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放射性物質とは

不安定な原子核を含む物質のこと。不安定な原子核は一定の割合で崩壊(壊変)して安定な原子核に変化し、その際に放射線を出します。

 

半減期の短い核種は、短時間に多量の放射線を放つため直接的な被曝の危険度が高い

 

半減期の短い核種は、どんどん崩壊していき放射能を失っていきますが、短時間に多量の放射線を放つ(放射線の強さSv/h)ため直接的な被曝の危険度が高く、半減期の長い核種は、少しずつしか放射線を放たないので一時的に被曝する放射線量は小さいが、いつまでも放射線を放ちつづけるため長期的な問題を抱えることになります。

 

参考 : セシウム 137 とセシウム 134  放射線の強さ(吸収線量率)
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/Cs137vs134.html

独立行政法人 放射線医学総合研究所  江口-笠井 清美氏講演資料より転載

放射線の透過力

放射性物質から出る高いエネルギーを持った電子、光子などの流れを放射線といいます。放射線があたると分子は電離、励起されます。電離とは、放射線が細胞に当たると細胞を構成している原子の廻りの電子をはじき飛ばしてしまう現象をいいます。はじけ飛んだ電子はDNAを傷つけたり、細胞分裂の遅れなどを引き起こします。放射線が原子に大きなエネルギーを与える性質を励起と言います。大きなエネルギーを持った原子は非常に不安定な状態で、通常よりも化学反応が起きやすくなっています。 この状態の原子のことをラジカルといいます。放射線が水分子を分解し、その結果生じた活性酸素(代表がフリーラジカル)は体細胞を酸化して疾患を招く場合があります。

 

参考 :  フリーラジカル・セオリー(放射性障害と癌化の原因)

http://uni-gen.jp/pdf/kaichion-selen1.pdf

 

 

アルファ線は、2個の陽子および2個の中性子から成る粒子線で、質量が大きく、正電荷を帯びているため、空気中でも通常短い距離(数cm)しか進めません。

 

ベータ線は、陽子や中性子の質量の約1/2000の質量を持つ高速度の電子から成る粒子線で、そのエネルギーに応じて空気中での透過距離は大きく異なり、トリチウムの場合は1 mm未満、イットリウム90では約10 mです。

 

ガンマ線は波長の短い電磁波(光子)であり、到達するガンマ線の数は距離の逆二乗で減衰し、物質中で相互作用を起こし吸収されます。正確な飛程はエネルギーや通過する物質により異なりますが、空気は密度が小さいので、航空機からでも測定出来る十分な飛程を持っています。http://radi-info.com/q-869/

独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

放射線の単位

ベクレル 

放射性物質の量を測るための単位。異なった種類の放射性物質でも、ベクレルで表わした量が等しければ、出てくる放射線の量は同程度です。。1ベクレル は、1 秒間に 1 個の原子核が崩壊して放射線を出す放射能の量で、数値が大きいほど、放射線を放出して崩壊する原子核の数が多いことになります。

 

1kgの水の中で1秒間に300個のヨウ素131が崩壊すれば、ヨウ素の放射能は 300Bq/kg です。

 

シーベルト 

被曝によって人がどれくらいダメージを受けた可能性があるかを表わす単位。記号は Sv 。年間や生涯での通算で用います。ミリシーベルト (mSv) という単位を使う(1 mSv = 0.001 Sv, 1000 mSv = 1 Sv)。外部被曝にも内部被曝にも用い、被曝の原因が違っても、ミリシーベルトで表わした数値が同じなら、体へのダメージは同じだと考えられています。、シーベルトやミリシーベルトで表わしている量は実効線量と呼ばれています。

 

mSv/h は、   ある場所のある時刻での、放射線の強さを表し、そこに24時間いて受ける放射線量は mSv/h × 24 となります。

 

シーベルトへの疑問

 

「内部被曝の健康被害はエネルギーだけでは説明できないことである。

内部被曝の場合は、粒子線は質量をもつため、透過力に乏しく放射性物質の周囲の近傍の細胞にだけ影響を与える。しかし被曝線量の評価は全身化して換算するため、数値上はきわめて少ない線量となる。この線量の全身化換算の問題に加え、それ以上に熱量として放射線の影響を考えていることがはたして妥当なのかという疑問もある」西尾正道北海道がんセンター院長『放射線健康障害の真実」』(旬報社)

落合栄一郎氏(カナダ在住:化学者)の考察 「100Svという被曝の場合、人間は 100%中枢神経死で即死する。しかしエネルギー値から評価すると、100J/kg(γ 線の場合)であり、0.024 度体温を上昇させるだけである。だがこの体温上昇で人間は死なないが、同じエネルギー量でも放射線では100%死亡する。何かおかしい?」田中一郎氏(市民と科学者の内部被爆問題研究会会員・原子力資料情報室会員)の『(増補版)シーベルトへの疑問』

※1Jは同じ熱量の単位では約0.24カロリー(cal)に相当します。水1gを1℃温めるために必要な熱量が1calです。

 

「放 射線による損害を表す共通の物差しは未だ開発されていないため、 J・kg-1 という単位を持つ荷重線量であるというのが結論であった。その後いくつかのチャレンジがあったようであるが、リスクを表す指標の確立は依然として成功して いない。放射線の種類やエネルギーなどによる違い、内部被ばくと外部被ばく、線量率、部分被ばくと均等被ばくなどによる違い、生態影響の種類・性別・年 齢・個体差などに違いなど、多くの因子を考慮した上で、放射線影響をひとつの単純な量や単位で表現することは非常に困難だ からである。 不確かさに関する過去の ICRP 及び ICRU の記述を拾うと、「±30%の正確さが達成される」(ICRU20, 1971)、「不確定さ(uncertainties)は信頼度 95%でファクター1.5 を超えないようにすべきである」(ICRP35, 1982)などとなっている。おおよそ±30~50%以内であれば良いと言うことであろうか。 以上のことから分かるように、少なくとも「放射線防護」上は、放射線影響を厳密に表現することを諦め、微妙な差異をある程度認めるような一種の割り切りを 行っているのである。」線量概念の問題点 神戸大学大学院海事科学研究科 小田 啓二

 

 

線量概念

 

放射線が通ったときに人体が重量あたりに吸収するエネルギーを吸収線量(単位はグレイ、Gy =ジュールJ/kg)といいます。放射線は、その種類やエネルギーの強さは様々であり、それによって吸収線量が同じでも人体への影響の大きさが変わります。

 

1ジュールは1Kgの物体を1m毎秒毎秒の加速度で動かすような力(1ニュートン)で1m動かしたときに要するエネルギーです。エネルギーを表す単位として広く一般に使われているカロリー(cal)に換算すると、1ジュールは約0.24カロリーであり、標準大気圧(1気圧)で20℃の水1グラムを約0.24℃上昇させるエネルギーに相当します。

 

人体はエネルギーを吸収します。暖かく感じるのはエネルギーを吸収するからです。しかし、放射線は当たったときの起こる反応が異なります。放射線は電離という現象を起こすことから電離放射線とも呼ばれます。放射線による電離は原子や分子の構造中にある電子をはじき飛ばしてイオン化させてしまうため、人に当たった場合は人体を構成する有機物の分子構造を変化させたり壊してしまいます。放射線が電離という現象を起こすことが、結果的に放射線の生物影響につながります。

