が出てきたかに着目するのか。
 ここで今、議論の対象となっているのは、主として生活再建に必要な追加的費用の賠償という観点だろうと思っていますので、どちらかというと借家権の財産的価値をどう算定するかという方向から見ていくよりも、新たに借家をして新しい生活をそこで一定期間、安定的に営む上で、どれだけ追加的な費用等がかかり、その負担が余儀なくされてきているのか。それは完全に賠償すべきであると、そういう方向から考える方が筋かなと思います。
 御指摘の点も踏まえて、もうちょっと考えさせてもらえればと思います。

【能見会長】  おっしゃるように、基本的な考え方は今、鎌田委員が言われたとおりで、そのときに追加的な費用の賠償として何らかの根拠、算式で算出するわけですけれども、その費用が新しい住居を確保する上で──この場合は借家ですけれども、そういう住居を確保する上の追加的費用の賠償として十分かどうかというときに、いろいろな算式で借家権価格も参考値として見てみようということで、鎌田委員が言われたとおりだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。大塚委員。

【大塚委員】  大規模修繕に関して、さっき中島委員がおっしゃったことはそのとおりなのですが、大規模修繕は、修繕というところと、新築にかなり近付くというところと両方の面がありますので、なかなか難しいと思っております。そして、2ページの4行目に書いてある、この大規模修繕の必要性というのを客観的に判断するとすれば、これは修繕の一種なので、さっき大谷委員がおっしゃったように、必ずしも3ページの3行目にある2分の1を上限にする必要があるのかという問題はあると思っていまして、この必要性をどのぐらい客観的に判断できるかということかなと思うのですけれども、仮に客観的に判断できることを前提とすると、同じところに住むのは当然の権利のような気もしますので、そう考えると、上限を付けること自体が適当でないという考え方もあり得ると、個人的には思います。

【能見会長】  もとの住宅に戻って、そこで住みたいという方についての話なので、理論的に、さっきの新築の場合とどう違うのかというのは必ずしもうまく説明できないかもしれないけれども、修繕の方については、新築とは少し違うという考え方はあり得るかもしれませんね。これも、ちょっと検討ということだと思いますけれども。
 住宅の、先ほど新築あるいは建て替えのときの差額の追加的費用の賠償の水準についても、御感触といいますか、御意見を伺えると助かりますが。大塚委員の場合は、どのぐらいがよろしいと考えておられますか。

【大塚委員】  新築の方ですか。

【能見会長】  新築の場合です。

【大塚委員】  新築の場合は、さっき能見先生がおっしゃったように、もとの建物は残っているということもございますので、それは一定の配慮はせざるを得ないとは思っておりますので、10割というわけにはいかないですけれども、七、八割という水準でもいいのかなという感じはしています。

【能見会長】  建物の場合は恐らく、これもケース・バイ・ケースで、すぐ戻れる方も。最初の判断するときには移住を余儀なくされると判断されても、実は意外と早く、帰還困難区域でも戻れる方というのはおられるかもしれませんので、もとの住宅も、そのまま価値が復活してくる方もおられるかもしれませんが、住宅の場合には、恐らく長期化。戻るまでに相当な期間がたつと、かなり荒廃して、ゼロに近くなる可能性も。むしろ、それが多いかもしれませんね。
 ほかの委員の方で、もし賠償の水準も含めて、あるいは賠償の考え方について何か御意見があれば、次回に向けての次の案を検討する際の参考にさせていただきたいので、御意見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
 大谷委員は先ほど6割は低いというので、どのぐらいが適切だとお考えでしょうか。

【大谷委員】  とりあえず8割と申し上げましたが。

【能見会長】  8割ぐらいだと。

【大谷委員】  はい。

【能見会長】  ほかの委員は、いかがでしょうか。この場で御意見がなければ、また別途、御意見を伺わせていただければと思いますが。
 それでは、住宅、それから今、建て替えについて、あるいは借家の場合について御議論いただきましたけど、土地も含めて、土地の方はいかがでしょうか。
 先ほど申し上げました、土地の方は、それこそ、もとの土地の価値が、現在は価値がゼロという判断ですけれども、だからこそ賠償しますけれども、将来、復活してくる可能性があって。そのときには、今、これ指針で書くかどうかは別ですけれども、恐らく復活してきたときの、その土地の価値は、何らかの形で清算せざるを得ないのではないかと思います。でないと不当利得になると思うので。それを今、指針で書くわけではございませんけれども、そういうふうに土地については少し建物とは違う要素があるので、それも含めて御検討いただければと思います。いかがでしょう。
 これも法律家といいますか、中島委員なんか、いかがですか。

【中島委員】  西武鉄道事件の一部上場廃止されたときの株価の損害の計算については、将来、再上場されるかもしれないけれども現時点での損害で計算すれば良いという判断でしたが。ただ、あの判断では、将来値上がりというか、再上場したときには精算するんだという前提になっていたと思います。ただ、それを今回の場合、東電は所有権放棄ということですから、実際に不当利得が確実に発生するわけです。西武鉄道の場合は確実に上場するかどうか分からないという事案だったので、その確実に不当利得が発生するというところを、どう現在の損害に反映させて考えるかということだと思うのですが、そこが非常に難しい問題だと思います。
 先ほどの住宅の、ちょっと低いんじゃないかという、感覚的には私もそう思うのですが、ただ土地の問題があるので、それを総合的に考えると、確実に将来、利得が生じるものを現時点で全く反映させなくていいのかというところは、ちょっとひっかかる感じがします。

【鎌田委員】  よろしいですか。

【能見会長】  どうぞ。

【鎌田委員】  私は、どちらかというと、例えば帰還困難区域の土地が非常に長期間にわたって帰還困難状態が続いたけれども、いずれかの時点で帰還できるようになって、一定の利用が再開されたとすると、そこで価値が必ず生まれてくるわけで、そういう人は、その土地を持ち続けている人にとっては、利得がそこで生じたというふうに言えるんだけど、私は、それは不当利得じゃないと思う。この問題については、やっぱり賠償の時点で100%賠償と決めて、しかも東電は賠償者代位もしないとしたところで、もう一旦決着はついているというふうに考えた方がいいような気がする。
今回、当面問題になっているのは、新たに土地を入手して、そこへ建物を建てるときの、その土地取得価格について、どこまで賠償するかという話なので、そのときに将来利得があるかもしれないということ、直接結び付けて考える必要があるかというと、今はちょっと、それは度外視して、その問題だけを考えた方がよろしいんじゃないかなと思います。

【能見会長】  私も、もちろん、土地をめぐるいろんな問題点の中には建物と違う問題があって、今のような、二重利得と言っていいかどうか分かりませんけど、そういう問題もある。ただ、鎌田委員が言われたように、現在、移住を余儀なくされて、土地も買わなくてはいけない人の賠償の問題としてどうするかと。二重利得の問題は、もしかすると少し影響するのかもしれないし、影響しないのかもしれないし。だけど、賠償は賠償の問題として考える。その上で土地について、その差額分の一定割合を賠償する……。一定というか、全部という考え方もあるかもしれませんが、それが適当かどうかという、鎌田委員のおっしゃったように論点を整理した方がいいかもしれませんね。ちょっと私が余計なことを申し上げたために、少し議論、混乱したかもしれません。
 土地の再取得の場合については、これも大谷委員が言われたように、前に広大な土地があったときに、その広大な土地を基にしての再取得、それだけの広い再取得というのはなくて、恐らく何か平均的な面積のものを考えざるを得ないと思いますけれども、そういうような要素が土地の場合にはあるということでしょうか。
 ほかに、もし何か委員の中で御意見があれば伺いたいと思いますが。
 それでは、もし御意見がなければ、今、必ずしもたくさんの意見が出てきていたわけではないので、できれば、いろんな委員の大体の合意の線でまとめたいと思っていますけれども、まだもう少し皆さんの御意見を伺った上で詰めを行いたいと考えております。
 あと幾つか、そうですね。あとは少し細かな線かな。いつ賠償するかとか、危機感あふれるものはとかと、いろいろありますけれども、大本が決まってから、いろいろ考えた方がいいと思いますので、とりあえず今日は、このぐらいにさせていただきましょうか。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。あるいは、この点だけ押さえておいた方がいいというのは残っているかな。