 

 

放射線の種類ごとに影響の大きさを重み付けする係数を放射線加重係数といいます。

 

ガンマ線              1

エックス線           1

ベータ線              1

陽子線        5

中性子線              5~20

アルファ線           20

 

注目している臓器が吸収した吸収線量に放射線加重係数を掛けたものを等価線量(単位はシーベルト、Sv)といいます。各組織・臓器の局所的な被曝線量を表すための線量概念です。

 

また、各臓器や器官によって放射線による影響の受けやすさが違います。個々の臓器・器官への影響の大きさを重み付けする係数を組織加重係数といいます。

 

生殖腺              0.08

赤色骨髄・結腸・肺・胃    0.12

膀胱                 0.04

乳房                 0.12

肝臓・食道・甲状腺         0.04

皮膚・骨表面・唾液腺・脳 0.01

残りの臓器         0.12

 

 

 

臓器や器官ごとに等価線量と組織加重係数をかけて、全身分を足し合わせたものが実効線量(単位はシーベルト、Sv)です。実効線量は人体が受けた放射線による全身への健康影響と関連づけられた被曝線量として表されます。個人の生物学的リスクの尺度となる線量概念です。
 

内部被ばくの場合に、体内に取り込んだときから一生の間に受ける線量は預託線量(単位はシーベルトSv)です。体内に摂取された放射性物質は、その半減期に従い放射能が減衰するとともに、代謝機能により体内から徐々に排泄されます。この間に放出される放射線により組織や臓器が被曝します。 一般成人に対して摂取後の50年間(子供や乳幼児に対しては摂取時から70歳まで)に受ける量を摂取時に受けたと想定した放射線量のことを預託線量いいます。


低線量の場合,細胞の回復効果(DNA修復能など)により、被曝のダメージが一度に大量被曝した場合と比較して、どの程度低減されるかを示す係数があり、DDREF(線量・線量率効果係数)といいます。国際放射線防護委員会(ICRP)ではDDREFを2としており、これは一度に大量被ばくした場合のダメージの半分です。

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

被曝の種類

人が放射線を浴びること。体の外から浴びる外部被曝と体の内部から浴びる内部被曝があります。外部被曝は、放射性物質から離れてしまえば、被曝量が減ります(例えば、距離が2倍になれば被曝量は 1/4 になります。)。内部被曝は放射性物質が体内にあるため、体外にその物質が排出されるまで被曝が続きます。外部被曝を抑えるには、距離をとる、遮へいをする、作業時間を短くすることが重要です。いっぽう、内部被曝を防ぐには放射性物質の体内への摂取を抑えることが大切です。

 

外部被曝では透過力の大きいガンマ線、X線が、内部被曝では透過力の小さいアルファ線、ベータ線の影響が大きくなります。

外部被曝において、ガンマ線、X線、中性子線などの透過力の強い放射線では人体内部の組織まで被曝しますが、ベータ線は体表面で吸収されるため皮膚の被曝が主となります。 放射性物質から出るアルファ線は透過力が弱いため,通常は外部被曝の対象にはなりません。

 

これに対して、体内に取り込まれた食物や空気中に含まれる放射性物質によって体内から被曝する内部被曝は、透過力の弱いアルファ線・ベータ線による被曝が体内組織に限られるため、被曝の影響が大きくなります。 とくにアルファ線は短い飛距離内の組織が集中して被曝するために、細胞内のDNAの損傷が多くなります。 このために DNA修復作用がうまく働かなくなり、細胞の障害が大きくなる可能性があります。

 

 

体内に入った放射性物質は壊変による減少(物理的半減期)と代謝や排泄によって体内から排出(生物的半減期)によって、時間とともに減少していきますが、体内に残留している間は被曝が継続します。体内に入った放射性物質は、全身に均等に分布するものと特定の1つまたは幾つかの組織・器官に選択的に吸収されるものがあります。ヨウ素131 は甲状腺に選択的に取り込まれて甲状腺がんや甲状腺機能低下を引き起こします。セシウム 137は全身(主に筋肉)に分布して白血病や不妊の原因となります。の

放射性物質が体のどこかに留まると、その箇所を集中攻撃するという研究者もいます。 外部被曝では放射線を体全体に一様に浴びるのに対し、内部被曝では組織のどこかに付着した放射性物質を含む微粒子(セシウムボール等)から、局所的に集中した放射線を浴びる可能性があるともいわれています。 もし、体内の局所的に集中した被曝がより大きな損傷を起こすのであれば、外部被曝と内部被曝は一様に等しいとする仮定はリスクを過小評価することになります。

 

アルファ線は電荷があるため、物質中に入射すると物質に影響をあたえながら急速に速度を落として短い距離で止まります。ベータ線は物質中に入射すると物質に影響をあたえながら、アルファ線よりも長い距離を通過して止まります。ガンマ線は荷電粒子ではないので、アルファ線、ベータ線よりも長い距離を通過します。たとえば人体に当たったベータ線はアルファ線よりも広い領域に影響を与えます。アルファ線は、ベータ線より狭い範囲に影響します。また、ベータ線が物質中で減速する際、X線を発生します。

 

放射線の電離・励起作用がおきると、原子と原子の化学結合が不安定になったり切断されたりします。それによって、分子の持つ化学的な性質が変化したり機能が失われたりします。生体では細胞の核にある DNAが遺伝情報を担い、生体の活動に必要なタンパク質を合成する際の鋳型になっていますが、放射線によって DNA が損傷すると、場合によっては細胞の健全な活動が阻害され、細胞死や発がんなどの生体影響が引き起こされる可能性があります。

 

また、直接放射線の作用を受けた細胞がそのストレスに対して応答をした結果、その近傍にある直接放射線の作用を受けていない細胞に何らかの二次的な応答が生じ、細胞集団として放射線作用を受けるという、バイスタンダー効果が、低線量放射線の生物影響として注目を集めています。

 

参考 : 放医研 低線量放射線照射による生物影響染色体損傷における粒子線誘発バイスタンダー効果の分子メカニズムの実験的検証

http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200411/01.htm

  独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

体内の放射性物質の減少

放射性物質が体内に入ると時間の経過とともに放射線は減りますかが、排泄物と一緒に体外に排泄されるか崩壊(壊変)によりほとんど無くなるまで、人体は放射線を受け続けることになります。

 

 放射性物質は、代謝や排せつなどによって体外に排出されます。こうした過程で体内の放射性物質が半分に減少する期間を生物学的半減期といいます。また、放射性物質の能力(放射能)が半分になる時期を物理学的半減期といいます。

 

放射性物質を体内へ取り込んだ場合は、物理学的半減期(原子核が壊変して、放射性物質の原子数が半減するのに要する時間)と、生物学的半減期(代謝や排泄などの生物学的な過程により体外に排出され、半減するのに要する時間)に従って体内から減少していきます。年齢や性別、体内へ取り込んだ放射性物質の量とその取り込み方などにより多少結果が変わりますが、放射線医学総合研究所のWebサイトにある体内残留率・排泄率のモデル予想値によると、体内に取り込んだセシウムの量が半分になるまでの期間は、経口摂取した場合、成人で70日、子供(10歳)で20日程度となります。http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/RPD/JPDF/gy/jgyCs137WB.pdf

 

セシウム
放射性物質としてのセシウムは主に 11 種類あることが知られています。セシウム 134、セシウム 137は人工放射性物質で、核分裂によって生成し、物理学的半減期はそれぞれ約2年と約 30 年です。生物学的半減期はおおよそ、セシウム 137 では1歳までは9日、9歳までは 38 日、30 歳までは 70 日、50 歳までは 90 日です
。最終的に体内に残存する際、特定の臓器だけに蓄積する性質はありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストロンチウム


ストロンチウムのうち、放射性同位体としては、ストロンチウム 89 及びストロンチウム 90 が知られています。これらは核分裂により生成し、物理学的半減期はそれぞれ約 51 日と約 29 年です。口から摂取されたストロンチウムのおよそ 20%が消化管から吸収されます。また、体内のストロンチウムの 99%は骨に蓄積します。

 

プルトニウム


プルトニウムは超ウラン元素の一つであり、原子炉の中で、ウランより生成されます。プルトニウムには数種類の放射性物質があり、物理学的半減期は約 5 時間~ 8.26×107 年と種類によって大きく異なります。口から摂取されたプルトニウムは消化管ではほとんど吸収されません(0.05%)。また、皮膚からもほとんど吸収されません。しかし、一部吸収され血中に入ったプルトニウムは、主に肝臓に蓄積します。生物学的半減期は肝臓で 20 年、骨で 50 年程度です。

 

慢性的にセシウムを摂取した場合の全身残留率割合

 

9歳児では、1日10ベクレルの放射性セシウムを摂取し続けると、550ベクレルで平衡に 達し、そのままの状態が続くことになります。これは体内にそれまでセシウムがない場合についてです。一般に、人体には放射性でない安定 なセシウムがありますので、それを考慮すると実際にはこの計算値までは到達しません。口から入り消化管に入ったセシウムはすべて体内に吸収されるのではな く、水に溶けている場合は90%弱、トナカイ肉では50~90%、無機物に付着した状態では29~36%などとその化学形に依存します。 http://radi-info.com/q-1219/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 

 

 

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

ベクレルのシーベルト換算の問題点

 

ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算例

(例1)100Bq/㎏の放射性セシウム137が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響の大きさは、
 100×1.3×10-5
=0.0013mSv(ミリシーベルト)=1.3μSv(マイクロシーベルト)となります。
となります。


(例2)100Bq/㎏の放射性セシウム134が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響の大きさは、
 100×1.9×10-5
=0.0019mSv=1.9μSvとなります。

    ※実効線量係数(mSv/Bq):ベクレルからミリシーベルト(mSv)に換算する係数。核種(放射性物質の種類)、化学形、摂取経路別に国際放射線防護委員会(ICRP)などで示されています。上の例では、原子力安全委員会の指針(発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針)で示された数値(経口摂取・成人)を用いています。なお、この数値は放射性セシウム134では1.9×10-5、放射性セシウム137では1.3×10-5となります。

1マイクロシーベルト=0.001ミリシーベルト(千分の一)=0.000001シーベルト(百万分の一)

 

消費費者庁 食品の放射能Q&A より引用

 

 

シーベルトは被曝が体全体で平均化されています。その内容は体全身に一様均一に一過性で放射線を浴びる外部被曝の場合に当てはまりますが、飲食や呼吸に伴い体内に入り特定部位に留まった場合の放射線源からの恒常的な内部被曝が軽視されています。常的な内部被曝では、被曝は体全体に一様均一に受けるのではなく、局部的に、集中的に受ける場合もあり、一過性ではなく継続的です。こうした内部被曝の特徴を、ベクレルのシーベル換算は見過ごしています。

 

体内に入った放射性物質から距離を置くことは困難で、放射性物質は体細胞組織の極至近距離から放射線を放ちます。その点がベクレルのシーベルト換算には反映されていません。

 

ベクレルからシーベルトに換算する実効線量換算計数は国際放射線防護委員会(ICRP)によって、広島・長崎の原爆被害者データの解析から導かれています。しかし、そのデータは初期放射線による外部被曝の影響だけに限定され、残留放射線による被曝が考慮されていません。残留放射線の外部被曝とともに内部被曝の影響はより深刻になります。

 

 

  独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

内部被曝で受ける放射線量

 

内部被曝の危険性の評価は不確か(個人差、実効線量換算係数の不確かさ)

 

体内での挙動がよくわかっている核種とよくわからない核種があるなかで、 挙動が知られていない核種が特定の臓器に蓄積されたり、特定のたんぱく質に結合したりすることで、リスクが上がるという可能性があります。また、放射性物質の体内での挙動は、人によって違っている可能性があり、病気や障害のある人は、ICRP のモデルに使われている標準的な人の場合とは異なるかもしれません。さらに、細胞内での DNA 損傷修復能力にも個人差があると言われています。また、線量評価に使われるパラメータは多岐にわたり、数も多く、少数の大きくばらついた実験値から決めざるを得ない推定値もあり、不確かさの程度もまちまちでです。摂取した放射性物質の量と被ばく線量の関係を表す実効線量換算係数の不確かさの程度は元素により、また化合物により異なります。

独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

食品の放射性物質基準値の考え方

食品の放射性物質の基準値は現時点で合理的に達成できる被曝量

 

新基準値は、現存被曝状況に対応した基準値であると第121回放射線審議会の議事録の中で説明されていますが、いつまでこの基準値が有効であるのかを示すべきです。また、社会的要因を考慮していると明記していますが、新基準値遵守のために必要とされる社会的コストがどれくらいなのかできるだけ定量的な説明があったほうがよいでしょう。森口(厚生労働省)氏の発言(放射線審議会第121回 議事録)に、5mSv/年からどこまで低くするべきかという点で農林水産省との議論している中で、1mSv/年まで低くしても我が国の食料供給上、また農業政策上で大きな支障は出ないだろうという結論に至ったとあります。社会的コストについての検討の際に想定された影響評価結果も基準値とともに公表し、線量限度と新基準値が最も適切であると考える根拠を具体的に提示すべきです。

 

放射線審議会(第121回) 議事録http://www.nsr.go.jp/archive/mext/b_menu/shingi/housha/gijiroku/1315028.htm

 

以下、日生連の放射線・放射能・食品中の放射性物質問題についてのQ&Aからの引用です。

Q.食品中の、原発から放出された放射性物質はゼロであるべきではないでしょうか。
A.健康のためには、受ける放射線の量は、少ない方が良いと考えられます。しかしながら、被曝量を下げることだけに着目して対応を行うと、そのために、莫大な費用がかかったり、別の健康リスクが発生するなど、他のデメリットが生じることもあるため、国際的には、様々な事情を考慮して「合理的に達成できる限り被ばく量を低く保つ」ことが重要だと言われています。事故が起こってしまったことを考えると、外部被ばくと内部被ばくの両方を考えた上で、どれぐらいを目標として管理していくのが適当なのかを考える必要が生じます。http://jccu.coop/food-safety/qa/qa03_03.html

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

陰膳方式による内部被曝調査

 陰膳方式は集団の代表値、平均値としてとらえることはできません

 