【田口原子力損害賠償対策室長代理】  大丈夫です。

【能見会長】  いいですね。じゃあ、どうぞ。

【大塚委員】  理論的な話だけで恐縮なのですが、4ページの6なのですけれども、帰還が遅れる者の取扱いですが、結論はこれでいいと思ってはいるのですけど、損害賠償の考え方からすると、これは、発生しているかよく分からない損害なんだけれども、発生したものとみなすということだと思いますので、そういう整理なんだということだけは確認しておいた方がいいと思い

【能見会長】  分かりました。それはそれで、ちょっと表現も含めて少し詰めて検討させてください。
 それでは、次の議題3に移りたいと思いますが、避難指示の長期化に伴う賠償の考え方についてでございます。これも前回の議論、そうたくさんあったわけではございませんけど、それを少し踏まえながら、もう一度御議論いただきたいということでございます。
 その前に、今日は内閣府から帰還困難区域の現状について説明をしていただきたいと思っています。前回、田村市についてだけ説明をしていただきましたが、この問題を考える際には恐らく、ほかの地域はどうなんだろうということも十分踏まえないといけないと思いますので、その点、内閣府から帰還困難区域全体の現状について説明をお願いしたいと思います。では、よろしくお願いします。

【井上参事官】  内閣府原子力被災者生活支援チームで参事官をやっております井上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日のお題でございますけれども、帰還困難区域について、現状を御報告しろということ でございましたので、資料3-1に簡単にまとめさせていただいております。
 資料をおめくりいただきまして、今、能見先生からお話ございましたが、避難指示区域につきましては、区域の見直しを今年の8月に終了いたしまして、避難指示区域が三つの区域に分かれております。
 左側にございますとおり、赤色の帰還困難区域、黄色の居住制限区域、緑色の避難指示解除準備区域のとおりでございます。それぞれ基本的には放射線量に応じて設定しておりまして、一部、ここにも書いてございますが、我々参加する地元での住民説明会を多数開催いたしまして、コミュニティの一体性といったようなものも考慮しながら区域を定めてきたという経緯がございます。
 もう1ページをおめくりいただきまして、帰還困難区域に関する基本的考え方でございます。今申し上げた区域の見直しは、一昨年12月の原子力災害対策本部決定に基づいて作業を進めてきておりますが、その同じ決定の中では、帰還困難区域というのは、2ページ目上部の四角囲いの中にございますとおり、「長期間、帰還が困難であることが予想される区域」であって、「将来にわたって居住を制限することを原則とし、線引きは少なくとも5年間は固定する」こととされております。
 この5年間は、前のページにも出てまいりましたが、空間線量が20ミリシーベルト/年に自然に下がるのが、50ミリシーベルトのところですと大体5年かなということを踏まえて設定されておりまして、去年の段階で、あるいはおととしの段階で、これから5年ということを一つの仮置きとしながら考えてきた経緯がございます。
 帰還困難区域におきましては、このほかの地域に比べまして、まことに申し訳ないのですが、住民の方々の区域への立入り、これは制限させていただいておりまして、先生方にも現場に入っていただいたときに御覧いただいているかと思いますが、警戒区域のときは警察の方々に全て警備いただいておりましたが、今、警戒区域ではなくなった中でも、内閣府で予算を措置しまして、バリケードを設置し、開閉式で人を立たせて運用している所もあるといったような状況になってございまして、住民の方々につきましては、ほかの区域は原則、日中自由に立入りいただけますけれども、帰還困難区域につきましては大体月に一度程度ということで、決められた回数入っていただくという運用をしております。
 また、2ページ目右下にございますとおり、様々な活動につきまして、まことに申し訳ないのですけれども、線量との兼ね合いもあり、制約させていただいているという状況でございます。
 なお、四角囲いの中では書き切れていない、おととしの原災本部決定の具体的な書きぶりは、2ページ目左下の方に書かせていただいております。
 ちなみに5年間、線引きは固定するということが2ページ目左下の下の方に下線を引っ張って書いてございますが、もちろん、「ただし」という後に、こういう規定がございまして、地元ともよく御相談しながら運用を考えていくという状況でございまして、中には帰還困難区域であっても除染やインフラ整備をやって帰れるようにしてほしいといったお声があるのも、また事実でございます。
 次のページでございますが、帰還困難区域における除染とインフラ復旧について現状をお伝え申し上げます。これも同じ原災本部決定に規定されているのが3ページ目上部の四角囲いに書いてございますところでありまして、「帰還困難区域の除染やインフラ復旧については、モデル事業などの結果などを踏まえ、県、市町村や住民など関係者と協議の上、対応の方向性を検討する」こととされております。現状につきまして、除染については、これから環境省さんの方がモデル事業を実施していくと。インフラ復旧については、プライオリティーとしては、その他の地域を先行させていくといったようなところでございまして、まことに申し訳ないのですが、実態上、現状において行われているところはないというところでございます。
 なお、3ページ目中段の除染のところ、内閣府の除染モデル実証事業というのが事故後行われております。これにつきましては表のような現状でございますが、それぞれ除染によって一定の効果がもちろんあるという状況ではございますが、除染前平均値と除染後平均値、特に除染後平均値を見ていただきますと、これはマイクロシーベルト/時になっておりますが、非常に堅めの推測として、全ての人が365日、8時間外にいて、16時間家にいて、遮蔽率の低い家の中にいますという仮定で考えると、大体3.8マイクロシーベルト/時が年間20ミリシーベルトと同値とされておりまして、こうした富岡町、浪江町、大熊町といったような除染前の線量が非常に高いところにつきましては、当時のモデル事業においては、この程度の線量までの低下しか見られなかったということでございます。
 ただし、繰り返しになりますが、その後の除染技術の開発等もございますので、これから環境省さんの方でしっかりとモデル事業をおやりになるということになっております。
 次のページでございます。帰還困難区域は、具体的には大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村、そして南相馬市において設定されてございます。避難指示区域においては、約8万人の方々に避難をお願いせざるを得ない状況でございますが、このうちの人口、面積ともに大体3割が帰還困難区域ということで、2.5万人の方々、337平方キロメートルといった範囲が帰還困難区域となっております。
 人口、面積につきましては下表を御覧いただければと思いますが、大熊町、双葉町につきましては人口の96%の方々が現在の帰還困難区域に事故前は住んでおられた形になっております。また、面積につきましては、双葉町、浪江町、大熊町といったようなところの大きな部分が帰還困難区域に設定されております。
 次の5ページ目は、御参考でございますけれども、復興庁さんで実施していただいております住民の皆様の意向調査というものを挙げさせていただいております。上の方の四角囲いにございますとおり、大熊町と双葉町、人口の95%以上が帰還困難区域というのは、この2町だけでございますので、代表例としてこの2町を置き、また、町、市の全域が避難指示解除準備区域というのは田村市と楢葉町しかございませんので、これを別の方の代表選手と置かせて整理をさせていただいております。
 表中の紫の部分が、それぞれ調査時点、若干ずれてございますが、「現時点で戻らない」と決めておられる方々のパーセンテージでございまして、帰還困難区域の方々の方が、どうしても現時点で戻らないと決めておられる方は多いということだと思います。
 他方で、どの町につきましても、これは私どもが実際に地元に入っていけば実感いたしますが、帰りたいと考えておられる方も、あるいはまだ、どうしても判断がつかないとおっしゃっておられる方も一定の割合で存在しておられるというような実態かと思います。
 今のような帰還困難区域の実態でございますが、先ほど中島委員からも御指摘あったかと思います。帰還困難区域の中にも多様性がもちろんございますし、帰還困難区域の外にも帰還困難区域と似通ったところが実際あるのが実態だと思います。
 まず帰還困難区域の中での多様性と言えるかどうかは微妙なのですけれども、次の6ページに放射線量の推移を示させていただいております。このミリシーベルトは個人線量ではございませんで、飽くまでも先ほど申し上げた空間線量でございますけれども、一番左図を御覧いただきますと、事故の年の11月5日に文科省さんがおやりになった航空機モニタリングの結果です。
 帰還困難区域と設定されていますのは、図中の濃い紫の太線で囲ってある区域でございますが、線量は赤から黄色、緑、青の順番に低くなってまいりまして、50ミリシーベルト/年超というのが濃い赤になっております。これが事故直後の線量と、その後設定されていった帰還困難区域でございますが、それが、右図に行っていただきまして、半年後、そして去年の11月といったような形で、線量は当然でございますけれども、物理減衰で低下しておりまして、現状こういう形になっております。
 もともと一番左の図の方で帰還困難区域と赤い線が合っていないじゃないかというところはございますが、これは申し上げましたとおり区域見直しが、我々が地元の方々と御相談しながら、もちろん全員の方が最後まで御賛成になるわけではないのですが、コミュニティの特定の大字、小字、行政区というところの中で、複数の線量域がある場合については、どちらか大半ということを原則にしながら、コミュニティの一体性を地元と御相談する扱いでやってまいっておりまして、そういった意味では若干の出入りがございます。
 ただ、基本的には原災本部決定に基づいて、放射線量に応じて決定してきているという実態でございますが、当然、線量は下がってきておりますので、右図のような状況になっております。
 それから、帰還困難区域外との関係でございますが、最後のページを御覧いただきたいと思います。
 これは賠償との兼ね合いで、避難指示までの期間に応じた財物賠償、精神的損害が一括支払されるということとの関係で、避難指示解除見込み時期という概念がございまして、その調整を、求められる自治体とは調整を行ってきた経緯がございます。
 避難指示解除の要件は、7ページ目の左にございますとおり、線量は必要条件として当然20ミリシーベルト/年を下回らなければいけないわけですが、インフラとか生活関連サービスとか除染とか、そういうことを踏まえて、地元とじっくり協議の上で、お互い納得して避難指示解除していくというのが現在の政府方針でございます。
 そうしたことを踏まえますと、客観的な要素として、インフラがどういう復旧見込みになっているのか、除染がどういった進捗見込みになっているのかといったようなものを、現状で明らかになるものを踏まえながら見込み時期を決定していったという状況でございまして、本日御参考だと思われるところは双葉町かと思います。
 双葉町は、実は、前ページの地図で御覧いただければと思うのですけれども、町の96%は帰還困難区域ですが、残り4%、つまり地図上で双葉町の右上の部分にある三つの大字の両竹、中野、中浜といったようなところは避難指示解除準備区域になっております。ただ、双葉町の避難指示解除準備区域は同時に津波地域でもあり、また、もともとの実態として私も何回も現地を歩かせていただきましたが、ほとんどの生活関連サービス、あるいは日常生活に必須なインフラは、双葉町の帰還困難区域にございます。そういう観点から、避難指示を解除するに当たっても、その4%のところだけを別立てに考えることは妥当でなかろうということで、町全域を帰還困難区域と原則同額の賠償とさせていただいた経緯がございます。
 実は大熊町も同様の考え方で、偶然でございますけれども、96%の方々が帰還困難区域に住んでおられて、そうではない西の中屋敷、あるいは南の大川原といったところ、面積的にはそれなりにございますけれども、生活関連サービス、インフラといったものが帰還困難区域に集中していたということを踏まえて、このような対応をさせていただいております。
 以上でございます。帰還困難区域、こういったものの考え方で運用してございまして、その中の多様性と外との一体性といったところも、確かに御指摘のとおり、あるかなと思って御説明させていただいた次第でございます。