純粋な調査として日常食測定の数を増やして、その測定値を速報する役割として、陰膳方式は重要ですが、調査対象者がふだんと違う食事にしていても、チェックが難しいという欠点があります。また検査後に対処や措置が必要な給食調査には不向きです。高い数値が出ても、たくさんの食材の中から原因を探さなければならず、分からない場合も出てきます。原因となる食材を突き止められても、その先のルートを探るのが難しいこともあります。サンプリング分析のため、サンプリング方法によって発生する問題点も避けることができません。

 

放射性セシウムから受ける身体的ダメージが放射性カリウムのそれと比べて小さいから安全という訳ではありません。 放射性セシウムによるダメージは放射性カリウムのダメージに上乗せされます。

 

 

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

マーケットバスケット調査に基づいた、食品による年間放射線量

マーケットバスケット方式は、食品の選択が研究者や行政官など専門家によるため、恣意的になる場合があります。放射性セシウムによる年間の放射線量の調査結果は、数値が低いとはいえ上乗せになっていることは否めません。

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

 くらしの中の放射線と福島原発事故由来の放射線

放射線の被曝はなるべく少ない方が良いでしょう。 自然放射線は仕方がないとして、それ以外の医療用も含めた人工の放射線による被曝はなるべく小さくしましょう。

 

レントゲンをとるのは病気を発見するためで、これは本人のためになる場合もありますが、原発事故由来の放射性物質の放射線にはまったくメリットはありません。便益によってリスクを過小評価してはならないことも確かですから、医療用も含めた人工の放射線からの被曝はなるべく減らしたほうが良いでしょう。

 

生命機構のバランスを崩す放射性セシウム

 

天然のカリウムは太古より生物の生命組織の中に入り、生命体はこれを除外して生存することはできません。人間の体内にいつも存在するので、細胞の機能もこれに対応しており、天然カリウムの中にに0.0117 %の割合で含まれる放射性カリウム40に生命機能は順応しています。生体内では放射性カリウム40は4000ベクレル程度で平衡を保っています。そこに人工の放射性物質が入ると生命機構のバランスが崩れて、放射線によるリスクが発生します。細胞膜に存在するイオンチャネルの一種にカリウムチャンネルというものがありますが、これは、ほとんどの細胞に存在し、カリウムイオンを選択的に通過させて細胞の機能を維持しています。カリウムチャネルが、放射性セシウムから受ける影響のひとつにカリウムチャネルの異常があります。カリウムチャネルの遺伝子変異や異 常で、QT延長症候群という心電図異常がおこることが分かっています。QT延長症候群だからと言って、すぐに健康障害の状態が起こっているわけではなく、 心電図上、QT時間が延長していること以外は、無症状です。しかし、心臓のシステムとしての安定性がなくなっているので、ちょっとした刺激があると、不安定な状態(不整脈)に至るリスクが高くなります。QT時間は心臓の電気的収縮時間を表しています。QT延長は、心臓の興奮が延長していることを示しています。QTが延長すると心室細動という重篤な不整脈が起こりやすく、突然死の原因になります。 

 

心電図の読み方http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/shindenzu/shindenzu_05.html

 

 

 

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

内部被曝を減らすには

無駄な被曝を避けるには、食材の産地を選ぶか、きちんと検査された食材を選びましょう

 

内部被曝から身を守る方法

まず、3つの汚染ルート(食べる、呼吸する、触る)を確認しましょう。

 ●汚染食品や汚染した水に注意する(経口摂取を防ぐ)

● マスクの着用などで汚染土壌などの舞い上がりを吸わないようにする(経気道摂取を防ぐ)

● 汚染土壌などが皮膚につかないようにする(経皮吸収を防ぐ)

その上で、食品汚染の実態を知り、必要があれば、調理による汚染低減を図りましょう。

 

 

下記の図中にあることで留意すべきこと

 

●市場に出荷されている食品は、検査体制(サンプリンク検査等)が十分か考える?

●風の強い日の土埃にはマスクを有効活用する。

●外部環境からの放射性物質の流入の可能性のある表流水や湧水などに注意する。

●慢性的、継続的に放射性セシウムを摂取した場合は、一回だけ同じ量の放射性セシウムを摂取した場合より体内蓄積量が多くなるので、毎日かかさず食べる食品は極力汚染していないものを選ぶ。

独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

放射線リスクと放射線リスクコミュニケーション

 

 

 

放射線リスクとは何か?


放射性物質が環境を経由して人の健康や生態系に悪い影響を及ぼすおそれ(可能性)を放射線リスクと呼びます。その大きさは、放射性物質の有害性の程度と、呼吸、飲食、皮膚接触などの経路でどれだけ放射性物質に接したかによって決まり、概念的に式で表すと次のように示されます。


放射性物質の環境リスク = 放射性物質の有害性 × 暴露量


放射線リスクに関して陥りやすい誤解


化学物質は危険なものと安全なものに二分されるという誤解
一般的には毒物と思われていない食塩でも大量に取り込めば害があります。一方、有害性が強い放射性物質は十分に管理すればリスクは小さくできます。
つまり、適正な管理がなされない化学物質はすべて、環境や人体に有害であるということです。

 

放射性物質の適性な管理の前提として、すべての放射性物質について情報を収集し、環境や人への暴露量とハザードに関する既知見等を踏まえて評価を行い、リスクが低いと判断されるものと、リスクの判断ができず、更なる評価を行う必要があるものとに分類し、後者については追加的に情報収集を続けた上で評価を進めていく必要があります。 

 

放射性物質のリスクはゼロにできるという誤解
放射性物質にはさまざまなリスクがあります。これらのリスクをできるだけ小さくする努力は必要不可欠ですが、完全にリスクをなくすことはできません。ゼロリスクを要求するのではなく、リスクのより高い物質、リスクのより高い地域などを考えて、効果的にリスク低減対策を進めることが重要です。

 

「原子力発電に関わる人々や政府関係者たちは、人々がゼロリスク幻想を持っているので、リスク情報を流すと『パニック』になると思い込んで、事故情報や災害情報を公表することをためらってしまうのだという指摘ががあります。」

 

放射性物質のリスクについては、科学的にかなり解明されているという誤解
放射性物質に関するリスク情報は十分ではありません。科学的な知見の不足や不確実性を認めた上で、その都度、できるだけ科学的情報をもとにリスクの低減方法を議論することが大切です。

 

 

 放射線リスクコミュニケーションの意義


 リスクコミュニケーションとは、放射線が持つ危険性の発生頻度や障害の重篤度を考慮に入れて、その要因をどの程度なら受け入れられるのか、危険性を軽減・回避するにはどうすれば良いのかなどについて関係者が共に考え、社会的な合意形成の道筋を探るために行う双方向的コミュニケーションであり、一方的な宣伝や説得の過程ではありません。 リスクコミュニケーションは、すでに危険性が分かっていることについて危険性回避への態度変容を目的として行う説得的コミュニケーションや、実際に災害が発生した後に関係者に関連情報を伝達する、現実に発生した災害に基礎を置いたクライシスコミュニケーションとは区別しておくことが必要です。

 

また、専門家は一般市民より、その分野のことについては科学的知識が豊富で、適切かつ妥当な判断を下すことができると一般的には考えられていますが、専門家の判断が常に適切かつ妥当という訳ではなく、専門家の判断にもバイアスが掛かることがあるという指摘や事例があります。ですから、専門家も一般市民も、お互いの価値観が異なることを認識し、お互いの価値観を尊重することが重要であるという視点で、リスクコミュニケーションについて考えることが必要です。

 

「風評被害という言葉が使われることがありますが、消費者の側から見ると情報不足が大きな問題です。消費者側が多角的にものを見る習慣を身につける訓練も必要ですが、情報発信側もいろいろな角度から十分な情報を提供すべきです。」

 

 

説得的コミュニケーションと態度変容

 

受け手の行動や意見を特定の方向に変化させることを狙ったコミュニケーションを説得的コミュニケーションといいいます。説得の効果に影響する要因として、送り手の特質(現状では送り手になることが多い行政、政治家、企業、マスコミなどにたいする国民の信頼性はあまり高くない)、受け手の特性(受け手の知識量、価値観、性格、認知バイアス、感情バイアス、性別、年齢、職業、文化差など)、メッセージ内容と構成(呈示方法)などがあります。近年は、メッセージ内容と受けて側の要因の関係に注目して詳細かつ統合的に説明しようという説得的コミュニケーションの試みがなされることが多くなっています。

説得的コミュニケーションにおける態度変容は、言われたときの状況、働きかけを行う人(専門性、権威等)、変化する前の態度そのものの弱さなどの要因によっておこります。

 

 

半減期が短い核種は、原子核が放射性崩壊するまでの時間が短いため、その核種のそばいる間に、その核種が崩壊して放射線がとんでくる確率が高いということになります。それに対して、半減期が長い核種は、原子核が放射性崩壊するまでの時間が長いため、非常に半減期が長い核種の場合、私たちが生きている間に崩壊して、放射線が飛んでくる確率が低くなります。

 α線は粒子が大きいため紙も貫通しませんが、エネルギーは高いという性質がありますので、体の外部にある時(皮膚などに付着した場合を除く)は気にする必要はありませんが、内部被曝すると体内では何も遮るものが無いままに被曝してしまい、高エネルギーの放射線を浴びることになります。アルファ線はガンマ線の20倍の電離作用能力を持つといわれています。

 

内部被爆においては、α線・β線がより大きな脅威となります。 γ線は、透過率が高い為、外部被爆においては、体内への影響として最も警戒が必要ですが、人体内部に取り込まれた放射性物質としては、α線・β線を放出する核種は、透過率が低い為、細胞にダメージを与えます。このため内部被爆の検査としては、全β線・α線の計測が有効です。

 

α線・β線は飛ぶ距離が短いため、WBCで測定できないという重大な落とし穴があります。

DNAの損傷と修復(放射線の直接作用)

 独立行政法人 放射線医学総合研究所 江口-笠井 清美氏講演資料より転載

主なDNA損傷とこれに対する修復経路(原子力機構・先端基礎研究センター)

 

放射線の人体への影響は、主に細胞のDNA分子の一部が変化してできた傷が多く蓄積することによって現れます。放射線がDNA分子を変化させる仕組みについては2種類あり、直接作用と間接作用があります。直接作用は放射線がDNAに直接衝突して変化させることです。一方、間接作用とは放射線が水分子に衝突して活性酸素に変化させ、その活性酸素がDNAを変化させることです。

 

直接作用は放射線のエネルギーによって、分子から飛び出した2次電子が、直接、生体高分子に影響を与えています。ここで大切なことは、放射線が、直接、生体高分子に作用するのではないということです。直接作用では、放射線によって発生した2次電子が、生体高分子に影響を与えています。

 

放射線が人体にあたってそのエネルギーが体内に吸収された場合、細胞のなかで起こる重要な化学作用が間接作用です。細胞内の水に活性酸素が生じて、この活性酸素の作用を受けて細胞のいろいろな部分と核のなかの染色体のDNAが損傷を受けます。このとき細胞膜などが重大な損傷を受ければ、ただちに細胞は死にます。DNAが損傷を受けると、細胞は死ななくても細胞分裂をする能力を失う場合があります。そこから異常な細胞分裂が起って、ガンや白血病を誘発させることもあります。生殖細胞への放射線の影響のひとつの遺伝的影響が現れる可能性もあります。 化学物質による発ガンやタバコによる発ガンの場合は一本差切断が多いのですが、放射線の場合は活性酸素の生成量が多いので二本鎖切断が多くなるということです。 呼吸による酸素代謝で生じる活性酸素による DNA 損傷はきわめて多く、1つの細胞で毎日 100 万個の DNA 損傷が生じていますが、鎖を2本とも切断することはめったにないようです。 また、一本鎖切断は、二本鎖のうちの一方がつながっているので修復酵素ですぐ修復できるのですが、二本鎖切断はなかなか修復できません。DNAの二重らせんが切断してしまうような重篤なDNA損傷が生じても、低LET放射線(X線やガンマ線やベータ線等)の場合であれば90パーセント以上の切断は酵素が再結合するため二重らせんが保持されることが判ってます。しかし残りの数パーセンは修復できないDNA損傷として残り、この実体はまだわかっていません。一方、高LET放射線(中性子線、α線、重粒子線等)は直接作用が主です。

 

DNA修復酵素(XRCC1やXRCC3、XPDなど)の遺伝子には遺伝子多型(遺伝子の塩基配列の部分的な微妙な違い)が見られ、修復能力に個人的な違いがあるらしいことが近年明らかになってきました。数倍程度の差は見られるようです。修復酵素についてデータが揃っているわけではありませんが、すべての修復酵素に個人差があると考えられます。 したがって、被曝によって遺伝子の傷が同じ量できたとしても、修復能力が人それぞれに違っているために、突然変異の起こる可能性が人によって異なってくると思われます。

 

参考 : 放射線と活性酸素 http://jhpps.org/library/sem/houshasen.pdf

     放射線によるDNA損傷とその生体修復 http://asrc.jaea.go.jp/soshiki/gr/yokoya-gr/mysite5/index.html    

 

放射線の人体への影響のしくみ(放射線の間接作用)

放射線の人体への影響は、主に細胞のDNA分子の一部が変化してできた傷が多く蓄積することによって現れます。放射線がDNA分子を変化させる仕組みについては、2種類あります。

 

●直接作用

放射線がDNAに直接衝突して変化させることです。

 

●間接作用

放射線が水分子に衝突して活性酸素に変化させ、その活性酸素がDNAを変化させることです。

 

放射線の直接作用

 

生体での化学結合を担っている電子に放射線のエネルギーが与えられ、電離がおきると、化学結合が不安定になったり切断されたりします。それによって、分子の持つ化学的な性質が変化したり機能が失われたりします。生体では細胞の核にある DNAが遺伝情報を担い、生体の活動に必要なタンパク質を合成する際の鋳型になっていますが、放射線によって DNA が損傷すると、場合によっては細胞の健全な活動が阻害され、細胞死や発がんなどの生体影響が引き起こされる可能性があります。このように、放射線が直接DNA分子に作用してDNAを傷つけることを直接作用といいます。

 

放射線の間接作用

 