【能見会長】  どうもありがとうございました。少し私が訂正したいと思いますが、先ほどプレゼンテーションするときに、避難指示の長期化に伴う賠償とともに、解除された後の賠償の問題も一緒に考えてしまったために、プレゼンテーションが少し混乱していましたので、議事録等では少し訂正させていただいて、今ここで御議論いただきたいのは長期化に伴う賠償の話で、その前提としての帰還困難区域の現状を御説明いただいたということでございます。
 ということで、今の帰還困難区域についての説明につきまして何か御質問ございましたら、どうぞ。大塚委員。

【大塚委員】  6ページの帰還困難区域の放射線量の推移について説明していただきましてありがとうございます。
 この最もコアな部分に住んでいた方たちについては、大体何年ぐらいたったら帰れるのかというのを教えていただきたいのですけれども、どんな感じでしょうか。

【井上参事官】  そこは地元の首長さんからも聞かれるところなのですが、二つの議論がございます。一つの議論は、物理的な減衰カーブに従って、それがどうやって落ちていくのかということでございまして、この資料3-1の1ページ目を御覧いただきますと、50ミリシーベルト/年までしか引いてございませんが、これはチェルノブイリ等々の結果を踏まえて作られている減衰カーブでございまして、こういった形で落ちていきますというのが基本であります。
 したがいまして、50ミリシーベルト/年のところは事故後6年、今から4年たったところで20ミリシーベルト/年までは下がるというのが物理減衰でございますが、他方で、本日データをお持ちしておりませんけれども、これは事故当初に書かれたカーブでございまして、その後、事故後2年たった実態というのは、このカーブよりも減衰は大きく、当該データは関係省庁のホームページ等で公表しております。そのため、この1ページ目に載せているカーブ自体については、実態は、それよりも大きな減衰になっていると。このカーブをどういうふうに評価するかというのはありますが、我々としては保守的に、こういう1ページ目に載せているカーブを使い続けているというのが1点でございます。
 それから、もう一つは、やはり除染の効果をどう見込むかというところが大半悩ましゅうございます。3ページのところを御覧いただきますと、先ほど申し上げましたとおり、除染のモデル事業というのは当初は内閣府が実施したのでございますけれども、これから今の技術を使ってどういうことになるかは、先般、環境省さんが「除染の進捗状況についての総点検」ということで発表された文書の中に、モデル事業を双葉町、浪江町で、これから事業発注して、年内に結果を公表するとおっしゃってございます。
 ただ、これ、データとして示していくというのは、今、私どもでも持ち合わせてございませんし、環境省さんにお問い合わせいただくことになるかと思いますが、我々が相当現場の方を歩いていて見るところによれば、やはり線量が高いところは、なかなか除染をやっても線量が下がり切らない部分もあるだろうと思います。
 したがいまして、現状において、この物理減衰カーブ以上の効果、つまり除染の効果を見込んだものは、政府として、申し訳ありませんが、今のところ、できておりません。そこで、かなり差が出る可能性がありますので、これをベースにしながら、これが除染によって短縮されるというところかと思っております。

【大塚委員】  分かりましたが、その6ページに挙がっているのは、50ミリシーベルト超のところが赤くなっているのですが、100とか、コアな部分はもっと高いわけですよね。そのグラフがよく分からないので、もし追加していただけると有り難いのですけれども。

【井上参事官】  もちろんです。全てのカーブがございまして、それも公表しておりますので、お届けできると思います。

【大塚委員】  ありがとうございます。

【能見会長】  どうぞ。

【高橋委員】  6ページに関連してなのですが、ちょっと聞き落としたことでしたら申し訳ありません。第6次の航空機モニタリングの日付が25年11月16日になっておりますが、下を見ると2012年の11月16日になっているので、24年ですか。

【井上参事官】  これは誤記ですね。申し訳ありません。おっしゃるとおり、24年です。

【高橋委員】  24年11月ですと、去年のモニタリングの結果で、それ以降は実施していないという話でしょうか。

【井上参事官】  正確に申し上げると、その後、6.5次航空機モニタリングというのが実施されておりまして、公表もされております。
 ただ、本日持ってきていないのは、やや航空機が飛んでいる範囲がずれているものですから。もちろん、この避難指示区域のところは飛んでおりますが、それ以外の青い広がりとか、そういうところがですね。やや混乱を生ずるので、6.5次航空機モニタリングは持ってきておりませんが、同様に減衰はしてきております。いずれにしても、それも公表されておりますので、お届けさせていただきますが、今申し上げた趨勢に変わりはないというか、もっと線量は確かに下がっている状況でございます。

【高橋委員】  どうもありがとうございました。

【能見会長】  ちょっと先ほど大塚委員が言われたことも関係するのですけれども、いわゆるコアといいますか、今、赤く塗り潰されているところで、更に原子力発電所に非常に近いところなどでは、例えば計測されたもので最高で年間何ミリシーベルトが出ているかというのは御存じですか。

【井上参事官】  そこは改めて規制庁にちゃんと確認をいたしますが、先ほど大塚先生もおっしゃっておられましたけれど、我々、別の、もっと色の濃いところも含めた表を見ているところでいうと、当然ですが、100ミリシーベルト/年を超えているようなところもございましたので、そこはデータとして、しっかり出したいと思います。それも区域が分かりますので、そっちが入った図をお示しいたします。

【能見会長】  ほかに、よろしいですか。どうもありがとうございました。
 それでは、長期化に伴う賠償についての、このペーパーについての説明を事務局からお願いします。

【田口原子力損害賠償対策室長代理】  お手元の資料3-2でございます。避難指示の長期化に伴う賠償の考え方についてというところでございます。
 前書きに三つのパラグラフございますが、ここについては現状認識でございます。帰還困難区域においては、将来にわたって居住を制限することを原則としており、依然として住民の立入りが制限され、本格的な除染やインフラ復旧等が実施されていないなど、現段階では避難指示解除までの見通しを立てることが困難であり、避難指示が事故後6年を大きく超えて長期化する可能性がある地域も存在する。また、帰還困難区域が大半を占める市町村の居住制限区域及び避難指示解除準備区域においても、除染やインフラ復旧等の状況によっては、当該市町村内の帰還困難区域と同様に避難指示が長期化する可能性がある地域も存在するということでございます。
 このように避難が長期化する可能性のある住民にとって今後の生活の見通しをつけるためには、第二次追補までに示した賠償の考え方に加え、避難指示の長期化に伴う今後の賠償の考え方が明らかにされる必要があるということでございます。
 なお書きのところは、そのアンケート調査の結果でございますが、長期間、自宅を離れて避難生活をするに当たって、現在の仮設住宅等での生活を継続するのではなく、長期間の居住が可能な通常の住宅へ転居することが想定され、避難者へのアンケート調査によると、持家での居住を希望する方が多数を占めるということでございます。
 その上で、精神的損害についてでございますが、(1)でございます。理論的には、最終的に帰還が可能か否かによって精神的損害の内容も異なると考えられるが、a、b、cとございますが、aは、長期間の避難の後、最終的に帰還するか否かを賠償がなされる時点で判別することは困難であること。それからb、一般的には帰還が可能な場合の精神的損害よりは帰還が不可能な場合の精神的損害の方が大きいと考えられること。それからcでございますが、現在も自由に立入りができず、除染計画やインフラ復旧計画がなく帰還の見通しが立たない状況においては、仮に長期間経過後に帰還が可能となったとしても、移住を余儀なくされたものと同様に扱うことも合理的と考えることなどから、最終的に帰還するか否かを問わず、「長年住み慣れた住居及び地域における生活の断念を余儀なくされた精神的苦痛等」を賠償することとしてはどうかということでございます。
 (2)、ただし書でございますが、ただし、第二次追補においては、精神的苦痛の内容として、「いつ自宅に戻れるか分からないという不安な状態が続くことによる精神的苦痛」の増大を考慮したこと、それから帰還困難区域については、今後5年以上帰還できない状態が続くと見込まれることから、こうした長期にわたって帰還ができないことによる損害額を一括して、実際の避難指示解除までの期間を問わず一律に算定することとした。これで600万としたわけでございますが、それとの調整が必要と考えられないか。また、その際、避難に伴う精神的損害額に、これまでは生活費増加分を含むとしておりましたが、これをどう考えるか。
 3で、こういったことを踏まえて、避難指示の長期化に伴う精神的損害額をどのように算定すべきかということでございます。
 それから2番目、若干技術的な問題になりますが、避難費用としての宿泊費についてということで、中間指針の第二次追補では、そこに書いてございますように、借家につきましては、例えば従前の住居が借家であった者については、当面は宿泊費の全額が賠償されますが、一定期間経過後は従前の家賃からの増額の負担を余儀なくされた場合の当該増額分とすることが考えられる。住居が持家であった者については、不動産の価値が全損となった場合については、その全額賠償を受けることが可能となった時期までを目安とすることが考えられるとしておりますが、ここについて、もう少し具体的に(2)、まず借家の場合でございますが、第二次追補の考え方。それから、先ほど住居確保損害の借家人の場合の話が出てまいりましたが、その内容も踏まえて、どのように考えるべきか。例えば、住居確保損害の賠償を受けることが可能となった後は、従前の家賃からの増額部分と考えて差し支えないかと。
 (3)が、これは持家の方でございますが、事故前に居住していた不動産の全額賠償を受けることが可能となった後、更に住宅を購入し転居することが可能になるまでの間賠償されるものと考えてよろしいか。
 4は、これは、これまで宿泊費については、様々な避難形態が存在いたしますので、実費賠償を基本としてきましたが、引き続き、それでよろしいかということでございます。
 資料は以上でございます。

【能見会長】  それでは、御議論いただきたい。いかがでしょうか。
 これは前回、ある程度御議論いただきまして、本当に帰還困難区域の全てではないかもしれませんけれども、長期にわたって戻れないという方々の賠償について、一括して賠償する考え方をとるとして、あるいは、それ自体はもちろん議論いただいて結構なわけですが、そのときにどういう賠償をするかというときの考え方を幾つか整理したものでございます。これで全てを論じ尽くしているわけではございませんが、とりあえず議論のたたき台にしていただければということでございます。
 なかなかこれも、仮に一括賠償するにしても、具体的には金額等が問題となると思いますけれども、あるいは、まずは先ほどの住宅の賠償と同じように、人の範囲の問題が問題になるかと思いますが、その上で具体的な金額を考えるにしても、なかなか手掛かりがないので、どういうふうに考えたらいいかについての御意見をお伺いしていただければということでございます。いかがでしょうか。どうぞ。