放射線がDNA付近の生体を構成する水等の分子と反応して、種々の活性イオン、ヒドロキシルラジカル等をつくります。この活性物質がDNAを傷つけます。 この過程を放射線の間接作用といいます。放射線の生体作用の多くは、放射線によって発生するヒドロキシルラジカルの作用です(直接作用と間接作用の比はおおよそ1:3)。生体(細胞)は水が80%を占めるため、放射線の作用は生成したラジカルや分子生成物が生体内成分に障害を引き起こす間接作用が中心となります。 放射線による間接作用は、放射線以外の原因で細胞内で発生している活性酸素と同じ作用ですが、放射線の場合は、ヒドロキシルラジカルが細胞内の至る所で発生します。そして、遺伝子の突然変異を起こす場合があります。

 

細胞には、放射線等によって引き起こされた損傷を修復したり、アポトーシス(細胞死)によってがん化を防いだりするなど、放射線等に対する防御機構が備わっています。しかし、ある確率で修復できなかったり修復ミスをしたりして遺伝子に欠陥の残った細胞が多段階の突然変異を経てがん化することがあり、これが長い年月をかけて増殖する可能性があります。

 

また、DNA修復酵素(XRCC1やXRCC3、XPDなど)の遺伝子には遺伝子多型(遺伝子の塩基配列の部分的な微妙な違い)が見られ、修理能力に個人的な違いがあることが次第に明らかになっています。数倍程度の差は見られるようです(すべての修復酵素についてのデータが揃っているわけではありません)。 したがって、被曝によって遺伝子の傷が同じ量できたとしても、修復能力が人によって違っているために、突然変異の可能性には差異が生じると予想されます。

 

原子力機構・先端基礎研究センター

http://asrc.jaea.go.jp/soshiki/gr/yokoya-gr/mysite5/index.html

 

低線量被曝のサイエンス

http://www.bio-function.co.jp/LD/LDFRONT.html

 

参考 : 被曝していない細胞にも影響が伝わるバイスタンダー効果
http://www.cnic.jp/modules/smartsection/item.php?itemid=3

放射線障害の確定的影響(線量に応じて症状が重くなる)

放射線障害の中には、明らかに障害と受けた放射線量との間に科学的証拠を発見できるものがあり、それを放射線障害の確定的影響といいます。本来、放射線障害の影響は個人差が大きいといわれていますが、被曝した放射線量が大きい場合は個人差はほとんと見られなくなります。

 

0.1Gy(グレイ)= 0.1 Sv(シーベルト)=100mSv(ミリシーベルト)以上の被曝

 

広島、長崎の原爆被爆者を対象にした研究から、100mSv以上の被曝では、発がんとの間に明確な相関関係があることが明らかになっています。100mSv被曝で致死ガン発症確率(被曝によってガンで死ぬ確率)が0.5%です。200人に1人の割合です。

 

 

1Gy=1Sv以上の被曝


一部の人に悪心、嘔吐、全身倦怠などの二日酔いに似た放射線宿酔という症状が現れる。


人体の内部では身体のあちこちで細胞が死を迎えて続けている状態です。広島原爆の後、生存者たちが「ぶらぶら病」と呼ばれる病気にかかった。医学的にはどこも悪くないのに常に全身倦 怠に襲われて働くことが出来ず、いつもぶらぶらしていることからつけられた名称です。当時、こうした人たちは怠け者とみなされましたが、実際 には放射線障害の状態だったと思われます。

 

1.5Gy=1.5Sv以上の被曝

 

最も感受性の高い造血細胞(骨髄)が影響を受け、白血球と血小板の供給が途絶えます。大量出血して免疫力が低下し、重症の場合は30日から60日程度で死亡します。


細胞死がさらに進んで、いよいよ身体の器官が破壊され具体的な機能不全が発生します。放射線に対して感受性の高い細胞は精巣や卵巣などの生殖器官、目の水晶体、消化器粘膜などがあげられます。また細胞のなかでも、分化の進んでいない幹細胞は、分化の進んだ成熟細胞よりはるかに感受性が高く、年齢差も大きな要因です。細胞分裂活動が活発な 低年齢層が放射線の影響を受けやすく。もっとも影響を受けやすいのがお腹の中の胎児です。

 

5GY=5Sv以上の被曝

 

小腸内の幹細胞が死滅し、吸収細胞の供給が途絶します。細胞の再生力が奪われて、人体が免疫力や抵抗力を破壊され、このため吸収力低下による下痢や細菌感染が発生し、重症の場合は20日以内に死亡します。

15Gy=15Sv以上の被曝

 

中枢神経に影響があらわれ、ほとんどの被曝者は5日以内に死亡します。

 

 

私設原子力情報室

 http://nucleus.asablo.jp/blog/2012/01/19/

身体の臓器・細胞の放射線感受性

ICRPのリスクモデルの不適切さ

 

ICRP はその放射線リスクモデルにおいて使用する被曝線量の定量的体系の整備を開始するにあたって、その使用に関連して誤りが発生する可能性のあることを記述しています。(1990年勧告第2章)

放射線が密集して局所にあたるとその部分が死滅したり、DNA修復ミスを起こす可能性

 

アルファ線は、空中では約45 mm、体内では約40μm6移動します。また、ベータ線は、空中では約1 m、体内では

約10 mm移動します。  したがって、ベータ線では、人体内での被曝範囲は1センチの球体に限られると考えられ

ます。しかし、ICRPの考え方では、「ひとつの組織・臓器内の平均線量」を問題とするため、10センチ程度の球内

での問題として考えられています。つまり、1センチの球内で照射される放射線量が、10センチ程度の球内で照射

されるものとして考えられているために、放射線の影響が薄められてしまう可能性があります。球の質量は半径の

3乗に比例しますから、被曝した部分の線量は、1,000倍も異なることになってしまいます。そのため、ECRR(ヨ

ーロッパ放射線リスク委員会)は、内部被曝をシーベルで評価するのに、平均して600倍をかけるべきであるとして

います。このように、局所で密集した分子切断が行われると、二重螺旋の同時切断も多くなり、DNAが死滅したり

修復ミスが多くなり、危険性は高くなります。

 

右図は直径10cmの円柱状の水の内部にCs-137からのβ線を100個発生させたところ

原発事故に伴う放射線への曝露より転載 図中の黒丸は筆者加筆

http://trustrad.sixcore.jp/npp_radiation.html#internal_external

ICRP 1990年勧告より抜粋

 放射線の胎児への影響

ICRPでは放射線の生体への影響では、防護の立場から安全サイドに立って、がんの確率が放射線量に比例すると仮定する「直線しきい値なし仮説」を採用しています。つまり、これよりも少ない放射線だったら絶対にがんは発生しないという線量は存在しないと考えて防護すべきだということです。また、ICRPは、子宮内被曝後の発がんリスクに関するデータの検討から、すべてのタイプの小児がんが増加し、子宮内被曝後の放射線誘発固形がんのリスクには特段の不確実性が存在し、子宮内被曝後の生涯がんリスクは、小児期早期の被曝後のリスクと同様に最大で集団全体のリスクのおよそ3倍と仮定することしています。(ICRP2007年勧告)

 

低線量の放射線であっても、胎児に影響が生じる危険性が無いとは言えません。妊婦は(妊娠していない)人以上に、放射線を浴びないように注意する必要があります。

 

「子宮内の胎児が 10 mGyの放射線線量を受けると、小児癌のリスクは結果として増加することが結論付けられた。このレベルの被爆における過度の絶対リスク係数は 1 Gy あたり6%であるが、このリスク係数の正確な値には不確実性が残る。」 食品安全委員会 低線量に関する知見の整理より抜粋

 

  

放射線の確率的影響

放射線の確率的影響」は主に発ガンを指します。わずかな量でも放射線を受ければ、その量に応じて発ガンの確率が増すとされています。これ以下の量ならば大丈夫という境目=しきい値はありません。

 

発がんを中心とする確率的影響ついては、1個の細胞に生じたDNAの傷が原因となってがんが起こりうるという考えに基づいて、ガンの発生確率は被曝線量に比例するとされています。以上の事から、広島・長崎の原爆被爆者を対象としたデータからは、100ミリシーベルト程度よりも低い線量では発がんリスクの有意な上昇はないとはいえ、これよりも低い線量域で、発がんリスクを否定することはできないということです。このように低線量被曝について、放射線防護の立場からリスクを推定するために導入されたのがLNT仮説です。低線量放射線の影響についてはよくわからないが、影響があると考えておいた方が安全側だという考え方に基づいたものです。

 

米国科学アカデミーの報告


米国科学アカデミーの電離性放射線の生物影響に関する委員会(Committees on the Biological Effects of Ionizing Radiation、BEIR)が、低線量放射線の健康リスクに関する報告書を発表しました。この報告書は新聞報道等でも取り上げられ、東京新聞では、「放射線被曝は低線量でも発がんリスクがあり、職業上の被曝限度である5年間で100ミリシーベルト(mSv)の被ばくでも約1%の人が放射線に起因するがんになる」と紹介されました。   BEIR報告書

 

世界保健機関の論文


WHO(世界保健機関)に設置されているIARC(国際がん研究機関)は、15ヶ国の原子力発電所等放射線作業者における外部放射線被曝健康影響についての疫学解析結果をBritish Medical Journal (BMJ)誌上に論文発表しました。この論文の内容は新聞等で報道され、読売新聞では、「国際基準で許容される上限(5年間で100mSv)で被曝した場合、がんによる死亡率が約10%増加すると推計できることが分かった」と紹介されました。

 

 

 

 原爆被爆者における固形ガンリスク

「影響の有無がわからない」ことと「影響が無い」ことは別

 

原爆被爆者の放射線に起因すると考えられる白血病以外のがん(固形がん)リスクの増加は、被爆の約10年後に始まり、がん死亡率の継続的調査が開始されました。1958年から1998年の間の寿命調査(LSS)集団の中で被曝線量が0.005 Gy以上の44,635人中、7,851人に白血病以外のがん(同一人に複数のがんを生じた場合は、最初のもののみ)が見いだされ、過剰症例は848例(10.7%)と推定されています。明らかなしきい値(それ以下の線量では影響が見られない線量のこと)は観察されていません。

 

放影研 http://www.rerf.or.jp/radefx/late/cancrisk.html

 原爆被爆者二世における染色体異常

子供は大人より放射線に弱い?

子供は放射線誘発発がんに対する感受性が高い

 

 子供の組織が放射線による発ガン感受性が高い原因の一つは、発達期の組織の細胞が活発に分裂しているので、放射線によって染色体異常や突然変異が誘発された細胞が増加することにあります。ただし、被曝臓器の被曝放射線量が高い場合にはアポトーシスで細胞が死んでしまい、その結果、ガン化のリスクは低下します。このように、大人の幹細胞は高線量被曝によってアポトーシスで死にますが、子供の幹細胞はアポトーシスを起こさず、傷ができたまま生き残り、将来のガン化のリスクが上がる場合があります。

 

放影研要覧 

http://www.jrias.or.jp/books/201401_TENBO_KAKINUMA.pdf

 

低線量放射線によるラジカルの大量生成とそれによるDNA損傷によって起こるガンの発生は大人のほうが多い?

 

子供は放射線に敏感で、低線量でも有意な発ガン率増加が見られますが、修復能力が高いことと、全世代で最も低い発ガン率なので、低線量被曝によって発ガン数が早期に激増するようなことはないと思われます。しかし、ガンの潜伏期間は10~30年といわれますので、子供の成長後の将来の発ガン率は上昇すると思われます。一方、大人(特に高齢者)は、子供ほど放射線に敏感ではありませんが、老化によって修復能力が低下していて、元々発ガン率が高い世代のため、被曝による発ガン率の上昇が反映するのが早く、被曝後早期に発ガン数が多くなると思われます。

 

被曝時年齢と発がんリスクの関係

 ここに示されているのは、あくまで、原子爆弾による放射線を一時期に被ばくした(そして生き残った)人たちについての調査結果なので、低線量を長期間に被ばくする状況とは異なっている可能性もあります。また、腫瘍登録制度が1958 年に確立されたため、原爆投下から13年の間のガンの発生率は評価できていません。つまり、幼い子供の発ガンについては、この調査からはよくわからないということです。

 

放射線によるガン死亡リスク

現在、日本人の死因の約30%をガンが占めており、死亡原因の第1位となっています。正常な細胞がガン細胞になる原因として、発ガン性物質の存在が確認されており、その物質をつくりだす原因として、老化や喫煙、大気汚染、そして放射線も挙げられています。発生したガンがどの原因によるものかは特定できないといわれていますが、被曝した放射線量に比例して発ガン率が増えるとして、日本では被曝による線量限度が法律で定められています。例えば、職業として放射線を取り扱う場合は、被ばく線量は5年間の平均で年間20ミリシーベルトと決められており、安全確保のための管理区域の設定や放射線業務従事者の個人線量計の着用、健康診断なども定められています。

放射線と生活習慣

放射線の発ガンリスクは広島・長崎の原爆による瞬間的な被曝を分析したデータ(固形がんのみ)であり、長期にわたる被曝の影響を観察したものではない(国立がん研究センター)ため、生活習慣からくるガン発生リスクと比較することはできません。

外部被曝で受ける量

放射性物質が体の外部にあり、体外から被曝する(放射線を受ける)ことを外部被曝といいます。 外部被ばくは、大地からの放射線や宇宙線などの自然放射線とエックス(X)線撮影などの人工放射線を受けたり、着ている服や体の表面(皮膚)に放射性物質が付着(汚染)して放射線を受けたりすることです。 放射線は、体を通り抜けるため、体にとどまることはなく、放射線を受けたことが原因で人やものが放射線を出すようになることはありません。 汚染してしまった場合は、シャワーを浴びたり洗濯をしたりすれば洗い流すことができます。一方、内部被曝は、空気を吸ったり、水や食物などを摂取したりすることにより、それに含まれている放射性物質が体内に取り込まれることによって起こります。内部被曝は外部被曝より深刻です。 内部被曝を防ぐには、放射性物質を体内に取り込まないようにすることが大切です。

 

原子力発電所や放射性物質を扱う施設などの事故により、放射性物質が風に乗って飛んで来た場合、長袖の服を着たりマスクをしたりすることにより、体に付いたり吸い込んだりすることを防ぐことができます。屋内へ入り、ドアや窓を閉めたりエアコン(外気導入型)や換気扇の使用を控えたりすることも大切です。なお、放射性物質は、顔や手に付いても洗い流すことができます。屋外から帰ったら、シャワーをあびるなどの対策が有効です。 その後、時間がたてば放射性物質は地面に落ちるなどして、空気中に含まれる量が少なくなっていきます。そうすれば、マスクをしなくてもよくなります。