【大塚委員】  (1)の方が重要だと思いますが、それも大問題なので、(2)の方について議論を提起させていただきます。
 今回、事故後6年を超えて、非常に長期間にわたって帰れない方を特に問題にしているわけですけれども、その方の精神的損害は、ふるさとをなくしてしまったという損害と言うこともできると思いますが、それが(2)で書いてある、いつ自宅に戻れるか分からない不安な状態が続くことによる精神的苦痛と、かなり近いとは思うのですけれども、ちょっとまた別の性格も持っているとも思いますので、その間の関係をどう考えるのかというのは、審査会でちゃんと議論しておいた方がいいかなと思いまして、問題提起をさせていただきます。

【能見会長】  ここでこういうのを書いたのは、私も今まで毎月、例えば10万が支払われているときに、そこでの賠償の際に、こういう要素が考慮されていたとしても、これが直ちに故郷を失うということの慰謝料を、そのものと同じであるとは考えておりません。
 ここで(2)が出てきていますのは、仮に、今の時点で一括の慰謝料の賠償が決まるといたしますと、この帰還困難区域については6年分ということで、3年経過して、残りの3年分というのが、まだ時間がたっていない分があって、その分の賠償が、簡単に言えば3年でいえば半分の300万ですか、それが既に賠償されていて、これを何の賠償と考えるかと。既に避難していて、そこでいろいろ御苦労されるというものが、そういう精神的損害は常に具体的に発生していれば、それにどんどんつぎ込まれるんだと思いますけれども、3年目に仮に長期の慰謝料ということで一括賠償されると、残りのまだ経過していない3年分の賠償と多少オーバーラップする部分があるので、どういうふうにオーバーラップするかを御議論いただきたいと思いますけれども。
 そこで、ちょっと調整が必要なのではないか。あるいは一括の賠償を考える際に、残りの3年分というのも、いわば長期の慰謝料に合算してといいますか、慰謝料の額というのは、例えば仮に、余り具体的な額は良くないのかもしれませんけど、一括の賠償はされるとして、一括の賠償プラス300万というのが結局、故郷を失うことによる慰謝料だと考えることはできるかどうかということですね。
 もし何か先生、御意見が……。

【大塚委員】  個人的な意見で済みませんが、額のことはともかくとして、理論的な整理としては、そうすると、今までは、いつ自宅に戻れるか分からない不安な状態が続くことによる精神的苦痛に関しての賠償をしてきたんだけれども、ちょっとここで、ふるさとの喪失とか故郷の喪失のような損害に転換すると考えていいのかなというのが気になるところです。
 そして、仮に転換するとして、いつの時点で転換すると考えるのかということが理論的には問題になるかと思います。

【能見会長】  生活費が入っている分が従来の慰謝料の中にはありますので、その部分はちょっと違ってくるんだと思いますけれども、もし今の時点で故郷を失うことによる慰謝料というのを出すと、その中には自宅に戻れないことによる不安の状態が続くことによる精神的慰謝料は、やっぱり含まれるんじゃないのでしょうか。ということで、その一括して6年分、慰謝料が払われていると思いますが、そのうちの、まだ時間が経過していない分は結局、今、長期に戻れないことによる慰謝料を一括賠償すると、その中に吸収されないだろうかと、そういう指摘ですね。

【大塚委員】  分かりました。

【能見会長】  これも基本的な考え方、それから今、大塚委員が言われたような基本的な考え方の部分、ましてや金額の手掛かりになるような考え方については、なかなか手掛かりもなくて難しいのですけれども。

【大塚委員】  この議論は理論的な整理ですので、多分、額の議論の前にしておいた方がよろしいかと思いました。

【能見会長】  もし今のような考え方だとすると、いかがでしょうか。

【大塚委員】  それは会長のおっしゃるとおりだと私も思いました。

【能見会長】  ほかに何か……。

【大谷委員】  よろしゅうございましょうか。

【能見会長】  どうぞ。

【大谷委員】  今回の参考資料で幾つか慰謝料等の例、それから交通事故の場合の算定基準等のものが添付されています。ADRセンターの和解事例及び慰謝料の例というものも参考資料として提示されております。これについては、事前にADRセンターの方に御連絡があれば、もう少し細かい補足情報の御提供ができたわけなのですけれども、運用の実例といたしましては、ADRの限界から厳密な主張立証は難しいということから、ごく控えめに見て、ほぼ半額、半分程度が、この原発事故の寄与分ということで運用されているのが実態でございますので、これがフルの慰謝料金額だと受け止められると、ちょっと違うのではないかと申し上げたいと思います。

【能見会長】  このADRの慰謝料の内容は、全てが別に死亡慰謝料ではありませんけど、大きくは死亡慰謝料が出ていますけれども、今回の故郷を失ったことによる慰謝料というのは、やっぱり、ちょっと死亡慰謝料とは性質が違うので、私自身は余り、この金額が参考になるものではないだろうと思います。いろんな意味で、ちょっと違うだろうと。
 私なんか個人的には、後遺症とまた違うかもしれませんが、後遺症の方が、むしろ近いかなという感じがしているところです。
 これ、ADRの死亡による慰謝料というのは、これはむしろ大谷委員に確認しておきたいと思いますけれども、これは普通の死亡慰謝料と同じように、死者本人の慰謝料ということで、相続人などがいれば相続人で分割されるという考え方でしょうか。

【大谷委員】  そういうことです。

【能見会長】  そういう意味で、今回、また慰謝料を認めるとしても、まだ十分詰めていませんが、一人一人に慰謝料を認めるのか、あるいは家族構成だとか何とかによって少し違う要素を入れるか。そういうことも検討の余地があると思いますけれども、従来といいますか、いろいろ家族構成などを考えると難しいので、一人一人だということになると、その一人一人の慰謝料がどのぐらいかを考える際に、ここに出ている幾つかの例、十分参考にはなりませんけれども、横に置いてにらみながら御検討いただきたいという趣旨で、参考資料に挙げてあります。ただ、十分参考にならないので、余り今日も説明はしなかったということです。
 ほかにいかがでしょうか。もう少し考え方を先に進めてよろしいでしょうか。金額は、なかなか決まりにくいとは思いますけれども。
 なかなか、どの額が適当かというのはよく分からないのですけれども、例えばというか、これも、今度、故郷を失うということの慰謝料を認めるとなると、先ほどちょっと出てきた生活費の問題とかいう要素を含めて考えていいのかどうかという問題があって、もう純粋に精神的な苦痛だけの問題にするのか、そこら辺がもう一つの理論的なポイントかと思っております。
 できれば精神的苦痛の方に純化した方がいいのかなと思いますが、それも、もし今の段階で御意見があれば伺いたいと思いますが。もしなければ、更に少し検討させていきたいと思います。
 それから、家族構成などによって少し変えていいかどうかという問題もあるのですが、ただ、これを入れると、ちょっと慰謝料が政策的にといいますか、使われることになって、また理論的な説明が難しいかもしれないので、どうかというところですね。いろいろ難しい問題、たくさん控えています。
 もし特に御意見がなければ、この点はまだ、もうちょっと詰めなくちゃいけない点がたくさんあるかと思いますので、引き続き御意見を伺いながら進めていきたい……。

【大塚委員】  一つだけよろしいですか。ちょっと質問させていただくようなことになってしまって恐縮なのですけど。生活費を含めないで純粋な精神的損害に純化していくというのは、私もいいと思うところもあるのですけど、そうすると、生活費の部分は、また別途考えなくてはいけなくなるということでしょうか。

【能見会長】  そうですね。完全に分けると、この生活費増加分はどうなるのかということなのですけれども、おっしゃられるとおりに、別に考えることになるのが理論的なのでしょうね。だけど、そうなると、またそれは何年分なのかとか、それも一括というのがあるのかとか、そういう問題になってくるので、なかなか理論的には分けた方がいいと思うけれども分けにくいという問題があるかもしれません。ちょっと歯切れが悪いのですが、もう少し検討させていただきたい。
 何か注意すべき点があれば。よろしいですか。
 じゃあ、済みません。ここはまだ、いろいろ積み残しがありますけれども、もう少し次回までに詰めていきたいと思います。
 それでは、時間が超過しておりますけれども、最後の「避難指示解除後の賠償の考え方について」に移りたいと思います。
 先ほど、ちょっと私、口を滑らせましたが、この点について前回、内閣府から田村市についての現状の説明がございました。しかし、その後の進展の状況はどうかということや、あるいは、もうちょっと田村市以外の部分も含めて、どんな状況にあるかということを少し考えながら、解除後の相当期間を考えたいとは思いますので、そういう意味で、これも内閣府から御説明いただけますか。じゃあ、お願いいたします。

【井上参事官】  内閣府でございます。田村市の直近状況を御報告するようにということで、紙を1枚整理させていただきました。
 前回の審査会で、中島委員からも医療施設についての御下問ございましたので、改めまして、地元の市役所さんにも確認をして、ここに書いてございますとおり整理しております。
 医療施設は都路の診療所、都路の歯科診療所が、20キロ圏外の旧緊急時避難準備区域にございますが、そこで23年7月から再開しております。
 復興庁で御用意されている帰還・再生加速事業という予算を活用しまして、他地域からの医師派遣を実施しておりまして、震災前の3科体制に整形外科も加えまして4科体制ということでさせていただいております。また、巡回バスを御用意させていただいております。
 それから、今後でございますが、医師会の協力、あるいは厚労省の地域医療再生基金によりまして、船引、つまり市の中心部の方に夜間診療所を開設する予定だとお聞きしております。
 そういった意味では、ここに書いてございますとおり日常的なものについては、あらかた大丈夫ということだと思いますが、他方で、この区域は震災前から、設備はあるのですけど医師不足で入院ができないという状況になっていたと聞いております。
 事故前につきましては、大熊町とか、ああいった区域に行っていたわけですけれども、現状は、住民の方にお聞きすると、郡山市の星総合病院とか、ああいったところに入院で、また、大きな手術とか入院をするようなことが起こった場合には、行き先として大体20分ぐらいのところにあった病院ではなくて、1時間半ぐらいかかるところに行かざるを得ないという差はあろうかと思います。
 それから、前回御説明いたしました買物でございますけれども、コンビニエンスストアということで、セブン・イレブンさん、田村市や復興庁からの要請を快諾いただきまして、移動販売を始めていただいております。また別途、前回御説明いたしましたとおり、固定型の店舗への別のコンビニエンスストアの出店であるとか、地元の方の公設民営型の店舗といったようなことも調整させていただいております。
 それから、この区域につきましては、避難指示の解除の前から特例的に宿泊していただいて、様子を見て解除していくという新たな制度を初適用しておりますけれども、その解除準備宿泊の中で、個人線量計を国の方で御用意して測っていただいております。
 もちろんこれ、強制しているわけではないので、一部の希望しておられる方だけでございますが、もともとの政府の方針として、市ともよく御相談しながら、測っただけだと分からないので、福島県立医大の先生などに行っていただいて、予約制で20分ぐらいですか、線量計を見ながら健康影響とか、線量上の留意点といったものを丁寧に相談させていただく取組をスタートしておりまして、順次進んでいるところということでございます。これからも、そういった取組を続けていくという予定になっております。
 田村市につきまして、直近はこんなところでございます。

【能見会長】  それでは、今の御説明を踏まえまして、この解除後の相当期間について御議論いただければと思いますが、前回までに一応、田村市の説明を受けましたので、それを念頭に置いて、解除後相当な期間について何か一定の期間を考えられるかということで御議論いただきましたが、少なくとも審査会の場では、具体的な御意見は出ませんでした。ということで、改めてここでお伺いしたいと考えるわけですが、いかがでございましょうか。

【大谷委員】  よろしゅうございましょうか。この資料の3-2の次の資料がございましたのですかね。解除相当期間と。

【能見会長】  それは、ここにないですね。前回の資料。

【大谷委員】  ないですね。とりあえず、この資料の3-2の避難費用の関係。ちょっと発言のタイミングが遅れたのかもしれませんけれども、避難費用としての宿泊費についてという項目がございますですね。これも相当期間とも関連するわけですけれども、この中で、避難費用の支払時期を、賠償を受けることが可能となった時期までとすると書いてあるのですが、この可能となった時期というのは、これも解釈の仕方の問題があるわけですけれども、実態を見ますと、そういうような状態になった段階から、被災者は、さて自分はどうするかと。これからの生活設計をどうするかを本格的に考えるのではないかということであろうかと思いますので、やはり、何かその全部賠償を受けることが可能となった時期に加えて、そういう新生活の設計に要する期間も、避難費用として払う対象とする期間に含めるべきではないかというのが私の考え方でございます。

【能見会長】  これは先ほどの前のペーパーとの関係ですが、今までといいますか、少なくとも今度、今、検討している指針が出るまでは、避難費用として宿泊費について実費ベースで、そういうものがあれば賠償していくことになっておりますが、しかし、それが今度、新しい指針の下で、これは長期に伴う賠償のところで、一括して長期賠償がなされるということになりますと、それとの、また。一定の期間オーバーラップすることはあり得ると思いますけれども、ずっとオーバーラップするというわけにはいかなくなるかもしれないので、調整が必要なのではないかという基本的な考え方が出ているという話でございます。
 それと、今度、解除後どうなるかという問題とは、少し関連はしますけど、理論的には恐らく一応別な問題で、今、大谷委員が言われたのは、その解除されて戻れるようになっても、でも、どうするかというのは、その段階で初めて考えることになるだろうから、考えるまでの間に相当な期間がかかるであろうと、そういうことですね。

【大谷委員】  そうですね。議題に避難指示解除後の賠償の考え方についてというのは、これは相当期間の問題も当然含まれているわけでございますね。

【能見会長】  はい。

【大谷委員】  それも含めて考えますと、今お話し申し上げたとおりですけれども、解除がされたからといって、すぐに帰れるわけではない。解除をされれば、基本的には直ちに帰るべきだという考え方を基本にするのは、ちょっとおかしいのではないか。解除されても、すぐには帰れないという実態もありますし、その時点からいろいろ、やはり考えなければいけないという立場にある人が多い。
 少し時間をいただきますけれど、当センターの実態で申し上げますと、旧警戒区域の住民の方々の意向をお聞きすることができた例が91例ございますけれども、その中で30%ぐらいは既に他地域に移住してしまっていて帰還の意思はない方々です。残る方の中で、解除されたらすぐに帰りたい人はどれだけいるかというと、実は一人しかいないのです。あとの方は、さっき申し上げた移住してしまった人を除いて、どうしたらいいかは決断できなくて迷っているような状況でございます。それから、いろんな状況でもって、身体的な不具合の問題であるとか、あるいは年老いた家族を抱えた者の介護の問題であるとか、そういう状況の見極め等々、あるいは移動に対する制約というものを考えますと、この準備の期間について相当程度の期間を考える必要があるのではないかと考えております。