 

外部被曝の安全基準

 

日本の放射線に関する法令・規則には、

 

文部科学省の関わる原子力基本法

放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)

厚生労働省の関わる労働基準法、労働安全衛生法、電離放射線障害防止規則

 

等があります。

 

日本はICRPの理念を尊重しながら国情に合うように一部を修正して、これらの法令に取り入れています。ただし、「事故による放射線量は1ミリシーベルト以下とする」は明文化されていません。ICRPは、通常時の計画被曝状況では公衆の被曝の個人年線量限度として1ミリシーベルトを提案していますが、法令の中に明確に「公衆の線量限度を1mSvにする」という記述はありません。ただし、管理区域境界の限度(250µSv/3ヵ月)や事業所から廃棄される放射性物質の数量・濃度は放射線障害防止法等に記述されていて、それらは1年で1ミリシーベルトを守るように定められています。これは計画被曝状況下(通常時の運転や使用状態)に適用するためのものであり、緊急時被曝状況下と現存被曝状況下に適用されていません。ICRPは、緊急時における参考レベルは100t~20mSv、また、現存被曝状況(事故後の復旧期)における参考レベルは20~1mSvを目安として、政府が現状に合わせて決めることなどを提示しています。参考レベルは、合理的に達成できる限り低く保つよう勧告しています。つまり、経済的・社会的要因の考慮、地元住民等との合意を得ながら、できる範囲内で低い値をとるということです。政府が決めた「事故による放射線量は1ミリシーベルト以下とする」は、現存被曝状況の参考レベルのうち低い値を採用したものといわれています。

 

公衆の線量限度は年間1mSvとされており、・線量限度はあくまでそれを目指すという努力目標であって、安全基準(安全か危険かの境目)ではないという事です。
内訳は、自然放射線は除き、・外部被曝も内部被曝も基本的にこの1mSvという数字を元に安全防護の方法が取られています。

 

除染を行う際の基準値として国が決定した0.23μSvという値は、1日のうち8時間を屋外で、残りの16時間を遮蔽率0.4の木造住宅で過ごすという状況を想定し、年1mSvという数値から0.19μSvという値が割り出され、それに自然放射線の0.04μSvを足して0.23μSvとしています。自治体によってはこの0.23μSvよりも厳しい基準を除染に用いている所もあります。食品に関しても年1mSvを元にして100Bq/kg(飲料水は10Bq/kg)という基準が出されています。

 

外部被曝は個人差があります

 

居住地や家屋の立地条件、屋根の材質等によって差が出るため、個別に外部被曝を計算する必要があります。山などの斜面に面している部屋では、放射性物質が付着した落ち葉や表土が流れ落ちてきた影響を受け、表側の部屋より室内の空間線量率が高く、セメント瓦の家の屋根の下の部屋は低減率が0.7~1.0と大きな値を示したものがあります。福島県の木造家屋の調査では、低減計数は 0.2-0.7 と幅がありました。 
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2014/12/
20141225_02.html

外部被ばくを減らすには

身体の外にある放射性物質からの被曝を外部被曝といい、その線量を低減する3原則というものがあります。 一つは、距離をとることです。例えば、線源から1メートルのところにいるときと、2メートルのところにいるときで被曝量を比べると、2メートルでの線量は1メートルのところにいるときの4分の1になります。放射線量は距離の2乗に反比例して下がります。もし、人が長い時間いるようなところに汚染された土壌がある時は、汚染土壌をできるだけ遠いところに埋めるのが効果的なです。距離をとれないときは間に何か物を置いてください。これが二つ目の低減策です。できるだけ重くて厚い物を置くと、放射線が遮蔽されて線量が低くなります。三つ目は、そこにいる時間を短くします。家の外の線量が高ければ、外にいる時間を短くすることによって線量が下げられます。これらの三つの方法で、線量をできる限り低くすることが大事です。外部被曝を低減するため、公共の場所については、国などが除染をしています。民有地での対策は、まず、汚染された場所を知ることが大事です。測定が可能であれば、測定することです。注意すべき場所は、環境中にある放射性物質を運ぶ雨が集まるようなところです。雨どいの下に側溝がなくて雨水が直接土壌に落ちている所や、側溝で落葉が詰まって流れが悪い所などに放射性物質がたまりやすく、ホットスポットになる可能性があります。線量が高い土壌や落葉などは取り除き、敷地の隅など生活の場からなるべく離れたところに埋めれば線量を下げられます。子供たちは、草むらや森などで長時間遊んだりします。測定されていなくて、放射線量が高いところがあるかもしれないので、そういうところにはあまり長い時間滞在しないように注意する必要があります。

放射線障害の予防

被曝からの防護は、被曝時間を極力短くし、線源からの距離を最大にとり、さらに遮蔽を使用することにより達成されます。すでに管理されている放射線源から防護を図ることは無理なく達成できますが、大規模な災害(原子力事故や核攻撃)による放射性核種汚染の場合は防護不可能な場合があります。高濃度汚染地では、放射線漏出後は可能な限り被曝エリアからの避難が行われるべきで、予想線量が0.05Gyを超えるときは一時的に避難をし、生涯線量が1Gyを超えると予測されるときは永久的にその地域を離れる選択を迫られるでしょう。

放射性物質の性質

カリウム40の出す放射線も有害で、カリウム40が出している放射線のベクレル数と、体内でのカリウムの分布に基づいてて、実効線量が算出されます。カリウムは細胞の生存のために必須の元素で、すべての細胞に均等に分布しています。そのため、カリウム40が存在しても、特定の臓器や器官に集中することはありません。人がカリウムを過剰に摂取すると、数日で排出されます。通常の摂取量であれば、カリウム40の生物学的半減期は30日程度です。セシウムはカリウムと体内で同じような動きをしますが、カリウム40よりサイズが大きいために、カリウムチャンネル、特に、細胞膜に備えられたリーク型チャンネルを通りにくいようです。そのため、セシウムの生物学的半減期が成人で70~100日程度でカリウム40の半減期より長くなります。そのため、同じベクレル数であっても、細胞に対して悪影響を与える能力がセシウムの方が大きいといえます。 ただし、子ども(10歳児)の場合には、セシウムの生物学的半減期は短く、カリウムと同じ30日程度です。セシウムもまた、カリウム40と同様に細胞に均等に分布すると考えられています。

放射線が体に及ぼす影響は、体の組織や臓器によって異なります。放射線に対する影響度の違いを放射線感受性といいます。放射線に対する感受性は、
 ●細胞分裂の盛んな組織ほど感受性が高い
 ●将来行う細胞分裂の数が多いほど感受性が高い
 ●形態・機能が未分化なほど感受性が高い
といわれています。この法則はベルゴニー・トリボンドーの法則と呼ばれています。

 

分裂が盛んなリンパ組織、造血組織(骨髄)、睾丸、卵巣、腸は放射線感受性が最も高く、一方、細胞分裂のない筋肉や神経は放射線感受性が低いといわれています。

 

ベルゴニー・トリボンドーの法則

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

原爆被爆者の子供の臨床的所見に関する統計からは、親の生殖腺が受けた放射線の遺伝的影響は有為に認められていないません。しかし、この問題に関しては、将来の課題です。

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