【能見会長】  この解除準備区域で、いよいよ解除されたときに戻れるようになるわけですけれども、審査会自体は、戻れるようになったから戻るべきであるというような、別に特別なスタンスをとっているものではないと思います。そこは、いろいろ各人の選択が当然あり得るという前提の下で中立的な考え方をとっておりますが、しかし、戻れるようになって、それじゃあ、いつまで、今まで戻れないことで続けていた賠償が継続するのかという賠償の観点を主として考えると。その際に、大谷委員が言われたように、すぐになかなか決断できない方々もおられる。戻れるといっても戻れるかどうか、本当に各人が判断して、大丈夫だと判断しないと戻れないでしょうから、そういう意味でいろいろ判断の期間がかかるので、その期間を相当な期間として考えようということで、基本的な考え方はそういうことなのですけれども、今問題となっているのは、恐らく、その相当な期間がどのぐらいなのだろうかということです。
 それと併せて、委員の間では特に誤解はないと思いますけど、もしかすると、この審査会の議論をフォローしている方の誤解があるかもしれませんが、仮に解除行為、相当な期間ということで一定の期間を区切ったときに、一つは期間内で、やっぱり戻れないような特別な事情のある方がおられれば、今挙げられたような介護が必要であるとか、戻ってもなかなか介護を続けるような状況にないという方がおられれば、これはまた別途そういう方には賠償の継続は考えられるというのが一つと、それから、同じような問題かもしれませんが、相当な期間が一定期間区切られて、それ以後は、今までの毎月毎月の慰謝料の賠償というのはなくなるとしても、戻れるようになっても相変わらず産業であるとか、あるいは事業所とか、あるいは顧客などが十分にいないために自営業は続けられないということで、営業損失的なものがあれば、これは営業損失の問題として、相当期間とは関係なく賠償は続くと。営業損失の方について、一体いつまで続けるかという議論は十分ここで、まだ議論しておりませんけれども、少なくとも、そちらの問題として、相当期間に関係なく続くものだと考えております。
 そういうことも考えながら、相当な期間をどうしたらいいかを御検討いただきたいということですね。
 これも、どのぐらいが適当かというのは直ちに御意見が出ないのかもしれませんが、前回の資料ではっきり出したか、あるいは資料を作る際に少し検討した点だったかもしれませんけれども、1年ぐらいあると、少なくとも田村市に関しては恐らく、そんなに問題はなかろうということで、それを軸に御議論いただいていたのではないかと思います。
 これも田村市についてはというふうに今、限定をしたかもしれませんが、田村市以外のところで将来、解除されることになると、ちょっと状況は違うという場合もありますので、それはそれで、そういう場合には、余り個別に、この場合は何年とか、何か月とか、そういうふうに一々全部、個別に決めていくわけではないかもしれませんけれども、市町村、解除される地域ごとの特殊性があれば、これはまた、今仮にこの相当期間を定めても、それとは違う期間をまた定めることも可能であるというような少し柔軟な基準を考えたらどうかと個人的には思っております。

【大谷委員】  その関係で、よろしゅうございましょうか。
 前回の田村市のインフラの整備状況の議事録を拝読いたしましたけれども、私の感想としては、あれでインフラ整備は相当程度進んだとは、ちょっと考えられない。いろんな点で、まだ満たされてないものが随分あると感想を持ちました。
 田村市をとりあえず一つの基準として何らかの措置を行うとしても、それを一般化するというのは、ちょっと適当ではないと思いますし、一般的な基準として相当期間を定めるとすれば、これは具体的に私の考えを申し上げますと、先ほど申しましたように、この相当期間というのは、避難者が今後の生活設計をするのに必要な期間であるということからすると、5年間、あるいは事故から避難指示解除までの期間と同じ程度の期間、それぐらいが適当ではないかと考えております。

【能見会長】  今、そういう御意見が出ましたけれども。いろんな考え方は当然あり得ると思いますけれども、恐らくというか、この避難指示が解除されて、インフラが整備されているかどうかというのは、また別な論点ですけれども、我々が必ずしも、それについて十分な情報を直接持ち合わせる立場にないので、前回の説明でインフラが整備されているのか、されていないのかについて私個人の判断は控えますが、一応、整備されているとすると、どのぐらいの期間かということで考えたいと思いますが。
 戻れるときに、何か今からいろんな選択肢があって、いや、やっぱり戻らないで移住しようか、それとも戻ろうかというのを、本当に一から考えるとなると、相当な期間がかかると思いますけれども、ただ、それも5年かかるかどうか分かりませんが。しかし戻れるように、インフラが整備されて戻りたい人たちは戻れるという状況の下で、じゃあ、いつ戻ろうかというようなことを判断するのに、どのぐらいの期間が必要なのかと、それを考えるのではないかと思います。
 戻れるけれども、やっぱり自分は戻らないで、もう故郷を離れたいという方は、もちろんおられると思いますけれども、そういう方は決断するまでに時間がかかると思うのですが、その人たちを基準にして相当な期間を定めていいのかどうかというのは、何か一つのポイントなんじゃないでしょうか。
 ほかの委員の方、いかがでしょう。中島委員、どうでしょうか。

【中島委員】  この田村市の準備を見ますと、かなり周到に準備されているようなのですけれども、それ以外の市が今後、これだけ周到な準備をして解除に踏み切るかどうか、ちょっと分からないところはありますけど、田村市のような周到な準備がされた前提で解除されることを考えた場合には、審査会で最大公約数的な指針という性格を考えた場合には、さっき会長がおっしゃったような例外を設けることも前提として、ちょっと5年は長いような気が。
 解除するまでに相当、予告期間があるということを考えますと、人の生活の1単位は1年だということを考えますと、最低1年というような、あるいは、そういう田村市ぐらいに周到に準備して解除するという前提であれば、そういうことでもいいのではないかなと。
 ただ、気になりますのは、診療所とありますが、さっき内閣府の方も説明されていましたように、診療所というのは恐らくベッド数が19以下の小さい小規模ですから、入院されている方は恐らく、そう簡単に移れないということもあると思いますので、そういう例外的な方は弾力的に除外する前提であれば、1年でというのも一つの区切りではないかなと考えます。

【能見会長】  ほかの委員、いかがでしょうか。

【鎌田委員】  前に申し上げたかと思うのですけれども、やっぱり解除するまでに十分に地元のインフラの整備状況、あるいは地元の住民の状況というのを考慮しておくという、これはまず大前提だと思うのですね。それを前提にした上で、慎重に解除した後については、私も1年が標準的な区切りであると思っています。

【能見会長】  大塚委員。

【大谷委員】  よろしゅうございましょうか。

【能見会長】  どうぞ。

【大谷委員】  その関係で、ちょっと実態を申し上げますと、旧緊急時避難準備区域につきましては、平成24年8月に一応、相当期間が終了して、東電の窓口では賠償が打ち切られたのですけれども、その後も当センターに賠償の申立てがあって、仲介委員において賠償の必要性を認めて和解案を示し、そして中には和解が成立したものもありますが、そういうものが40件ぐらいはあるのですね。そのあたりのことも考慮すると、ちょっと1年というのは、やはり短いと私は思います。

【能見会長】  大塚委員。

【大塚委員】  鎌田委員とほとんど同じ意見なのですけれども。1年というのは、学校のこととか、会社も多分そういうところがあると思いますけれども、そういうことを考えると、区切りとしては一つの考え方だと思います。
 ただ、会長もさっきおっしゃったように、場所によって特殊性があると思いますので、常に1年ということではなくて、その場所場所で細かい検討はする必要があると思っています。また、この議論は、これも鎌田委員がおっしゃったように、インフラが整ったときに解除するということが前提なので、そちらの方はちゃんと確保していただかないとまずいと思いました。

【能見会長】  ほか、御意見よろしいですか。
 いろんな御意見があると思いますけれども、とりあえず今日の御意見を踏まえながら、もう少し集約できるところを検討したいと考えております。
 それでは、時間が遅れて申し訳ございませんけれども、議題5について。地方公共団体の減収分についての御議論ですけど、高橋委員が今日は御出席ですので、改めて、この点についての御意見を伺えたらと考えております。事務局の方で、もし資料として補足する点があれば……。

【田口原子力損害賠償対策室長代理】  資料5として、前回の資料と同じものを用意させていただいてございます。地方公共団体の税収減についてということで、1ポツが中間指針の内容が書いてございます。
 2ポツのところは、税収減を直ちに賠償の対象として認めることが難しいという理由が更に交付税で財源措置されるであるとか、あるいは徴収率の低下による税収減もあるとか、そういう話が書いてございます。
 3ポツのところで、ただし、少なくともこのような税収の減については、賠償すべき損害として認めても良いのではないかということで、具体的には、目的税を財源とする事業のように税収と事業支出の連動性が高い事業であって、交付税による財源措置がされず、事故後も実施が必要な事業に係る税収の減というようなものは賠償の対象として認めてはいいのではないかという考え方でございます。
 以上でございます。

【能見会長】  名指しみたいで申し訳ございませんが、高橋委員、何か御意見があれば。

【高橋委員】  中間指針では典型的な課税関係を考えておりました。そこで、そのような指摘から外れるものについては個別・具体的に拾い出して、3に書いてあるようなものを賠償の対象にするというのは、理論的には整合性があるとは思っています。
 以上です。

【能見会長】  ほかの委員は、いかがでしょうか。どうぞ。

【大谷委員】  よろしゅうございましょうか。この案自体について異論があるわけではございませんし、税の素人でございますので、差し出がましいことは申し上げられませんけれども、この3番の「少なくとも」というところに、ちょっと御注意いただきたいということでございます。
 つまり、将来の環境等の変化によって、税制がどうなるか分からないという要素もあるわけでありますので、そういうときに柔軟な対応ができるように、少なくともというところを、きっちりと穴があいているということを示せるような文章にしていただけると有り難いと存じます。
 この「少なくとも」という言葉だけですと、賠償実務の中では、この言葉が無視されて、具体的に列挙されたものがまさに限界という機能をすることを気にしているわけです。

【能見会長】  必ずしもそういう趣旨で「少なくとも」を使っているわけではなくて、「少なくとも」というのは、むしろ大谷委員が言われる趣旨で、少なくとも、この以下に書いてあるものは賠償として認められるということ、ほかにもあるかもしれないというニュアンスで書かれているのですが、何かもっと適切な表現ございますでしょうか。
 あるいは高橋委員。

【高橋委員】  いや、そういう趣旨で具体論、説得的な議論が出てくれば、それはこれから考えるという話だと思います。

【能見会長】  恐らく大谷委員が言われていることと中身はそんなに違わないと思いますので、より適切な表現があるかどうかは検討させていただくにして、今のような御理解の下で、ここの資料に関しては、この方向で審査会としては臨むということでよろしいでしょうか。

(「はい」の声あり)

【能見会長】  それでは、この点につきましては、そういう扱いをさせていただきたいと思います。いろいろ時間が……。どうぞ。

【大塚委員】  遅れているのに本当に申し訳ないのですけど、さっきの内閣府の方、もしいらっしゃったら、もう1点質問させていただいてもよろしいでしょうか。済みません。
 先ほどの追加ですけれども、除染とか帰還との関係で、今後どういうふうに考えていくかということで多分、今、政府の方で御検討が始まっているんじゃないかと思うのですけれども。それが資料3-2の問題とかと直結するので、ここでお伺いしておく必要があると思います。私がどう思っているかということではなくて、除染の在り方について、余り効率的でないという批判があるかと思います。つまり、せっかくお金をかけて一生懸命除染しても、なかなかきれいにならないので、どうするかという御議論がなされていると思うのですけれども、それに関して政府の方針が今後何らかの形で変わる可能性があるかどうかというのを、ここで聞いておかないといけないと思いました。それから帰還を非常に重視するという政策も、多分、今後ともとり続けると思うのですけど、その辺についてもいろんな議論があるようなので、ここで教えていただいておくことが必要かと思います。

【井上参事官】  なかなか大役過ぎて御説明、十分、政府全体を代表できるかどうか、あれなんですけれど、私の知り得る限りで申し上げれば、除染につきましては、先ほど私ども御説明したペーパー、環境省さんにも御覧いただいた上で持ってきておりますが、基本的に今までの方針を変えてはございません。先般9月に出させていただいた環境省さんの「除染の進捗状況についての総点検」の結果の中には、帰還困難区域については先ほど申し上げたような形で、まずモデル事業をやった上で考えるというのが一つでございます。
 それから、それ以外の区域につきましては、当初、環境省さんのお考えになっておられたのは、御案内のとおり、事故後3年、つまり来年の春までに全ての居住制限区域と避難指示解除準備区域の除染を終えるという予定だったわけですが、地元の方々には申し訳ございませんが、遅れているという実態があって、そのため、先般の「除染の進捗状況についての総点検」の中では、年末に向けて各地元自治体と具体的な除染計画の見直しを御相談していくという段取りになっております。
 その中で、今回、私の理解するところでは、除染については新たに、今まで以上に復興とよく一体性を図った除染を進めていくべきであるということ。それは、とりもなおさず地元の御意向を十分反映してやっていくべきだということだと思っておりますし、現実には、これから地元と環境省さんを中心に、我々もそうかもしれませんが、政府一体となって御相談していく中で、除染をどこから同一基準で進めていくのかといったプライオリティーについても御相談していかないと、早くやるべきところも早くできないことになるのではないかという議論をさせていただいております。
 そういった意味では、除染は環境省さんが下手とかそういうことではなくて、もともと事の本質から、チェルノブイリでもそうでしたが、難しい作業である中で時間もかかりますが、その中でできるだけ早く帰りたいとお考えの地域は早くお帰りになれるようにするということが一つの方針だと見ております。
 いずれにしても、その上ででございますが、政府の基本方針としては、早く帰りたいと思われる方々については、1日も早く、その環境を整えようということで最大限やらせていただくのは当然ですが、先ほどの御議論でもありましたが、帰還を強制するとかいったつもりは、もともと来、ないということだと思います。こちらの賠償での御議論もそうだと思いますし、我々もそういう形では対応していく。
 ただし、線量が高いところについては物理的にやれることが非常に限られておりまして、今まで、大変申し訳ないのですが、除染にしても、インフラにしても、いわゆるそういった復興政策については、なかなか講じられてこなかったというところが現状だと思いますし、今後については今後の議論ですが、基本的に今のところ方向転換、方針転換というものは、私が知る限りでは行われていないということだと思います。

【大塚委員】  ありがとうございました。

【能見会長】  よろしいですか。
 それでは、大変時間を超過いたしましたが、本日の議事はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 次回以降の議論は、今日の議論をまた踏まえて発展させるということでございますが、事務局から連絡事項等。

【田口原子力損害賠償対策室長代理】  次回でございますが、今月中に開催予定でございます。日時は追って正確にお知らせをしたいと思います。
 以上です。

【能見会長】  それでは、ここで閉会いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

原子力損害賠償紛争審査会(第35回) 議事録

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